10_生存遊戯_ナガト
ナガトはセレネが参加しているサバイバルゲームと言う名の殺し合いを手伝うことにした。
理由はシンプルに射殺されそうだなと思ったからだ。
(協力して一週間経つけど、もう銃で脅してこないな)
ナガトは警戒していた。二度も裏切りに遭ったことは深い傷になっている。
「ねえナガト、あなたはここで何をしているの?」
「別に何も」
「こんな危ないところに一人でいるなんて正気じゃないわよ」
「たしかに」
「なんとかいいなさいよ」
「……」
「つれないわねえ」
セレネは肩を竦ませる。
シェルターの中は人が二人入ると手狭に感じる。
しかし改築するにも他のプレイヤーがいるため悪手になる。
「……この狂ったゲームに参加して怖くないの?」
「怖いわよ」
「そうだよね」
「ねえナガト、あなたが恐れていることはなに?」
「うーん、死にたくないかな」
「私は家族や友人が死ぬところはもう見たくないわ。私が死んじゃうことより悲しいもの」
「確かに、そうかもしれないね」
「あなたの家族は?」
「僕の家族……さぁねわからないや」
「父も母も?」
「うん、あーでも姉ちゃんは生きているかも」
「生きている?」
「うん、何となくだけど」
「じゃあ、お姉さんと会えるといいわね」
「そう、だね」
「ひとまずそれを目標にしたら?」
「やってみようかな」
「いいじゃない、目標を持つことは大切よ」
(なんか、優しいな。こんなところにわざわざやってきて死ぬようなことしているのに)
ナガトは疑問に思った。
(この人、本当に優しい人なのかな)
「セレネ、あの――」
寸でのところでナガトは言葉に詰まった。
また騙される、優しさなんてあるわけないと心で呟く。
「どうしたの?」
「いや……なんでもないかな」
(たぶん、セレネはいい人で、気高い人なんだろうけど……)
ナガトは自分の疑いを恥ずかしいことと思いたかった。だがナガトの経験がそれを否定する。
「###################?」
「あ、翻訳機能が」
ナガトは自分の耳を指差してセレネにジェスチャーを伝える。セレネは首を縦に振って意味を理解する。
「お休み」
翌朝。
二人は生きるための糧を探していた。
「セレネ、鹿がいる」
「良いわね」
セレネはアハトノインを構えて狙いをつける。
ド――ンッ――
耳が張り裂けそうな爆発音が響く。
空気が押しのけられる衝撃がナガトの顔に漂う。
「凄い音……」
「今の時代はレーザーとレールガンが主流だからあんまり音がしないのよね。でもこの音と衝撃は素敵じゃない?」
セレネは無邪気に笑った。
「そうだね」
セレネは鹿の頸椎に弾丸を直撃させているところから素人のナガトでもセレネの射撃の腕が卓越していることがわかった。
「今日はステーキね!」
「いいね」
ナガトとセレネは鹿を川に運び水に沈めて血を抜く、その後、肉に切り分ける。
「干し肉たくさん作れるな」
「ヴルストにしましょう」
「ヴルスト?」
「ヴルスト」
「それなに?」
「え?」
「知らない」
「嘘でしょ?」
「本当」
「######!!」※超速ドイツ語のせいで翻訳機が機能していない
「ごめん、本当にわからないんだ!」
「ヴルストを知らないなんて……腸詰め文化がないのかしら」
「あ、ソーセージのこと?」
「なんでそっちは通じるのよ……」
ナガトはセレネに指示されるがままヴルストを作るはめになった。