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魔法学園の空間魔導師  作者: 語部シグマ
第一章:魔法学園の空間魔導師
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反撃

 抱きかかえられた私は御影の顔を手で触れながら確かめるようにして彼の名を呼ぶ。



「み……かげ……?」


「どうしたよ?ンな鳩が豆鉄砲食らったような顔をしてよ」



 目の前にいるのは確かに御影であった。


 夢でも幻でもなく、今この場にちゃんと御影がいる……私はその事が嬉しかったが、直ぐに気を取り直して御影へと問いかけた。



「な、なんでここにいるんだ?!怪我は大丈夫なのか?!いったいいつ来たんだ?!」



 思い余って顔を近づけ過ぎたせいか、御影は顔を顰めながら返答をする。



「落ち着けって!耳元でそんな捲し立てられても困るっつーの!」


「あ……す、すまん……」


「まぁ俺の事は後にして……とりあえず瑠璃、お前の方が重傷だな?テトにやられたか?」


「確かにそうだが……これには理由が────」



 私がそう言いかけると、御影は首を振ってそれ以上は聞こうとしなかった。



「き、貴様……何故生きている?!いや、そもそも起き上がれる状態では無かったはずだ!!」



 オーガスタスの声が聞こえる。


 御影はそちらへと顔を向けると、べーっと舌を出してこう言った。



「勝手に人を殺すな。俺は身体だけは頑丈なんでね。あんなちゃっちいもんで死ぬようなやわな鍛え方はしてねぇんだよ」



 御影は身体の向きを変えると私を壁際へと移動させる。



「そいつを始末しろTE-TO01!!」


「…………デキマセン」


「なんだと?!」



 御影を始末しようとオーガスタスがテトにそう命じていたが、当のテトはそれを拒否していた。


 いや……テトはオーガスタスの命令通りに魔法を発動させようとしていたが、どうやら魔法が発動する事が出来ないようだ。


 そういえば私もいつの間にか翼が消えている……私はその事と御影が来たことに何か関係があるのではと考え、それを確かめるように御影へと顔を向けた。


 すると御影は不敵な笑みを浮かべながら、自身の背中越しにオーガスタスを見ていた。



「いやぁ、瑠璃達が頑張ってくれたお陰で結界を張る時間が出来たよ」


「結界だと?」


「あぁ結界だよ。〝虚空結界〟つってな?この結界内にいる奴全員の魔法が無効化されるってやつだ。ただ展開するまでにちぃっと時間がかかっちまうのが難点なんだがな」


「無効化結界だと?!貴様、いったい何者だ?!」


「俺?俺か?俺はだな……まぁ〝空間魔法〟を得意としている、ただの高校生だよ」



 御影はそう言うとその場から立ち上がり、ゆっくりとテトの方へと歩いていった。


 するとその時、御影の真上から先程の私達が相手をしていたものと同じ異形が現れた。



(まだいたのか?!まずい……)


「御影!!」



 私は御影に注意を促すために名前を叫んだ。すると御影は異形に目もくれる事無く、何やら呟いた。



「飯の時間だ……〝餓狼〟」



 その瞬間、御影の影から勢いよく巨大な影が飛び出したかと思うと、その直後には御影の頭上にいた異形へと食らいついていた。


 その影は異形を咥えたまま地面に降り立つと、一旦異形を真上へと放ってからその大きな口で一気に飲み込んだ。


 姿形は狼……しかしその狼には6つもの目がついており、特に大きい二つの目以外の目はギョロギョロとしきりに動き回っていた。


 その狼は暫く咀嚼をした後、ゴクリと飲み込み満足したようにゲップを放っていた。


 途中、バキッべキッと音が鳴っていたので、どうやらあの異形の刃をも噛み砕いていたに違いない。


 ともかく御影の影の中から出てきたそれは、飼い主に懐いているペットがそうするように御影に頬ずりをし始めた。



「お〜よしよし……どうやら今ので腹が膨れたようだな?」


「な……な……な……!」



 今の光景を見ていたオーガスタスは、御影に懐いている狼を指差しながらも言葉が出ないようだ。


 そしてようやく振り絞るようにして御影にこう言った。



「な、なんだソイツは?!そんな獣……見たことがないぞ?!」


「そりゃあそうだろうよ。なにせ俺が持つ数ある空間の中の一つに住んでる獣だからな。特に名称はねぇが、俺はコイツらを〝異獣〟と呼んでいる」


「異獣……だと?いや、それよりも〝コイツら〟だと?!」


「まぁ、住んでるのはコイツだけじゃねぇからな」



 〝他にもまだいるのか〟と思ったのは私だけではないだろう。


 狼はその後、何事も無かったかのようにまた御影の影の中へと潜って行った。



「……で?次はどうするんだ?」


「くっ……う、動いたらそこの二人を殺す────なっ!!?」



 オーガスタスは咲良達がいる方へと顔を向けて目を見開いていた。


 それもそのはずだろう……何せ奴の手下共はいつの間にか御陽と御夜の二人の周りで倒れているのだから。



「な、何をした?!」


「え〜?私達の魔法で眠って貰っただけだよ〜?」

「すっごい弱かった」


「な……何故……貴様の結界で魔法は使えんはずだろぉぉぉ!!」


「はぁ?ンなもん、二人がそいつらをコテンパンにしたのを確認してから貼ったに決まってんだろうがよ。お前馬鹿なのか?ろくでもねぇ事は思いつくのに、そんな事は頭が回らないんだねぇ?」



 御影に煽られて血管が切れそうな程に憤怒の形相となるオーガスタス。


 確かに自分よりも一回りも二回りも下の子供に煽られては、怒りを隠せなくなるのも仕方の無い事だろう。まぁ、同情はしないが……。



「大岡のおっさん!」


「────っ……くそっ!!」



 御影に声をかけられた大岡さんが返事をすること無く、オーガスタスの手にあるスイッチを撃ち抜いた。


 その事にオーガスタスは舌打ちをしているが……どうやらスイッチは今ので最後だったようだ。



「まだ持ってんのか?いや、その様子だともう持ってねぇようだな?だが、まぁ……一応の保険はかけさせて貰う」



 御影はそう言うなり呆然と立ち尽くしているテトへと近づいて行った。


 そして彼女の前でしゃがみ込むと、優しげな笑みを浮かべてその顔の前に手を翳す。



「え〜と、どこら辺にあるかなぁ……う〜ん……おっ?あったあった♪︎」



 御影は何をしているのだろう?


 そしていったい何をするつもりなのだろう?


 訝しげな表情をする私達の前で、御影はテトの頭を優しく撫でる。



「ちょいと痛ぇかもしれねぇが、我慢してくれな?」


「……?」



 疑問符を浮かべるテトであったが、その直後、その目が大きく見開かれ、テトはその場に響き渡るような悲鳴を上げ始めた。



「アァァアァァァァァァァ────!!!!」


「御影、いったい何を────!?」


「ちょっとだけ静かにしててくれ。集中してんだ」



 暫くテトの悲鳴が流れ、しかし御影はそれを気にする様子もなく何かをしている。


 そのうち御影が不意にもう片方の手を……その手の平を上に向けた状態で肩辺りの高さに上げたかと思えば、その手の上に何かが現れ始めた。



(黒い……物質……?)



 その小さな黒い物体は完全に出現すると、ポトリと御影の手の中に落ちた。


 御影はぐったりとするテトを抱きかかえながらその黒い物体を観察している。



「こいつがテトを操っていた元凶か……ふん、くだらねぇ」



 パキッと、御影に握りつぶされる黒い物体。


 どうやらそれがテトを操るためにオーガスタスが埋め込んでいた装置だったらしい。


 その直後にテトは目を覚ますと、御影へと顔を向けて大きく目を開いていた。



「御影……?」


「いや、なんで皆して俺を見るなりそんな反応するんだよ」


「それは仕方ないだろう……お前はさっきまで死にかけていたのだし」


「それはそうだけどよぉ……それで、どうだ調子は?」



 テトは御影に話しかけられたのに気づいていないのか、しきりに御影の胸元を触り続けていた。


 自分が刺してしまった事で御影は生死の境を彷徨う事になった……それを知っているからこそ、テトは自分が刺してしまった場所に触れて無事を確かめているのだろうな。



「心配しなくても、俺はあんな果物ナイフ程度の刃物じゃ死なねぇよ」


「いや、身体を貫通するほどの刃物だっただろうに」


「はい、そこうるさい」



 大岡さんの指摘は的確なのだが、御影としてはそういう事にしておきたいらしい。


 ともかく御影が無事であるとようやく実感したテトは表情を大きく崩し、まるで堰を切ったように泣き始めた。


 その表情は彼女と出会ってから初めて見る表情であった。


 御影は泣きながら抱きついてくるテトを優しく受け止めると、その頭を撫でながら声をかけていた。



「よしよし……ずっと俺を刺したことを気に病んでたんだな。でももう自分を責めなくていい。お前は悪くない。悪ぃのは────」



 御影はテトをそっと離すと、立ち上がってオーガスタスの方へと顔を向けた。


 チラリと見えたその表情は、未だかつて見たことの無い……激しい憤怒の表情であった。



「テメェだよゲスブタ野郎」


「ぬぐっ……!」



 真っ直ぐとオーガスタスを指差し、そう言い放つ御影。対するオーガスタスは苦々しそうに顔を歪めていた。



「テト、すまねぇが暫く瑠璃の所にいてくれ」


「分かりました。御影は?」


「決まってんだろ?アイツをぶっ飛ばす」



 御影はテトが私の所へと駆け寄ってくるのを見送ったあと、一瞬にしてオーガスタスの眼前へと現れ、その拳を奴の顔面へと向けて放った。



「へ……?」



 オーガスタスが間抜けた声を零したと同時にその拳は奴の顔面に叩き込まれ、オーガスタスは後方へと勢いよく吹っ飛んだ。


 その光景を見て私も咲良も……そして大岡さんやテトでさえもスカッとしただろう。


 大岡さんに至ってはガッツポーズをしていた。



「は、はが……鼻が……!!」



 小気味の良い音が聞こえてきたので鼻が折れたのだろう、オーガスタスが自身の顔を抑えている手から血が流れ落ちている。


 そんなオーガスタスを前に御影は手で相手を挑発するような仕草をしながら、怒りを滲ませた声音でこう言った。



「立てやブタ野郎!俺や瑠璃達の事はもちろん、テトを泣かせた事も含めてキッチリとお礼してやるからよ!」


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