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魔法学園の空間魔導師  作者: 語部シグマ
第一章:魔法学園の空間魔導師
20/45

邂逅

 海洋センターでひとしきり楽しんだ後の俺達は、それぞれに別れて街の中を散策していた。


 瑠璃とテトは都胡達に半ば強制的に連れていかれてしまったので、俺は煉と共に何を目的とする訳でもなくブラブラと歩いていた。



「さ〜て……夜まで何するかね」


「また釣りでもするか?結局あの後連れずじまいだったわけだし」



 確かに……テトが釣れたもんだから、その後バタバタしていて満足に釣りが出来ていなかったと、今になってそれを思い出した。



「瑠璃ちゃん達にはNINE(ナイン)送っとけばいいか」


「いいんじゃね?つー事で早く旅館に戻って釣りに行こうぜ♪︎」



 俺は〝そうだなぁ〟と返しつつポケットから携帯を取り出すと、メッセージアプリである〝NINE〟を開こうとした。


 するとその直前に携帯が鳴り、名前を確認すると電話をかけてきたのは都胡だった。



「お〜、どうし──『大変や御影!!』──……うるせぇ……」



 要件を聞こうとするなり俺の言葉を遮るようにして電話口から都胡の大声が俺の鼓膜を直撃した。


 思わず耳から携帯を離し〝キーン〟という音に顔を顰める。


 そして再び携帯を耳に寄せたあと、わずかに不機嫌そうな声で声をかけた。



「いったいどうしたんだよ?」


『先に謝っとく、ごめん御影!テトちゃん見失ってもうた!!』


「はぁ?!何してんだお前ら!!」


『いや、ちょっと目を離した隙に店から出てってもうたらしくて……とりあえず御影にも報せた方がいいと思って電話したんや』


「分かった……とりあえず今からそっち向かうから、今どこにいるのか教えてくれ」


『ウチらは海洋センターを出て右の方向へ行ったやろ?そこを真っ直ぐ行った先の洋服店や』


「はぁ……分かった」



 俺が電話を切ると煉が心配そうな顔で声をかけてきた。



「なんかあったのか?」


「どうやらテトとはぐれたらしい。とりあえず今来た道を戻んぞ」


「分かった」



 そうして俺と煉は踵を返すと、都胡達がいる方へと駆け出すのであった。






 ◆






 それから数分が経って、ようやく都胡達と合流した俺は真っ先に事の顛末を訊ねた。



「それで、いったいどうして見失ったんだ?」


「皆で歩いとったら可愛いお洋服が置かれたこの店を見つけてな……それでテトちゃんに似合いそうな服があったから入ったんよ。その時まではテトちゃんも一緒におったんやけど、気付いた時には……」


「いなくなってたってわけか……とりあえず手分けして探すしかないだろうな」


「そうだな……つっても何処をどう探せばいいのやら」



 島といえど一日で全てを回れる程の大きさな訳では無い。


 いなくなってから現在までの時間ならそう遠くへは行っていないはずだが、油断は禁物である。



「とにかく全員で手分けして探すぞ。見つけ次第連絡するように!」


『分かった!』



 そうして俺達は別々に別れてテトの捜索を始めた。


 俺は今来た道ですれ違ったり見かけたりしていない事を思い出し、来た道とは逆の方へと捜索に向かった。


 暫くテトの名を呼んでは探していたのだが一向に見つかる気配が無い。〝これはそろそろ警察に頼むか〟と考えていた矢先、路地裏で僅かに動く影を視界に捉えた。


 俺はそちらへゆっくりと近寄っていくと、そこにいた人物に声をかけた。



「やっと見つけたぞ。いったいお前はここで何をしてるんだ?」



 そこに居たのは他でもないテトであった。


 俺に声をかけられたテトはこちらへと顔を向けると、直ぐに立ち上がり腕に抱いていたものをこちらへと掲げながらこう言った。



「この子を追いかけてました」



 テトの手に抱えられていたのは一匹の小さな黒猫。


 まだ子供らしくふるふると震え、しかしその金色の瞳はしっかりと俺を捉えていた。



「拾ったのか?」


「抱っこしようとしたら逃げられました。それで追いかけてたら……」


「ここまで来てたってわけか」



 黒猫は〝見かけたり目の前を横切られたりすると不幸に遭う〟というジンクスがあり、今の世ではそれが顕著で、昔より毛嫌いされている存在だ。


 まぁ可愛いので気にはしてないが、しかし拾って貰ってもこちらとしては少々困りものである。



「言っとくけどフェリーには乗せられねぇからな?」



 〝ガーン〟というテトのショックを受けた表情。


 表情自体は大きく変わってはいないが、僅かに目が大きく開かれたのでショックを受けていることに間違いはないだろう。


 テトは一旦、黒猫を自身へと向けたあと、またこちらへと向けて俺を見てきた。



「何度頼まれても無理なもんは無理だからな?」



 しょげてしまった。


 落ち込むテトを励ますように黒猫が小さく鳴くと、テトは俺の前で黒猫に言い聞かせるようにこんな事を言い始めた。



「どうやら貴方を飼うことは出来ないようです。例え貴方がこの先、誰にも拾われずその短すぎる生を終えるのだとしても、テトにはどうする事も出来ません」


「おい……」


「命ある者全て、いつかは死を迎えるのですが、貴方の命はかなり短いようです」


「ちょっと……」


「でもテトにはどうする事も出来ません。貴方を助けることは出来ません。こんなテトを……そして御影を許してください」



 テトはそう言うとそっと黒猫を地面へと降ろした。


 そして別れを告げるようにこちらへと振り返ると、何事も無かったかのように歩き始める。



「行きましょう。あの子猫はこうなる運命だったのです」



 そう言いながら進もうとするテトであったが時折、後ろ髪を引かれるように立ち止まっては振り返り、また歩き出しては再度立ち止まって振り返りを繰り返し、挙句の果てにはこちらに訴えかけるような目を向けてきたりしていた。



「あ〜〜〜分かった分かった!母さん達には俺から説得してみるから、そいつも連れてってやれ」


「いいんですか?」



 露骨に嬉しそうな声音になるテト。


 それを狙っていたのだろうに……テトは意外と腹黒い奴だったらしい。


 そうしてテトが子猫に駆け寄りそっと抱きかかえたその時であった────その俺達の背後から男のものと思わしき声が耳に入ってきた。



「ようやく見つけたぞ」


「あん?」



 振り返ってみるとそこにはデブのおっさんがこちらを見ており、手を差し伸べたかと思えばこんな事を言い始めた。



「手間かけさせおって……帰るぞ」



 当然だが俺はこのおっさんの事など知らない……そうなるとおっさんが話しかけているのはテトという事になるが、もしやテトを作った奴なのだろうか?


 どう見てもそうとは思えなかったが、確かめるようにテトを見ると、テトの表情はかなり強ばっていた。



「誰だよおっさん?」



 そう訊ねるとおっさんは先程までの怖い表情から一変、にこやかな表情でこう答えた。



「ワシはその子の保護者でして……この島に観光に来た際にはぐれてしまったのですよ。もしかしてその子を見てくださっていたのですかな?」


「まぁ、そうだが……」


「いやぁ有難いことですな。日本人とは本当に優しい人達ばかりで……なのでワシは日本人が大好きなのですよ」


「へぇ……おっさん外国人かい?」


「そうなのですよ。ワシは〝オーガスタス・ヘルマン〟と言いまして、投資家をしております」


「ふ〜ん……」



 まぁ嘘だろうなとは思っていた。なのでちょいと確かめる為に俺はオーガスタスという名のおっさんにこんな質問をしてみた。



「おっさん。おっさんは〝テト〟とどんな関係なんだ?」


「ワシはその子の父親です」


「そうか……」



 俺はテトの背に手を回すと、オーガスタスへと近寄りテトを差し出した。



「いやぁ、後でお礼は致しますんで。ほら、帰るぞテト」



 オーガスタスがそう言ってテトの手を取ろうとした瞬間、俺は素早くテトを自身の背後へと隠すようにして移動させた。



「……いったい何の真似ですかな?」


「いやぁ、嘘つくんならもうちょい上手くつくんだったな」


「どういう事ですかな?」



 訝しげにそう問いかけてくるオーガスタスに、俺は不敵な笑みを浮かべながらこう答える。



「〝テト〟って名は俺らが考えて付けた名前だ。もしおっさんが本当にこいつの父親なら、〝テト〟という名を聞いた時に否定するはずだ。テメェの子供の名前を知らねぇ親なんぞいやしねぇからな」


「……」



 オーガスタスは沈黙していたが、直ぐに破顔するとその場で声高らかに笑い始めた。



「ふはははは!」


「何がおかしいんだ?」


「いや、なに……ただのガキかと思ったが、なかなか勘が鋭いではないか。だがな小僧……あまり勘が鋭いと自分の寿命を縮めてしまうぞ?」



 オーガスタスがそう言って指を鳴らした時、どこからともなく数人の黒服の男達が姿を現した。



「そいつを始末しろ。TE-TO01の回収はその後だ」


「ボロを出すのは早いんじゃねぇか?」


「ふん!変に誤魔化したところで無駄なのでな。ワシは非常に〝無駄〟というものが嫌いなのだ」



 そうしてオーガスタスは〝殺れ〟と男達に合図を出した。


 その合図に男達は銃を構え一斉に引き金を引いたのだった。


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