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魔法学園の空間魔導師  作者: 語部シグマ
第一章:魔法学園の空間魔導師
16/45

テト

 あの後、俺達は少女を連れて両親達の元へと向かったわけだが、以外にも母さんと叔母さんの反応はかなり良いものであった。


 少しは〝どうしよう〟と言いたげな父さん達の反応を見習って欲しいものだが、普段はド天然な母さんと、可愛いものには目がない叔母さんなので言っても無駄に終わるだろう。


 ちなみにはしゃぐ母さん達に、父さんと叔父さんがそれとなく窘めようとしていたが、二人の変な団結力を前に呆気なく敗北を喫していたのはここだけの話である。


 二人の母親達はテンション爆上げで少女を何処かへと連れていったかと思えば、数分後には水着姿となった少女を連れて戻ってきた。



「せっかくの海なのだから、ちゃんと水着にならなくちゃね♪︎」



 わざわざ買ってきたのか……。


 なんともまぁ少女に似合う水着に関して聞いてもないのにマシンガントークで話す母さん達を他所に、俺は少女の前に屈んで感想を伝えてやる。



「似合ってんじゃん」



 少女はあまり理解出来なかったのか特に表情を変えることなく、ただただ首を傾げているだけであった。



「それじゃあ御影。お母さん達はお昼の準備で忙しいから、この子の面倒お願いね♪︎」


「せっかくならスイカがあるからスイカ割りとかいいんじゃないか?」



 もはや説得は諦めたのか叔父さんがスイカを片手にそんな提案をしてくる。


 そうして夏の海恒例でもあるスイカ割りを皆でする事になった。


 する事になったのだが……。



「御影は駄目だからな?」


「なんでだよ」



 煉が思い出したかのようにそう言ってきたので、不満そうな表情を浮かべながらその理由について訊ねる。


 するとそれに対する煉の返答にその場にいた全員が同意するように頷いていた。



「だってお前、空間魔法使うから目隠しの意味ねーじゃん」



 全くの正論なのだが、せっかくのスイカ割りなのだから参加くらいはさせて欲しかった。


 ……そういうわけで俺は一人で、スイカ割りをしている瑠璃達を見ていたのだが、まぁスイカ割りあるあるで未だスイカを割る奴は出ていなかった。


 瑠璃くらいなら余裕で割れるんじゃないかと思っていたのだが、彼女はどうやら言われたことを馬鹿正直に聞いてしまう性格なのかあらぬ方向へと誘導され、しまいにはスイカ割り用の棒で海を割ろうとしていた。


 まぁそうなるように誘導していたのは煉と都胡だったのだが、何故か煉だけが才加にお仕置をされていたりもする。


 まぁ誰も割りそうにないので、いよいよ俺の出番かと思い起き上がろうとしたのだが、そこにあの少女が興味ありげにスイカ割り用の棒を見つめていた。



「やってみる?」



 咲良がそう声をかけると、少女は頷いてそれを肯定する。


 そうして少女は目隠しをされ、数回回された後にヨタヨタとスイカの方へと歩き始めた。



「右!右!」


「いや、もうちょい左や!」



 少女に対しては皆優しいのか、誰もわざと違う方向へ誘導するような指示は出していない。


 そうして少女は見事にスイカの前へと到着し、俺以外の全員の〝そこ!〟という言葉で勢いよく棒を振り下ろした。


 その瞬間────



 〝パアァァァァン!!!!〟



 スイカ割りではありえない程の破裂音と共にスイカは無惨にも木っ端微塵に砕け散った。


 まさに〝粉砕〟といった感じであった。


 飛び散るスイカの破片────


 そしてそれを見て表情が引き攣る瑠璃達────


 いったい何をしてるんだか……。



「あらあらぁ……新しいスイカを買ってこないと駄目ねぇ」



 大惨事というのに相も変わらずのんびりとした口調の母さん。いや、ツッコミ所は他にもあると思うんだが……。



「御影、暇してるのならバーベキューの手伝いをしてくれないか?」



 父さんに頼まれた俺は、他にやることも無いので快くそれを引き受けた。そしてコンロなどのセットをしていると、背後から声をかけられる。



「それは何でしょうか?と問いかけます」


「あん?これはバーベキューコンロって言ってな……肉を焼くための道具────おい、いったいどうした?」



 バーベキューコンロの説明をしながら振り返ってみると、そこには黒い液体に塗れた少女の姿があった。


 顔も真っ黒で特徴的な白い髪の前髪部分も僅かに黒く染っている。水着の半分程もその液体で汚れていた。


 だと言うのに微塵にも気にしていない様子の少女は、相変わらずの無機質な声でこう言った。



「いくつもの足のようなものがある何体生物を掴んだら、黒い液体をかけられたと報告します」


「タコか……」



 こんな海岸付近にまでタコがいるのも珍しいが、ともかくこのままにしておくわけにもいかず、俺は瑠璃を呼ぶと少女をシャワー室まで連れていった。


 そして宿からシャンプーを借りた俺は瑠璃に手渡し少女を洗って貰うことにする。


 シャワー室の前で待っている間、俺はふと少女にこんな事を聞いた。



「そういやお前のこと、なんて呼べばいいんだ?」



 いつまでも〝お前〟呼ばわりでは少し可哀想だと思った上での質問であった。


 すると少女はこんな事を言い出す。



「ご自由に。しかし、私を〝作った〟方々は私の事を〝TE-TO01(ゼロワン)〟と呼んでいましたと報告します」


「は?〝作った〟?」



 ドアが閉められているので中の様子は伺えなかったが、瑠璃も俺と同じような反応をしている事だろう。


 〝産んだ〟ではなく〝作った〟……それはこの少女が人工的に作られた存在であるという意味を持つ言葉であった。



「〝作った〟って、いったいどういう……」


「私もよくは知りませんが、私がいた施設に置かれていた紙には〝人造魔導師製造計画〟、〝計画名:プロジェクト・EVE(イヴ)〟、そして〝TYPE:EVEーThe Origin(オリジン)01〟と書かれていたと報告します」



 ただただ絶句するしかない。


 この時代において人造生命体(ホムンクルス)の製造及び所持は厳禁とされている。もしバレたのならば極刑は免れないだろう。


 機械人形や自律型魔導人形は普及しているので問題は無いが、秘密裏に人造生命体を製造しているなど各国政府……いや、特に教会関係者が知ったら黙ってないだろう。


 つまり、あの時感じた厄介事の予感がまんまと的中した訳だ。


 そしてシャワー室のドアが開き、綺麗になった少女────TE-TO01と共に出てきた瑠璃が小声で俺に声をかけてくる。



「どうする……御影」


「どうするったって、どうする事も出来ねぇだろ。流石にまだ学生の俺達に出来る範囲を超えてる」


「しかしこのままというのは……」


「あぁ……とりあえず、皆を集めて話すしかねぇだろ」



 そう言って瑠璃と互いに顔を見合せ、そして同時に頷く。


 そんな俺達を前にTE-TO01は不思議そうに俺達を見上げ小首を傾げるのであった。






 ◆






「はぁぁぁ?!人造生命体やてぇぇぇ!?」


「ばっ────静かにしろ!周りに聞こえる」


「あっ、すまん……」



 あの後シャワー室から戻ってきた俺達は他の奴らを集めてTE-TO01から聞いた話を伝えた。


 それを聞いて都胡が驚くあまり大きな声を上げたので注意を促し周囲を見渡す。


 周囲の観光客達はこちらに注目していたが、どうやら都胡の大声に反応しただけで、その内容までは聞き取れていない様子だった事にひとまず安堵する。



「しかし……人造生命体の製造など、魔法協会や聖教会では禁忌とされてる事だぞ」



 静かに俺の話を聞いていた父さんが深刻そうな表情でそう口にした。それに同意するように母さんや叔父さん夫婦も頷いている。



「そういえば昔にもあったわねぇ……人造生命体が関わっていた事件が」



 元刑事である母さんがその時のことを懐かしむように話し始めた。



「ほら、陽影さんも憶えてるでしょう?何人もの他種族が連れ去られた事件」


「確かにそんな事があったな。〝子供が消えた〟という問い合わせがいくつも来ていたよ。そういうのは警察に連絡するのが当然だけど、相当慌ててたんだろうね」


「結局は犯罪組織と癒着のあった新興宗教が黒幕だったのよね……連れ去られた子供達は実験に使われて、全員を助けることは出来なかったわ……」


「無事に助け出せた当時の子供達についても、今でもその事がフラッシュバックして悪夢に魘されているらしい」



 当時を振り返り、そして最後に〝あってはならない事だった〟と話す父さん。


 それを聞いていた俺達の間に重苦しい空気が流れるが、その空気は〝きゅるる〟という可愛らしい音でぶち壊された。


 そちらに顔を向けると、TE-TO01が自身のお腹を一瞥してからこう言った。



「エネルギーが枯渇しております。速やかなエネルギーの補充を要求します」


「つまり腹が減ったんだな」



 やれやれ……こうして見るとただの子供にしか見えないのだが、その子供が禁忌とされている存在だというのだから妙に笑えてくる。


 見れば俺以外の奴らも思わず笑みを零していた。



「もうお昼だし、ご飯にしましょうか?」



 母さんの一言でTE-TO01に関する話はお開きとなった。


 ただ一つだけ、どうしても決めなければならない事がある……。



「とりあえず、先ずはお前の名前を決めねぇとな」


「名前……ですか?」



 可愛らしく小首を傾げるTE-TO01。


 流石にその名称で呼ぶには面倒だし呼びにくいからな。


 すると都胡達がここぞとばかりに彼女の名前を考え始める。



「髪が白いから〝シロ〟でええんちゃう?」


「ペットじゃねぇんだぞ。却下」


「〝イヴ〟でいいんじゃないかな?」


「安直だし、こいつを作った奴らが探しているとするなら、その名前はちょっと不味い」


「〝ユキ〟は?」


「なんかしっくりこねぇな」


「01から取って〝イチ〟でいいんじゃね?」


「ハァ〜……」


「いや、なんで俺の時だけため息なんだよ?!」



 どうにも提案された名前はどれもしっくりこないものばかりであった。


 とはいえ俺もそこまでネーミングセンスに自信がある訳では無い……TE-TO01の名前について本気で悩み始めていたその時、瑠璃がこんな名前を提示した。



「〝テト〟というのはどうだ?」


『〝テト〟?』



 瑠璃が提示した名前に俺達の声が重なる。



「〝テト〟というのはベトナムという国において最も重要な祝日らしい。〝旧正月〟というのか?確か正月というのはここでは新たな一年の始まりなのだろう?」


「まぁ、確かにそうだが……」


「新たに名前を与えるんだ……そうした縁起の良い名前の方が良いだろう?それに、〝TE-TO〟は〝テト〟と読めるしな」



 なんとも納得のゆく名前である。


 確かに名付けるならば縁起の良い名前の方がずっと良い……俺達は瑠璃のセンスの良さに感心しながら、TE-TO01の名前を〝テト〟にする事に決めたのであった。



「つーわけで、お前の名前は今から〝テト〟というのはどうだ?」



 せっかくの良い名前でも相手が気に入らなければ話にならない。


 俺に問いかけられたTE-TO01は暫く考え込んだ後、まるで自分に言い聞かせるようにしてこう宣言した。



「はい、私の名前は〝テト〟ですと、新たな名前を受け入れます」


「そうか、それじゃあこれから宜しくなテト」


「……これは?」



 俺が握手を求めると、テトは不思議そうな表情でその手をじっと見る。



「これは〝握手〟といって、お互いこれから宜しくという意味での行動みてぇなもんだ」


「これはしなければならないものですか?」


「嫌だったか?」


「いいえ、テトは貴方からの握手を受け入れます」



 そう言ってテトはゆっくりと俺と握手を交わすのであった。



 〝く〜……〟



「エネルギーが枯渇しております。速やかなエネルギーの補充が必要です」


「ははは……」



 せっかくいい感じでいたのに、締まらねぇなぁ……。

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