表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/127

筋肉皇女8

 情報ギルド〈ペンの翼〉のお手並み拝見だ。


「せっかくだから、ここの水を少し貰っていこうか」


「はいっ」


 水筒に、沢から水を分けてもらうことにする。


 不可解な紋章といい、周囲に満ちている空中魔力(エアル・マナ)といい、自分で飲むのは少し腰が引けてしまうけれど、サンプルとして手元に置いておきたいところだ。


「……よし、と」


 水筒にたっぷりの水をいただき、リィトは立ち上がる。


 さぁ、と風が吹く。


 すでに夕方の匂いがする。肌寒い。


 日が沈む前に帰らなくては。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか」


「はいっ」


「ええ、リィト様」


「──警告」


 警告。


 ……警告?


「ナビ? どういうことだ、警告って」


「敵性反応。マスター、先日の猛虎型モンスターです──周囲の魔力反応により索敵精度が低下していました、申し訳ございません……奇襲です」


 ナビの声が終わるか終わらないか。


 そのとき、低いうなり声が地面を震わせた。

『GYAAAAAAA!』


 トーゲン村を襲撃し、花人族たちのマタタビ酒で撃退された猛虎型モンスター。


「二人とも、下がって──」


 リィトは、魔力を集中させる。


 ベンリ草の種子を発芽させていたら、間に合わない。周囲にある植物の力を借りることにした。


 リィトの魔力を吸い込んだ下草が、爆発するように巨大な背丈に成長する。


 トゲトゲと固い草が目を引っ掻いたらしく、ヌシが驚いて少し怯んだ。


 その隙を見て、リィトたちは大きく撤退する。


「マタタビ酒はあるか、フラウ!」


「ご、ごめんなさいっ。持ってないです」


「問題ない。あの虎には悪いけど、少々手荒なまねをしないと」


「だ、だめですっ!」


「え?」


「あのヌシは、フラウたちと生きてきたお山のヌシだから、傷つけたり、やっつけたりしたら……っ!」


「でも、」


 リィトは困り果てる。


 たしかに、あの猛虎型モンスターと共生関係にあったおかげでフラウたち花人族たちは、ここの東の山で生きてこられたのかもしれない。


 けれど、今は命の危機だ。


 どう見ても、ヌシと呼ばれた猛虎型モンスターは興奮して怒り狂っている。


 戦わねば、食われる。


 今は、そういう状況だ。


 しかも、肝心のマタタビ酒もないのだから。


「フラウ、ダメだ……やっぱりここは」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ