表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/127

筋肉皇女5

 今までほとんど、雨らしい雨が降っていないことが、いい加減気になってきた。


 多少の小雨は降っても、畑はちっとも潤わなかった。


***



 死ぬ。ぜったい死ぬ。


 リィトはぜぇぜぇと息を弾ませながら、前を歩くフラウとアデルの後ろを必死についていく。


 東の山に足を踏み入れたのは、花人族の集落を助けたときと、何回か薪集めを手伝ったときくらい。


 今回歩く道は、そのときとは比べものにならないくらいに野性味あふれる山道だった。


「は、はぁ……はぁ……」


「大丈夫ですか、リィト様~?」


「だ、大丈夫、です」


「フラウのおやつの春ベリー、食べますか? 元気でます」


「ぜ、ぜぇ、ありがとう……食欲はないかな……」


 ちょうど腰掛けられそうな倒木があったので、少し休憩をとることになった。小まめな休憩が山歩きには欠かせない。


 水筒の水をごくごくと飲み干し、ふぅ、と人心地つく。


 植物魔導への突出した才能以外は、リィトは本当に普通の人間だ。


 しかも、インドア派。


 山道を歩けば、当然息が切れる。


 白い第十五騎士団名誉団長の装いを少しも汚さず、余裕綽々で歩いているアデル……については、いいだろう。もともと彼女はフィジカルエリートだ。


 予想外なのは、いつもの辞書を両手に抱えたままのフラウも、さくさくと山道を進んでいくことだった。


(ふぅ……きっつ……。でも、これで仮説が立ったなぁ)


 花人族が畑仕事に精を出し、様々な植物を愛でて育てたがる理由だ。彼らはどうやら、周囲に植物があればあるほど、身体能力や生命力が底上げされているようだ。


 その昔、花人族が東の山に逃げ込んで、そのままこの場所を離れられなかった理由もそれだろう。


 植物がないと、極端にパフォーマンスが落ちてしまうのだ。


 となれば、カラカラに乾いた荒野を突っ切って別の土地に移動するというのは難しい。


「……だとすると、水不足には理由がありそうだよなぁ」


 もともと、花人族はこのトーゲン村の周辺で暮らしていたらしい。


 ならばほぼ間違いなく、平野部分も緑に溢れていた、ということになるだろう。それなのに、今はこの有様だ。


 昔から同じ気候や降水量だったとは考えられない。


 気候や天候だけではない。


 そもそも、花人族が栄えるためには水場が必要だったはず。



【書籍版1巻】、新レーベルグラストノベルさんから発売中です。

パワー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ