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異世界にはメディアリテラシーが必要だと思う12

「むしろ、この村で調理を担当いただくのはいかがですか。マスター」


「いや、それはさすがにさ。相手は皇女様だよ?」


 ナビとそんな話をしていると、噂のアデルが帰ってきた。


 フラウたちと一緒に東の山でみつけた大きな倒木の運搬に出かけていたのだ。誰も怪我なく帰宅してくれたようで、何より。


「ただいま戻りました!」


「ああ。おかえり、アデル」


「た、た、た、ただいまっです、リィト様あぁぁ!」


「……うーん、この様子のおかしさ」


 どうやら、「おかえり」がアデルの琴線に触れたらしい。


 乙女心はわからないものだ。


「今日もありがとう、ハイペースすぎないか?」


「いえ! 東の山での薪集め、よい鍛錬にもなっています。リィト様は、またその鉢植えの世話をされていたのですか?」


「ん、まあね」


 謎の芽Xは、少しずつ育ってきている。


 発芽当初には目に見えるほどだった青い光は、


「アデルさん、とてもかっこいいのです! フラウたちではビクともしない木を、ひとりでずりずり動かします!」


「フラウの応援のおかげよ。それに、今日は花人族の集落だったところに案内してもらったのも興味深かったわ」


「隠れ里ですね。リィトさんが畑を貸してくださっているおかげで、フラウたちは山から下りてこられました」


「もっと褒め称えるといいわ。リィト様はいつだって、弱き者や虐げられている者の味方です!」


「いやいや、買いかぶりすぎだよ」


「そんなことは! 対魔戦争のときにも、正体を隠して様々な善行を──」


「目立ちたくなかっただけだって」


 結局は、アデルに正体を暴かれて帝国の騎士団に力を貸すことになり、英雄とか呼ばれることになったわけだけれど。


「そんなことより、トーゲン村の暮らしはどうだい」


「そ、うですね……はい、リィト様。思っていたよりもずっと、すばらしい場所だと思います」


 思ったよりも素直に、アデルがはにかんだ。


「帝都にはない時間の流れというか、畑に出ると、土と自分しかいないというか……リィト様が植物魔導を使わずに畑仕事をされている意味が、少しわかったような気がします」


「じゃあ、僕は帝都に帰らないって方向でいいかい?」


「……それは、でも──」


「アデルが困っていたら、僕はかならず駆けつけるよ。でも、帝都での暮らしはもう窮屈なんだ」



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