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異世界にはメディアリテラシーが必要だと思う11

「いや、抱きつかないで! アデルやめろ、本気で抱きつかれたら骨が粉砕されちゃうっ!」


「はっ!? も、申し訳ございません……はしたない真似を!」


 焚き火に照らされていた名残なのか、アデルの乳白色の肌がぽっと赤らんだ。


 リィトの小屋に来たがるアデルを客間に押し入れて、リィトはやっと自分の小屋に帰っていく。


「さて、僕も寝るか」


 焼きすぎたチキンが余っているようだ。


 明日も同じ味のものを食べるのは、すこし味気ない気がするけれど、帝国の塩辛い加工肉よりはマシだ。


***



 翌日からの三日間、アデルはトーゲン村で汗を流した。


 早朝から畑仕事。


 午後からは東の山で薪の調達。


 期待通り、アデルの怪力はトーゲン村の役に立っている。


 アデル自身も、山歩きや農作業を楽しんでいるみたいだ。


 しかし、だ。


 アデルの、パワー以外の新たな能力が判明したのは、リィトにとって意外なことだった。


「チキンスープ旨いな……」


 バーベキューで余った鶏肉でアデルがささっと作ってくれたチキンスープは、濃厚な鶏出汁が嬉しい。


「こっちの鶏ハムっぽいのも絶妙」


 まだ調理していなかった鶏肉も、アデルの手によって調理された。


 むね肉を芋のデンプンをつかってつるりと仕上げ、ハーブと塩で味付けをした鶏肉。コンビニで売っていたサラダチキンみたいな味だ。


「帝国のお姫様が、料理上手いなんてな……」


「訂正。アデリアの調理能力は、どうやら鶏肉のみに特化しているようです。野菜やその他の肉については、一般的な調理レベルの域を出ていないかと」


「でも、チキンは絶品だ」


 いい歳をして、昼食前につまみ食いをしたくなってしまうくらいには旨い。


 意外な才能だ。


 アデル曰く、

『チキンを食べると、筋肉の調子がいい』


 ということで、それを発見してからずっと食べ続けていたのだとか。


 栄養学を自ら切り開いたということか。


「うーん、ずっと一緒にいたけど……ここまでとは」


 鍛錬マニアなところはあるな、とは思っていた。


 しかし、口にするものまでこだわっていたなんて──アデルのことを『筋肉皇女』と揶揄している連中のうち、ここまで頭を使って鍛錬をしている人間がいるだろうか。


「……アデルに料理を教わりたい」



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