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異世界にはメディアリテラシーが必要だと思う10

 アデルの表情が少し曇る。


 帝都に帰った彼女を待っているものは、望んでいない婚約噺と、騎士団の仲間からの揶揄、親族や貴族たちからの嘲笑だ。


 戻らなくても問題ない、という状況が切ない、


 戻らない方が気が楽だと思っている、自分の心も。


「わたくしでよければ……」


「そうか、それは──」


「「「アリガトー!!!」」」


「わっ!?」


 花人族の「アリガトー」に、アデルが飛び上がる。


 まっすぐな感謝の言葉。


 リィトが帝都で得ることがなかったもの。


 もちろん、アデルも。


「……っ!」


「いいもんだろ、こういう暮らし」


「……。そう、ですね」


 ゆっくりと、時間が流れる。


 自分の働きが、誰かの糧になる。


 それを、誰かに感謝される。


 対魔戦争では勝利を収めて当たり前、敗北など許されないという状況で戦ってきたリィトたちにとっては得がたい幸せだ。


「あっ、でも! リィト様に帝都へお戻り頂くこと、諦めてはいませんからね!」


「はいはい」


 ふっ、とリィトは思わず笑ってしまう。


 どこまでいっても、アデルはアデルみたいだ。


「じゃあ、そろそろ寝ようか」


 フラウはすでにウトウトと睡魔と戦っている。花人族たちは、日没と同時に一気に眠くなってしまう傾向にあるようで、バーベキューの序盤からしっぽりモードになっていた。


 膝で酔い潰れている猫人族たちをそっとどかして、リィトは伸びをする。


「えぇっと、アデルの寝る場所は……っと」


「り、り、リィト様と同じ場所でかまいません!」


「そうもいかないよ──すくすくと育て」

〈生命促進〉で、ベンリ草の家を編み上げる。


 アデル用の客間だ。


「じゃ、おやすみなさい。アデル」


「あ、はぁ……はい、おやすみなさい、リィト様」


 少しガッカリした顔のアデルに、ひらひらと手を振る。


 ふと、リィトはあることを思い出す。


 しまったな、と反省した。


 自分が貰って嬉しかったものを、アデルに返していないじゃないか。


「ありがとう」


「……え?」


 小屋に入ろうとしていたアデルが振り返る。


「目立たず好きなように暮らすから、帝都には帰れないけど……僕を迎えに来てくれて、ありがとう」


「り、リィト様……っ」



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