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異世界にはメディアリテラシーが必要だと思う8

 たしかに、アデルの異常ともいえる腕力は、目の前で見せつけられると惚れ惚れしてしまう。


 倒れてきた大木を、可憐な姫君がその腕ひとつで受け止める──身体強化の魔導かと思うけれど、そうではない。鍛え上げてきた彼女の肉体が可能にする芸当である。


 それを、筋肉皇女だのと馬鹿にする連中は、わかっていない。


 ──これほどまでの力を手に入れるのに、彼女がしてきた研鑽の量を。


「……トーゲン村の住民を守ってくれて、ありがとう。アデル」


「い、いえ! 騎士として当然のことをしたまでです」


 耳を赤くして照れるアデルが、もごもごと続ける。


「薪割りの手間はありますが、村にこうした資源があったほうがいいのではと」


「そ、それにしても多くない?」


「リィト様がいらっしゃってから、薪はいくらあっても足りないくらいだ、とフラウさんがおっしゃっていましたので」


「……まぁ、そうだね」


 リィトは、アデルがどすんと地面に置いた枯れ木を分析する。


 幹はともかく、枝は完全に乾ききっている。薪割り用の斧では落とすのが難しそうな太い枝だけれど、ミーアからのこぎりを買い付ければ切り落とせそうだ。


「……フンッ!」


「あっ」


 ベキョ、という軽い音とともにアデル太い枝をへし折った。


 アデルは手慰みに、大男の胴くらいにある太い枝を弄ぶ。


「しかし、なんですね……リィト様」


 メキッ!


「無心で薪を拾う時間、今までにない経験でした」


 バキッ、


「農作業をする花人族のみなさんのことも、遠目で拝見しまして、」


 メキョッ、


「その……わたくしも、お手伝いをさせていただけないかと」


 べキベキッ!


「……そう思うのですが、いかがでしょう」


「う、うん。いいと思うよ」


「本当ですか! ありがとうございます、リィト様!」


 メキメキメキィ!


 太い枝はいい感じの薪になっていた。


「……。あの、アデル」


「はいっ!」


「薪割りもありがとうね」


「え? いえ、その……ダメでした?」


「いや、とても助かったよ。素手でいくとは相変わらずだね」


「はいっ! 戦後も研鑽は欠かしていません!」


 輝く笑顔のアデル。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 素晴らしい«٩(*´ ꒳ `*)۶»♬︎♬︎ 枯れ木とはいえ、抱き折り、引き裂き、へし折っていく♬︎♬︎ その研鑽と、ストイックなまでの功夫♬︎♬︎♬︎♬︎ 讃えあれ«٩(*´ ꒳ `*…
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