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自由研究にいそしもうと思う8

 人族(ニュート)の文字や言葉については、ナビはある程度の翻訳をしてくれるのだ。転生者であるリィトにとって、ナビの存在は頼もしいことこの上なかった。はじめは声だけの存在だったけれど、彼女に会うために人工精霊(タルパ)として実体を与えるほどには。


 ナビを通して古文書を解読。


 ものの数分もかからずに、ナビが翻訳してくれた内容は神話ともお伽噺ともつかないものばかりあった。


「総括。ナビの共通しているのが──【世界樹】という単語です」

【世界樹】の部分は、古代語そのままだったので意味を教えてもらった。


「世界樹……それって、大昔にあったっていう精霊樹だろ」


「はい。この世界がもっと豊かで、モンスターたちの暴走などもなかったころに世界各地に数本あったと記憶されている、清らかな魔力を生み出す樹木です」


「謎の種子Xが、その種子?」


「いえ、世界樹は光を帯びていたという記述が見つかるのみでして……そもそも、世界樹が種子をつけるというのも聞いたことがありませんし」


「そりゃそうだ。僕だって聞いたことない」


 種子が現存しているとしたら、S級遺物だ。


 特に、植物魔導なんて変な魔導を使う、酔狂な魔導師にとっては重要な情報だ。リィトが聞いたことがないのだとしたら、きちんとした記録は残っていないのだろう。


「みゃ~、この短期間でこれだけ資料かき集めたわがはいを褒めてほしいですにゃ……」


「あ、すまない、マンマ。すごく助かったよ」


 まさか、世界樹なんて単語が飛び出すとは思わなかった。


 リィトがひとりでアレコレ考えていたら、検討すらしなかった可能性だ。


「にゃふっ、お礼はマタタビ酒! それか、頭なでなでですにゃ~」


「えっ、いいのか!?」


 頭なでなで。


 人族(ニュート)よりも小柄な猫人族ではあるが、無断でするのも、許可を申し入れるのも気が引けてしまっていた。


 だが、猫派のリィトとしては、可能ならばしてみたかったのだ。


 もふもふの耳の生えた、柔らかそうな猫っ毛のマンマをもふってみたかったのだ。


「遠慮なく!」


「ふにゃ? え、あ、今のは軽口で……ふにゃ~~~~」


「よーしよしよし! さすが敏腕記者!」


「ふんにゃ~~~~?」


 うきうきで頭を撫で回すリィト。


 まんざらでもなくゴロニャンするマンマ。


 双方、まったくもって他意はないものの、絵面としてはややショッキングなものになっていた。いや、本当に、モフりたい、モフられたいという需要と供給がマッチした結果なのだけれど。お互い、まだ年若いがいい大人だ。


「……マスター、これはさすがにアレすぎます」


「おおう、フラウちゃん。見ちゃダメなのニャッ」


「はわーっ」


「ミーが塞いでてあげるニャ」


「はわわぁ」


 至福のモフモフタイムの間、フラウの目はミーアの肉球ばりにぷにぷにの手のひらで目隠しをされていたのであった。


 我に返ったリィトは、心から思った。



「どうせなら、ナビの絶対零度の視線を隠しておいてほしかった……」



 ともあれ、リィトの隠居生活最大の楽しみである「謎の種子X」についての自由研究はのんびり、まったりと進行中だ。


「まぁ、まさか世界樹ってことはないだろうけど」


 集めて貰った資料に目を通す。


 図表にある種子が、なんとなく謎の種子Xに似ている気がするが気のせいかデマだろう。


 いや、万が一、億が一。


 本当に世界樹の種子だとしたら、あんな小瓶に詰められて、いらない資料の墓場のような物置部屋に放置されているとか──


「……ありえないよな?」


 鉢植えのかわいらしい芽を眺めながら、リィトは呟いた。



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― 新着の感想 ―
[一言] あの宮廷魔術師の様子だと「なんか光ってる珍しい種だが、所詮は種だし研究なぞする価値はないだろう。おい、そこのお前、これ資料室に仕舞っとけ」「チッ、なんで俺(私)が...」って感じで放り込まれ…
2022/03/12 11:05 退会済み
管理
[気になる点] 前話と重複されたものが掲載されていますので修正をお願いします。
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