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クビになろうと思う。4

 嫉妬、やっかみ、嫌がらせ。


 無欲、無気力、出世に無縁。そんな顔をして王族とのコネクションや圧倒的な魔導師としての能力や知識を持ったリィトを敵視する同僚たちは後を絶たなかった。


 いや、そんなことより別にやることあるだろと思った。


 そもそも、宮廷魔導師になれば好きな魔術や植物について研究ができると思っていたのに、やれ貴賓への御前講義だ、やれ姫君とのお茶会だ、やれ王家の方々の護衛だなんだと、関係ない仕事が多かった。


 というか、ブラックだった。


 良いところといえば、給与がめちゃくちゃいいくらい?


 そんなある日。


 誰もやりたがらない物置の掃除を引き受けて、意外な発掘物や見たことのないガラクタに好奇心をくすぐられたリィトが残業をしていたときのこと。


「あやつが公爵殿下の茶に毒を入れたのです!」


 ついに、ハメられた。


 皇帝の弟である公爵の茶に毒が入っていた。


 リィトにだけ、アリバイがなかった。


 というか、もとよりリィトを糾弾するための自作自演だった。皇帝の座を狙う公爵には目の敵にされていたし。


 正直、ここまでやるのかとビックリした。大人なのに。平和に暮らすために命がけで地下迷宮から湧き出してくる魔物たちを封印した戦争はなんだったんだ……ああ、本当に、この職場環境は無理ですわ。


 つまみ出せ。


 追放だ。


 いや、死刑だ!


 そんな声が飛び交うのを聞いて、リィトは思ったのだ。


(こ、これは……っしゃーーっ! やったね、追放チャンスだ!)


 思わずガッツポーズをしてしまい、シリアスな糾弾場面がちょっと変な空気になったのは申し訳ないと思っている。


 宮廷魔導師になると、自由に職を辞すことも許して貰えなかった。


 あなたは英雄なので、とか。そう言う理由で。


 たしかに帝国の英雄が、帝国の中枢から離脱というのは色々とマズいだろう。だが、それはリィトにとってはかなり息苦しい状況だった。


 帝国を救う大冒険なんてするんじゃなかった、とまで思っていた。


 だからこそ。


 濡れ衣、ありがとう。大歓迎だ。


 結局、死刑は免れた。


 対魔戦争のときからの知り合いの姫騎士がけっこうな熱量で庇ってくれたそうだ。それに加えて、決定的な犯行の証拠がない。


 皇帝からの恩赦という形で、死刑という選択肢は消えたらしい。



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