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住民を受け入れようと思う。3

 フラウと同じ桃色の髪は腰より長く、背も高い。豪華な花冠が神々しいまである──いかにもファンタジーな美女。


 フラウがおずおずと口を開く。


「あの、そ、のぉ」


 隣に立つ母から何か伝えられて、それをリィトにわかる言葉に直そうとしているらしい。


 通訳というやつだ。


「え、と、教えてほし、のは、あなたのお名前、なのです」


「あっ」


 しまった、とリィトは頬を掻く。


 今の今まで、名前も名乗らずにきてしまった。さすがに礼儀知らずだ。


「リィトです。リィト・リカルト」


「りぃ、と、さま!」


「いや、様はいらなくて……」


 その言葉をさえぎるように、フラウは「リィトさま、リィトさま!」とリィトを連呼した。イワンの馬鹿ゲームみたいな連呼の仕方だ。ピザピザピザ。


 花人族の代表として、フラウはぺこりと頭を下げた。



「りぃとさま。あなたの畑で、はたらきたいのが、わたしたちですっ!」



 やっぱりその言葉は片言だったけれど、切実さは痛いほどに伝わった。



 ◆



 その夜。


 花人族たちの宴を抜け出して小屋に帰ったリィトは、ぼんやりと考え事をしていた。窓から星空が見える。


 ナビを起動すると、涼やかな声がリィトに問いかけた。


「質問。マスターは花人族を配下にするのですか?」


「配下じゃないよ、この畑の……小作人?」


「どっちもどっち、では?」


「……それはそうかも」


「誰にも干渉されずに好きなことをして自由に生きる、とマスターはおっしゃっていました。彼らをこの畑に関わらせることは、その目標と矛盾しませんか?」


 リィトは肩をすくめる。


 もちろん、誰にも干渉されずたったひとりで生きるなんて不可能だ。


 衣食住は植物魔導で最低限はどうにかなるけれど、たとえば本物の肉は店で買わないと手に入らない。肉っぽいものは手に入るけれどね。


「……せっかく買った土地の開墾には人手がいるし、彼らは春ベリーを安定して栽培したい。それに、ちょっと春ベリーの他にもベリー類の栽培をしないといけないからね。無料の労働力が手に入るなんて、願ってもないさ。Win-Winってやつだと思う」


「労働力ですか」


「ああ。自治区の商人さんに、赤ベリーの安定供給も約束しちゃったからね。労働力はいくらあってもいいさ。使えるものは使わないと」



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