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住民を受け入れようと思う。2

 ちょろちょろとしか汲み上げられないけれど、いくつも水道を作れば必要な量はなんとか確保できた。


 ベンリ草はリィトの魔力さえあれば、どんな土地でも育ってくれる優れものだ。


 花人族たちが徹夜でバケツを交換してくれたおかげで、ロスもない。


 乾ききった土に、少しずつ水を含ませていく。


 痩せた土地に鉄分を与えて、肥料を与えて、蘇らせていく。


 深い経験と繊細な技術が必要なその作業を、花人族たちは完璧にやりきってくれた。それを目の当たりにして、リィトは感動していた。


 植物に対して、こんなに一生懸命な存在を自分以外には知らなかったから。


 すごい。


 正直、感服だった。


 地面に植えた春ベリーの苗(花人族たちの「宝」だそうだ)を、最後の仕上げで一気に芽吹かせたのはリィトの〈生命促進〉だけれど、それを可能にしたのは花人族だ。


「「「アリガトー! アリガトーッ!」」」


 最高潮の盛り上がりを見せている花人族たち。


 その手には、たわわに実った春ベリーの枝が握られている。さっそくジュースにした春ベリーで乾杯をかわしている人々が、リィトを褒め称える。


 ベリー酒もあるようだが、さすがに発酵が間に合わないらしい。


 ぐったりとしていた人たちも回復して宴に参加しているのを見て、リィトはほっと胸をなで下ろした。


 というか、意外と体育会系の飲み会ですね? いや、ノンアルだけどさ。


「アリガトーーーーッ!」


 何度目かわからない乾杯に、リィトは盃を掲げた。


「……ははは、どうしたしまして……」


「マスター、おめでとうございます」


「え? 何がだい、ナビ」


「……上大陸がモンスターの脅威を脱したのはマスターの働きによるものですが、マスターがこれほどまでに感謝の言葉を述べられているところをナビは観測しておりません」


「……うん、それはそうかも」


 胸がじんじんと温かい。


 感謝される、っていうのは悪くないみたいだ。リィトはこの土地で他人と関わらずに、ひとりでスローライフを満喫するつもりだ。


 けれど、今までリィトが接してきた「他人」と花人族の人たち──特に、リィトのそばにぴったりとくっついているフラウは違うみたいだ。


「それに、これは大収穫だよ。こっちに来てから、こんなに旨いものを食べたのは久しぶりだ」



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