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クビになろうと思う。3

 名誉のために付け加えると、リィトとて食糧難を救うこともあったし、村の復興を手伝うこともあった。


 そういう活動をしたときには、『施しの聖者様』という二つ名がついた……両極端すぎない?



 英雄。聖者。


 そんな評判はリィトをじわじわと追い詰めた。


 もともと目立つのが嫌なので、目深にフードを被った魔導師感マシマシのコスチュームで活動をしていたので顔が広く知られていないことだけは幸いだった。


 だが、顔は知られていなくても名は知られている。


 どこに行っても、正体がバレた瞬間になんとなく遠巻きにチヤホヤされる。女の人はしなだれかかってくるし、悪い大人がゴマを擦ってくる。嫉妬ややっかみにもさらされるし。


 異世界転生、せっかくのセカンドライフ。


 ただただ、おだやかに。


 幸せに、静かに暮らしたい。


 転生者ってことで、強くてチヤホヤされるのは、そりゃあ気分がいい。


 それでも、もう限界だった。


「無理、もう無理!」


 いわゆる傭兵っぽい冒険者として活動していたリィトは一念発起した。


 自由気ままな(という建前の)冒険者生活に別れを告げ、堅実に働く魔導師さんになろうと決めたのだ。


 ──宮廷魔導師。


 大陸の大部分を領土にしている〈ロマンシア帝国〉の最高機関である宮廷に仕える叡智と武力を兼ね備えたエリートたちの集まりだ。


 彼らであればリィトのことを英雄でも聖者でもなく、ただのひとりの同僚として扱ってくれるのではないかという期待もあった。


「俺、宮廷魔導師になる!」


 幸いなことに、帝国には大戦での活躍という恩がある。


 就職はあっさりと決まった。


 特Sランク冒険者のリィト・リカルトの電撃引退は業界と大陸を震撼させたが、知ったこっちゃなかった。



 宮廷魔導師としての宮仕え。


 いわゆる、国家公務員というやつだ。


 リィトがこないだの大戦の英雄であることは、公然の秘密となった。


 帝国は戦後の体勢を構築するのに忙しいはずだし、過去にこだわっている暇はないだろとリィトは高をくくっていたのだ。


 憧れの研究職で、あらゆる文献や資料を読み放題。大好きな植物や魔導の研究をすることにした。


 数年の月日が流れた。


 明るい同僚たちに囲まれて、アットホームな職場です!


 ──とは、ならなかった。



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[一言] >明るい同僚たちに囲まれて、アットホームな職場です! いや、それむしろダメなやつ
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