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花人族4

 あわわ、と震える少女。


 まともに言葉を喋れていない。


 ナビが無機質な声でナビゲーションをしてくれる。


「花人族は開拓された土地には住まないため、人族(ニュート)の言語を理解しないというのが定説です」


「ふむ」


 少女は大切そうに苗を抱いている。


 他人の畑に勝手に苗を植えるほど、この苗を育てなくてはいけない理由があるらしい。


「安心して、大丈夫」


 リィトの言葉に、花人族の少女の表情が緩む。


「……君、名前は?」


「ふ、らう」


「フラウ?」


 こくこく、と花人族の少女はヘドバンかってほどに激しく頷く。


「そ、そう、です! フラウ、が、名まえの、フラウなのですっ!」


 ものすごいカタコトだった。


 言葉が通じるのが嬉しくて仕方がない、という様子だ。


 どうやら簡単な言葉が分かるようだし、意思疎通はできるみたいだ。


「僕の専門は植物魔導だよ。それに元宮廷魔導師で──」


 肩書きで相手を安心させられるなら、安いものだ。


 人の噂が立つような人もいない荒れ地だしね。


 けれど、少女はきょとんとしてクビを傾げている。


「……?」


 ほほう、とリィトは唸った。


 この子には宮廷魔導師というものに関して何の知識もないらしい。この分だと、侵略の英雄の噂だって当然知らないだろう。


 リィトは一気に少女に心を開いた。


 この子は絶対にのんびり隠居生活を送るのに脅威にはならない。


 と、同時に。


 リィトは春ベリーの病状を理解した。


「この苗の病気、僕なら治せるよ」


「……あ、え?」


 少女の目が、輝いた。



 ◆



 畑に戻って、春ベリーの前にしゃがみ込む。


 リィトの隣には、ちんまりと花人族の少女フラウが座り込んでいる。


「水切れと鉄欠乏。ベリー類、とにかく春ベリーは鉄分を食う植物だからね」


 リィトは説明をしながら、持ち歩いている鉄粉を畑に蒔いた。


 昨日は土をほぐしただけなので、土壌の性質までは気にしていなかった。


「鉄粉を蒔くのは、その場しのぎだけどね。君の苗を育てるだけなら問題ないだろう」


「……は、い」


 こくこく、とリィトの言葉に頷くフラウ。


 言っていること、わかっているのだろうか。


 リィトは作業を進めながら、この少女との距離感を測りかねていた。



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