表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/127

人工精霊と謎の種X 9

 暴れ回るツルによって土がかき混ぜられていく。


 ベンリ草は、朽ちれば良質な肥料になってくれる。


「──朽ちて眠れ」


 ぴた、とベンリ草の動きが止まる。


 ぼろぼろと朽ちて柔らかくなった土の上に散らばっていった。


「よし、ちょっとは肥料になるかな」


 作った畑の広さは、だいたい二十五メートル四方。


 大農場などではないけれど、リィト一人が幸せに暮らすための畑としては十分な広さ。


 試しに、いくつかリンゴの種子を蒔いてみた。


 使い捨てではなく、これから手をかけて面倒を見る畑なので、木と木の間には適度なスペースをあけておく。


 今蒔いた種は帝都に出回っている、赤くて小さくてちょっと酸っぱいリンゴだけれど、これからは品種改良にチャレンジするのもいいな。


 蜜がたっぷり入ったリンゴを、久々に食べたい。


「すくすくと育て」

〈生命促進〉の魔法で、畑の一角が小さなリンゴ畑になった。


 実った果実をもいで、一口囓ってみる。


 じゅわっと果汁が飛び出てきた。


「す、すっぱい!」


 うん、やっぱり酸っぱい。


 それでも、長い一日で乾いた喉が潤った。


 水の確保についても考えなくてはいけない。


 一応、荒れ地を開拓してのんびりスローライフをやり込もうという意気込みでここまで来たのだ。ちょっとした目星は付いている。


 水の問題は後回しにするのは気が引ける。


 畑仕事に使う水の調達は自力でやってみたい。けれど、自分が使う分については早急に確保するべきだ。


「……うん、ここまできたらやっちゃおうか」


 種子入れのポシェットから、その他の種子とは別に取り分けていたものを小屋の近くに埋める。一応は、これもベンリ草の一種。


「さて、上手くいくかな」


 さっそく、〈生命促進〉で育てる。


 地中深くに根が伸びていき、行き着いた地下水をくみ上げた。


「よし、あとはこうして……こう……っ」


 集中、集中だ!


 水をくみ上げることに特化したベンリ草は、地上に生えている部分はリィトの鳩尾当たりまでの低木。


 リィトはその低木の枝に集中して、〈生命促進〉と〈生命枯死〉を繰り返す。


 ねじって、ひねって、管をつなげて──蛇口を作る。


「よし!」


 とりあえず見た目は、完璧に木で出来た水道の蛇口だ。


 地中深くには、おそらく水脈もあるだろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >使い捨てではなく、これから手をかけて面倒を見る畑なので、木と木の間には適度なスペースをあけておく。 数話前に山に向かい、テントや簡易家具が壊れたので、一時的な家を作ったはずですが、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ