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クビになろうと思う。2

 大あくびからシームレスに大溜息を繰り出したリィトの心には、しかし、少しも陰りがない。もう、全然ない。むしろ気分は晴れやか。



「自由だ……圧ッッッッ倒的、自由だ……!」



 静かな、しかし、心からの叫び(シャウト)


 リィトはこの旅が始まってから何回目かわからない圧倒的感謝を口にする。



 無職っていいな!



 そう、リィト・リカルトは無職だった。


 なりたてほやほやの、無職だった。


 前職は宮廷魔導師。


 そのまた前職は──転生者であり、救国の英雄だ。




 現代日本での社畜生活。死、そして転生。


 穏やかに暮らしたい──ギスギスした人間関係はもうこりごりだ。


 そんな思いを抱いて、リィト・リカルトとしての人生がスタートした。


 転生した異世界〈ハルモニア〉には魔導というマジカルな技能があって、生まれ落ちた国はおっかないモンスターによる侵略に苦しんでいた。


 生まれつきに備わっていた『植物魔法』の適性、前世の趣味はガーデニング、ちょっとしたやり込みゲーマーになるタイプの性格、そして転生後に幼少期から膨大な時間をかけて鍛え上げた植物魔法の技術と前世の知識……。



 ──結果。


 リィト・リカルトはお約束のように救国の英雄となった。


 いや、まぁ、そうですよね。


 転生チートってやつですよね、はい。


 そんな思いを抱えながら、こないだの戦──ハルモニアの歴史では〈対魔百年戦争〉と呼ばれている大規模な戦にリィトは終止符を打った。


 おっかないモンスターは地下迷宮(ダンジョン)へと封印されて、地上には平和が訪れたというわけだ。


 リィト、十六才の春のことである。


 幼い頃は神童、そして思春期まっただなかに英雄に格上げである。


 ……まさか、植物魔法がそんな活躍するとは思わなかったのだもの。


 植物。


 穏やかで健やかでヘルシー、そんなイメージがあるだろう


 そんなイメージとは裏腹に、実際の植物には岩だろうがレンガだろうが成長を阻むものをメッキメキにぶっ壊すパワーがある。種類によっては毒を吐くし、無毒な植物でも土地を丸ごと飲み込んで町や農地を台無しにすることもある。


 それが、植物だ。


 リィトが操るのは植物魔法。


 ついた二つ名は『侵略の英雄』……いや、穏やかじゃないにもほどがある。



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