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人工精霊と謎の種X 4

 今回買い取った土地は、東に山がある。南には深い森、西には断崖絶壁と荒れた海。北部だけは平地が開けているので曖昧だが、それらがリィトの土地の境界線ということになっている。


「ま、近くに誰も住んでいないけどルールは守っておいたほうがいいからね」


 土地を勝手に使うのは、当然よろしくない。


 悪目立ちすることは避けたいし、そもそも買った土地だけでも広大だ。焦って権利のない土地まで手を伸ばす必要もない。


「せっかくだし、このチョロチョロ流れる泉を遡るか」


 東の山。


 見れば山肌にはある程度木々が茂っているようだし、もっと近くに寄れば土地の状況も少しはマシだろう。


 植物魔導で土質改善をすることもできるが、なんでもかんでも魔法頼みじゃ芸がない。


 テントを畳んで、リィトは歩き出す。


 牛車もない徒歩での移動は、久々のことだ。



 ◆



 数時間後。


 歩いても歩いてもたどりつかない東の山に、ちょっと心が折れそうだった。


「はぁ……はぁ……」


 やばい、死にそう。


 魔法で作り出した、いい感じの棒にもたれかかって大きく息をつく。余談だが、こういった冒険にはいい感じの棒が必要だ。拾うのがベストだが、この土地にある枯れ枝はどれも脆くて、冒険の相棒としてはちょっと頼りなさ過ぎた。


 東の山は、目の前だ。


 いや、すいぶん前から体感としては目の前だった。


 歩いても歩いても、ふもとまでたどり着かない。開けた平原と山の大きさのせいで距離感がバグっていたらしい。ふ、不覚。


「くぅ……きっついぞ……」


 さらには、先ほどからずっとなだらかな登り坂が続いている。


 この丘を超えれば、山の麓まではもうすぐだろう。


「ま、魔法で……全部やったら……つまらないし……」


 こういう苦労も楽しみのうち。


 そう言い聞かせる。


 ……いや、違うだろ。


 リィトは思い直す。


 ちょっとしたやり込みゲーマーだった前世でも、『やり込み』には時間をかけてもマップ上の移動に労力を費やしただろうか? いや、ない!(反語)


 折しも、自力で丘のてっぺんまで登りきったところだ。


「よし……やるか」


 ツル科の植物の種子を革袋から取り出して、足もとに蒔く。


「──すくすくと育て」

〈生命促進〉の魔法で、すぐに蔦が伸びていく。



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