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土地を買おうと思う3

 受付のおじさんは、暗に「手持ちがちっとも足りないだろう」とリィトを諭しているわけだ。ローン払いはギルド構成員にしか認められていない、という別に知りたくもない情報も教えてくれた。


「なるほど……参ったなぁ、たしかにちょっと足りない」


「うんうん、残念だけど大きな夢を抱くこと自体は悪くない──」


「じゃあ、稼いできますよ」


「え?」


大金貨(ゴルゴルド)千枚、ですよね」


 どさ、どさどさどさ。


 リィトは追加の革袋を鞄から取り出した。


「これが全財産です。細かいお金はもう少しありますが……」


「……革袋一杯の硬貨はいいけど。それじゃ足りないよ?」


 上下大陸で一般的に使われている硬貨は五種類ある。


 大金貨(ゴルゴルド)金貨(ゴルド)銀貨(シルバ)銅貨(ブロン)鉄貨(アイア)だ。


 十万円、一万円、五千円、千円、百円……といった値段感だろう。


 庶民が使うのは銀貨(シルバ)、せいぜい金貨(ゴルド)まで。


 通貨を用いた取引以外に、物々交換も盛んだ。


 革袋にはふつう百枚ずつ硬貨を入れる。


 金貨が五袋あったとしても、土地の金額の三割にも満たない。


「あとここに少し、ミスリル貨があります」


「へ? ミスリル貨って、あのミスリル貨?」


「そうです、細かい貨幣は帝国と自治区では扱いが違うと聞いたので」


 ミスリル貨。


 これは滅多にお目にかかれない代物だ。


 希少金属で作られた硬貨で、多くの国でほぼ等価値で取引することができるすぐれもの。


 一枚当たりの価値はだいたい百万円程度──つまり、大金貨(ゴルゴルド)の十倍。


「五十枚あります」


「うわあああああ!」


「し、静かにしてください!」


 受付のおじさんが叫んだので、周囲から注目が集まる。


 リィトは焦った。目立ちたくないのだ。


「おじさん大丈夫ですか、顔色が悪いですよ……あ、もしかしておしっこですか」


「違います!」


 そうか、違うのか。


 受付のおじさんが、大きく溜息をつく。


「あなたがいきなりミスリル貨なんて出すからですよ」


「でも、土地の売買では使うでしょ」


「若い子がいきなり五十枚出してくるのは、なかなかないです。初体験です。もらわれてしまいましたよ、おじさんの初体験」


「ほ、欲しくなかった……」



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