戦う皇女様はかっこいいと思う。
村に到着すると同時に、リィトはトロッコを急停止させる。
「あ、アデル……いやいや、あれはさすがに──」
いかに鍛え上げられた肉体といえども、あの勢いで走ってくる牛の群れに飛び込んで無事で済むとは思えない。
急いでアデルの無事を確認しようとするリィトの背後で、不穏な気配がした。
「……えぇっと?」
振り返ると、そこには剣を構え、私兵団を従えたジュリアンがいた。
その足下では、収穫したばかりのオリーブが踏み潰されている。
「…………」
リィトは眉をひそめる。
このオリーブは、この村の宝にも等しい。
麦を育てるのにはもともと適していないこの土地で、外貨を獲得できる──そして、リィトがうまい飯を食えるようにと選んだ作物だ。
平気で、それを踏み潰す。
あまり好きになれないな、とリィトは思った。
轟く牛の蹄の音がもうそこまで迫っている。
「ぶもぉおぉっ!」
地震でも起きたかと思うような、地響き。
牛たちの群れは、脅威だ。
その鳴き声にリィトが気を取られていると、背後でズザザとあとずさるような気配。
「まったく、嘆かわしいっ!」
ジュリアンの声が、やたらと遠くで聞こえてなにかと思いリィトが振り返ると。
「いや、遠っ!」
……本当に、ものすごく遠くで仁王立ちをしていた。
「その珍妙な乗り物で、我々を挽き潰すつもりだったのだろう──あの暴れ牛たちで、我が領地を踏み荒らすとは……しかも!」
「いや……遠……」
勇猛果敢、国士無双。
そんな形容をされていた、優れた将であるジュリアン。
それでも、大量の牛を背後にして爆走してくるトロッコの迫力にはやや気圧されていたようだ。
「……貴様、リィト・リカルト!」
「はい、そうです……」
「我が領地で勝手を働き、アデリア姫をたぶらかす不届き者!」
「前者はともかく、後者は誤解ですよ……あと、遠い……」
「この村に伝わる秘宝を持ち去ったことも、誤解だと?」
ジュリアンの唸り声にリィトは首を傾げた。
「秘宝って、あの卵か……?」
「やはり貴様が……っ」
「数百年放置されてたっていうから」
村人たちに聞いたところによれば、「今となっては、どうして大切にしているのかすらわからないが、とにかく高価なものらしい」という、ちょっと扱いに困るタイプのものだったようだ。
とにかく物資に乏しいこの村で、リィトに渡す価値のあるものを──と、なけなしの貴重品ということで差し出されたのが、あの卵と牛だったのだ。
「……大事なものなら返すけれど──あの卵のせいで、牛たちが魔物化している可能性があるぞ?」
「戯れ言を!」
ジュリアンは吐き捨てた。
「まぁ、いい。あの牛どもを我が手でなぎ払ってからだ」
「えっ」
ジュリアンはゆっくりと剣を抜く。
付き従っている私兵たちも、それに続いた。
「おいおい、待て! あの牛は、フニクリ村の大切な資源だぞ」
「魔物化した家畜など、文字通りモンスターも同然だろう」
「いや、ちゃんと元に戻せるんだ! アデルが牛たちと話をつけてる」
「……牛と?」
「いや、その、話せば長いんだけど、そういうことだ」
「……戯れ言にもほどがあるだろう」
リィトは「んぐっ」と唇を噛む。
ちょっと哀れむような表情、やめてくれ。
たしかに、「牛さんと話ができるんです」というのは、この異世界ハルモニアにおいてもメルヘンすぎる状況だけれど。
「──討伐する!」
魔物化した牛たちに向かって、突進するジュリアンを止めたのは、凜と響きわたる声だった。
「いい加減にしてくださいませっ!」
「はっ!?」
暴走する牛たち──と思っていたのは、はたして、そうではなかった。
立ち上る砂埃に見えなかったが、ひときわ立派な牛の背中になびく金髪があった。腕にはマンマを抱きしめている。
牛たちは興奮に我を忘れているわけではなかった。
──アデルのために、走っているのだ。
「アデリア殿下っ!?」
燃えさかる角を振り回した牛が、村に突入してくる。
村のものや作物には目もくれず、ジュリアンとその私兵を追いかけ回している。
「うわ、うわわっ」
火の粉が飛び散り、あわや家屋に燃え移りそうになってしまう。
「じょ、じょうろ!」
リィトが右手からスキル『じょうろ』で水を出す。
勢いがない水量だが、どうにかこうにか消火に成功した。
「おおお~」
村人の拍手になんともいえない気持ちになるリィトだった。
右手からほとばしる清らかな水が、なんとも空しい。
「ふにゃ……」
牛の群れから命からがら逃れてきたマンマが、リィトによろよろと近づいてくる。
「ごめんにゃ……ちょっとハッパかけようと思ったら……こんにゃことに……」
「マンマ!」
「うぅ、牛さんたちはこっちの言葉がわかっているのであるにゃあ……ちょっと煽ったらこんなことに……」
「煽ったのかよ……」
「うう……大げさな見出しは、情報ギルドの基本だにゃあ……」
どんな煽りをしたのやら、ということは置いておいて。
とにかく、マンマが無事でよかった。村人にも大きな被害はなさそうだ。
「あの! みなさん! ありがとうございます!」
アデルの声に、私兵を追いかけ回していた牛たちが大人しくなる。角にともっていた火が消えた……と同時に、魔物化していた姿がもとの牛に戻った。
「なるほど、魔力を使い果たしたのか……っ!」
謎の卵が近くにないとなれば、魔力の供給元もない。
体内に蓄積された魔力を使い果たせば、元の姿に戻る……という仕組みのようだ。
村人たちが、久々に戻ってきた牛をなだめて抱きしめる。
大切な資産であり、共に暮らす仲間でもある──家畜というのは不思議な存在だ。肉をいただくことになろうとも、やはり生きている間は人間たちのよき隣人なのだ。
「んもっ」
ごきげんにそれぞれの飼い主のもとに戻っていく。
牛たちを苦々しく睨み付けるジュリアンに、アデルが対峙する。
「ジュリアン・クレイグ辺境伯! あなた、いい加減に……っ」
「その男にたぶらかされているのですね……」
「は?」
「そうでなければ、説明がつきません! このような盗人の魔導師風情に入れ込んで、私からの婚姻の申し入れをお断りなされるなど──」
「あのっ!」
アデルが叫んだ。
「クレイグ卿は、なぜそんなに私に固執するのですか?」
その問いかけに、ジュリアンはさも当然のことのように答える。
「それは、あなた様が我が妻にふさわしいと──」
「……それは、対魔戦争のときから、私を『妻』としてご覧になっていたということですのね」
ぽつり、と呟くアデルは唇を噛みしめる。
トロッコの上でもなければ、暴れ牛たちに追いかけ回されるわけでもない。噛みしめた下唇を噛みちぎってしまうこともない。
思う存分、噛みしめればいい。
「戦いの最中では、あなたも戦うことが求められたかもしれませんが! もうその必要はないのです」
「それですわっ!」
「は?」
「私が、私として……ロマンシア帝国第十一騎士団の名誉団長として前線に出ていたことは、特別に『許されていた』ことなのでしょうか」
アデルはリィトが好きだ。
彼はアデルに、姫君らしくいることを求めないから。
なにか条件をつけて、アデルに「許可」をしたりしないから。
「戦時中は特別で、終わったら貞淑な妻になることが当然だから……だから、ずっとつきまとっていたのでしょうか」
「む? それが、当然の幸せで──」
「都合のいいときに、都合のいい『当然』を押しつけられるとでも?」
アデルは、震える指を握りしめる。
リィトは唸った。
「都合のいい、か」
うぐ、と思わずリィトが唸る。
都合のいい、当然。
リィトが苦しめられていたのも、それだ。
社会人なら従順な社畜ムーブをして当たり前。
親孝行して当たり前、自分の時間を削って勉強するのが当たり前。
力のあるものは他者に尽くして当たり前。
力のないものは他者に服従して当たり前。
──それは前世でも、この世界でも同じこと。
「ふにゃ……猫人族らしくない、とかミーア もわがはいも言われるのにゃ」
フニクリ村の村人たちのうち、何人かがハッとした顔でアデルを見つめる。
「……当然……」
「考えたこともなかったけど……」
他人から押しつけられる当然に、人は誰しも苦しめられている。
スローライフを求めて、宮廷をクビになることに喜んでしまうような状態というのは、決して珍しくもない。
フニクリ村の人たちが、この村が滅びてしまえと思っていたのと同じだ。故郷だろうが、代々守る謎の卵があろうがなかろうが。
どこかで、誰かが、この世界を滅ぼして変えてくれると思っている。
「都合のいいように、私の正しい幸せを決めないでください」
アデルはトーゲン村での休養で、少し健康的に日焼けした顔で言い放つ。
「……私は、リィト様のお近くにいたいのです」
「なっ」
ジュリアンの顔色が変わる。
牛に散らされた私兵たちが、周囲に戻ってきている。
部下たちの前で恥を掻かされたと感じたジュリアンが、顔色を変えた。
「……いい気になるな、女」
「っ!」
「ただの女には興味はない、ロマンシア皇帝家の血筋に連なる騎士姫に俺は価値を見いだしていたのだ……自惚れるな!」
ジュリアンが、つかつかとアデルに歩み寄る。
「貴様がそのつもりなら、女だからと手加減はしない」
鍛え上げられた肉体。
ジュリアンの拳がアデルに襲いかかる。
「アデル!」
「っ!」
アデルはそれを避けて、深く踏み込んだカウンターを繰り出した。
筋肉を育てることと戦いに人生をかけてきたアデル。
木だろうがS級モンスターであろうが平気でぶん投げる彼女の本気の一撃だ。
「っ!?」
「……重いな。さすがは元我が伴侶候補」
しかし、ジュリアンはその一撃を受け止める。
にやり、と笑ったその口元を、薄い舌が這う。
「くく、悪くない……悪くないぞ……」
次々に打撃を繰り出すジュリアン。
アデルはそれを受け流しては、カウンターを叩き込む。
自分から動けば勝機はない、というのがアデルの直感だった。
「うわ、グーパン……」
パンチとキックで解決する方向性はあまり好かないリィトである。
ほぼ互角、というのがナビの分析結果だ。
勝率も変わらない。
もしも、状況がひっくり返るとしたら──。
「んぶもおおおっ!」
戦いの最中に、牛たちが叫ぶ。
明らかに様子がおかしい。怯えている様子だ。
「えっ」
牛たちを心配したアデルの動きが止まり、その一瞬の隙にジュリアンの拳が叩き込まれた。筋肉の鎧があれど、かなりのダメージのはずだ。
「くっ」
「危ない!」
吹き飛ぶアデルの落下地点に、ベンリ草を茂らせてクッションを作る。
と、同時に、牛たちがパニックを起こしている原因を探る。
「ナビ、状況報告!」
「っ、モンスターの魔力反応あり。申し訳ございません──索敵をかいくぐっていたようです!」
「スキル『探羅万象』を起動!」
「了解──あっ!」
「……山犬!?」
鋭い牙を光らせた、白い毛並みに真っ赤な差し色の毛皮をまとった獣が疾風のごとく駆けてきた。
古き魔物だ。
その魔力の質、強さ、大きさにリィトは見覚えがあった。
トーゲン村の東の山に住んでいた、猛虎型モンスターの「ヌシ」──リィトたちの目の前に現れた山犬、巨大な狼型モンスターは、ヌシと同格の存在だ。
最近はアデルやリコに寄り添っているデッカい猫になっているが、ヌシは強大な力を持ったモンスターである。
ロマンシア帝国に大量発生したモンスターとは別に、各地に古くから住んでいる魔物だ。
この地には、狼型のモンスターが住んでいたのだろう。
推定ランクは特S級。
強大な魔力を持つ、危険度の高いモンスターだ。
しかし。
今はまるで、リィトたちに味方をするかのようにジュリアンに牙をむいている。
「なっ」
──ジュリアンに襲いかかる狼。
退避が間に合っているのは、さすがのジュリアン・クレイグだ。
「ふにゃ……もしかして、あれが牛たちが怖がっていたやつであるにゃ?」
魔物化した牛が怖がるのは、より上位の魔物。
なるほど、ものは道理だ。
「でも、どうして!?」
一目散に。
脇目もふらず。
ジュリアンを攻撃対象にした行動に、リィトは息をのむ。
「……称号【ハイ・テイマー】の効果と推測します。魔物がアデルさんとその味方を攻撃することがないのかと」
「じゃあ、さっきの牛たちも本気でアデルを助けるために村にカチコミかけてたのか……」
狼がジュリアンを取り押さえながら、なにやらぐるぐると唸っている。
ベンリ草の茂みから出てきたアデルが、狼に話しかける。
「い、いけません! 食べるのはお待ちをっ!」
「た、食べっ!?」
ジュリアンが動揺する。
「……あの狼、なんて言ってるんだ?」
「ぐぅ……」
「アデル……なんて言ってるんだ?」
「ええっとですね」
アデルが口ごもる。
その間にも、狼が牙をむいてジュリアンに詰め寄る。
万全の状態であれば、互角かあるいはジュリアンが狼を撃退する結果になるだろう。
しかし、不意打ちで未知のモンスターに対峙するとなれば話は別だ。
牛たちに蹴散らされ、不意打ちで特S級モンスターを目の当たりにした私兵たちは、すっかり萎縮してしまっている。戦意喪失である。
「……まずそう、とおっしゃっています」
「えっ」
「たべてやってもいい、と……」
「う、うわぁ……せめて美味しく食べてやってくれよ」
ジュリアンが苦虫を噛み潰したような顔で吠える。
犬のように吠える。
「下等生物め……っ!」
じり、じり、とジュリアンが後退する。
目を合わせたまま、振り返らずに、ゆっくりと。
野生動物と対峙した際の、基本の撤退方法だ。それは魔獣型のモンスターであったとしても変わらない。
そう。つまりは、ジュリアンは負けを認めたのだ。
ジュリアンの額に脂汗が浮かんでいる。
生物としての圧倒的な力量差を、ジュリアンの戦士としての勘が悟ったのだろう。
アデルとジュリアンの圧倒的な差。
それは、アデルほどにはジュリアンは「生き物」を知らない。
戦略や戦術、武芸──そういった類いのものであれば、ジュリアンに分があるが、こと動物の習性や身体のつくりについてはアデルに一日の長がある。
未知は恐怖を生み、勝機を逃す。
「……ガウッ!」
「ひっ、ひぃっ!」
大軍勢と緻密な作戦のもとにモンスター討伐を行っていたジュリアンにとって、不意打ちで対峙する狼は恐怖の対象だった。
「ふにゃあ、無様な敗走……っと」
めもめも、とペンを走らせるマンマ。
牛たちはすっかり魔物化が解けているし、ジュリアンたちは狼型のモンスターに脅されて撤退していった。
そして──。
「助けてくださって、ありがとうございました」
「がうっ」
アデルと狼は、早くもすっかり打ち解けている。
【ハイ・テイマー】の称号と動物会話のスキルは、彼女のよさを最大限に引き出している。
(俺の『じょうろ』との差よ……)
手から水が出るスキル、たしかに飲み水の心配なく船旅だろうが探索だろうが出かけられるし、植物がよく育つ水はありがたい。
ただ、やはりこう、派手さというか、ファンタジックさというか。
もうちょっと欲しいというか、なんというか。
リィトがおのれのアンラッキーを嘆いていると。
「……こ、こわい」
「あんな大きな口……みんなひとのみにされちゃう」
村の子どもたちが、肩を寄せ合って震えている。
大人たちも、アデルを少し遠巻きに見ている。
「あー……」
「そりゃ、怖いですにゃあ」
「言葉も通じない、でっかい犬だもんな」
犬と人間は長いこと共存関係にある、というのはこの世界でも変わらない。
番犬やそり引き、猟犬として活躍している。
けれど、それはサイズ感がちょうどいいからだ。
自分よりも巨大な肉食獣と、仲良くやれるかといったら……それは無理というものだろう。
「ジュリアンにも存在を知られたし、討伐隊が組まれるかもなぁ」
ロマンシア帝国内でも、対魔百年戦争の残党狩りは盛んに行われている。
この地にひっそりと、ずっと住み着いていたであろう狼も、「残党」扱いされれば数の暴力でもって狩られてしまうだろう。
「……わからないから、面白いのになぁ」
植物魔導は万能ではない。
よくわからない「植物」という相手と向き合って、どうにかこうにか試行錯誤しているのが楽しいのだ。
けれど、多くの人にとってはわからないことは、怖いのだ。
未知のもふもふに対して、可愛い可愛いと目を細めているアデルも、本質的にはリィトと同類なのだろう。
「はて、さて」
踏みつけられたオリーブの実から、悲しそうに種子を拾い集めている花人族たちと、アデルと狼、それから牛と村人たち。
「……その狼は、こっちでどうにかしましょう」
リィトの言葉に、村人たちが一斉に安堵の表情を浮かべた。
◆
トーゲン村の風景は、一変した。
農場には牛。
牛のおかげで堆肥が作れるようになり、植物魔導や土地の魔力に頼らずとも安定した農業生産が期待できそうだ。
「く、くさいにゃ」
「そのぶん、栄養豊富なんだ」
「ニャ~、また商材が増えるニャッ」
植物由来の「緑肥」から「堆肥」へ。
匂いの対策で、におい消しの植物をあちこちに植えたところ、独特の匂いは多少軽減した。
牛を使った粉挽き機をミーアが仕入れてきてくれたおかげで、麦を村で製粉できるようにもなったし。
たくさんの牛たちを花人族と魚人族だけで面倒を見るのは難しい。
どちらも小さな体躯で、牛を追うのは厳しい。
それを助けてくれるニューフェイスがいるのだ。
「おーい、ポチ!」
「わおん!」
フニクリ村からやってきた狼が、牧羊犬として活躍しているのだ。
元は捕食者と非捕食者という関係だった彼らだが、トーゲン村というのどかで満たされた環境では、牛と牧羊犬という関係で平和に暮らしている。
「ミルクの生産も安定してきましたね」
「ああ、やっぱりこれだよなぁ」
ミルクで練り上げたドーナツ生地はやはりコクと甘みがあるものに仕上がっている。
バター、それから野生の鶏型モンスターを家畜化して、少しずつとれるようになった卵を使っている。
「ドーナッツって、こんにゃにうみゃいものだったのであるにゃ」
もっきゅもっきゅと新作ドーナツを食べてご満悦のマンマである。情報ギルドでの記事の売れ行きも好評らしい。
ミーアのほうでも、トーゲン村産のドーナツを売り出す算段を立てているようだ。
白砂糖があれば、申し分のないお味になるはずだけれど。
「そろそろ水車を作って、粉挽きができるようにもしようか」
「水車でございますか!」
「ああ、動力の確保は重要だからね」
リィトの言葉を隣で聞いていたアデルが、興味深そうに頷く。
自動で動力をとれるようになれば、粉挽きの効率が上がる。
川は資源であり、動力だ。
ウンディーネのおかげで豊かになった山と川。
そして、リコが抱いている謎の卵には紋章がはっきりと浮かび上がっている。鮮やかな赤い斑点模様に複雑な文様が浮き出てきている。