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世界樹ってマジですか5

 食べるのと飲むのが大好きな二人は、たちまちご機嫌な酔っ払いになっている。なるほど、猫は夜行性だ。それに、目の前の楽しいことが大好き。


 花人族たちは半分くらいはもう眠ってしまっているけれど、フラウはまだ起きてアデルと話し込んでいる。


 焚き火に照らされた、そんな賑やかで穏やかなトーゲン村の風景を眺めるリィトに、ナビが囁く。


「マスター、楽しそうですね」


「……うん、おかげさまで」


 夏が来たら、新たに植えた作物の収穫が本格化する。


 種類が増えたら、おいしい料理のレシピ開発にも乗り出したい。


 水精霊の神殿探索なんていう、考えてもみなかったお楽しみまで降ってきた。


 これから、忙しくなりそうだ。


 世界樹疑惑の湧いてきた、謎の苗Xの様子も気になるところだし。


「……あ、そういえば。採取してきた沢の水ってどこにある?」


「ナビの管理下にはありませんが」


 しまった。


 リィトはあたりを見回す。


 周囲の木々を枯らしている可能性もあるほどの、高濃度の魔力を含んだ水だ。フラウは足を浸しただけで、頭の花がコントロールできないくらいに咲き乱れていた。


「えぇっと、水筒に入れてこのあたりに……」


「警告! マスター、あれを!」


「げっ、マンマ!?」


 マタタビ酒でさっそく酔いどれているマンマが、水筒を手にして千鳥足で歩いている。


 それはどう見ても。


 ……どこから見ても、沢の水をたっぷり詰めた水筒だった。


「あああーーーーっ!!」


「ふにゃぁ~……酔っ払っちゃったにゃ~……お水お水ぅ」


 とろんと蕩けた顔。


 マンマが水筒の蓋を開け、今にもごくごくと飲もうとしている。


「飲んじゃダメだ、マンマ!」


「ふにゃっ!?」


 しくじった。


 珍しく切羽詰まったリィトの大声に、酔っ払いのマンマはフリーズした。


 それだけならよかった。


 強ばったマンマの手から、水筒がぽろりとこぼれ落ちてしまったのだ。


 ──蓋が開いたまま。


 沢の水を、まき散らしたまま。


 しかも、その近くにある植物は──リィトが手塩にかけて育てている、謎の苗Xだった。


 頭痛の種ではあるけれど、育つのが楽しみな世界樹(仮)だった。


「ぎゃああああ!」


「ふ、ふにゃ……」


 目をまん丸にして、ぷるぷる震えるマンマ。



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