95 恋人の定義
更新本当に遅くて申し訳ありません。お読みいただいている方にはご迷惑をおかけしますが、時間が出来次第ぼちぼちと書き進めていますので、気長にお待ちいただけるとありがたいです。
私がいくら不肖の娘だと嘆かれていたとしても、流石の両親もまさか己の娘が同性の恋人に翻弄される事までは想定しなかったはずだ。目の当たりにした時、泣くのか呆れ返るのかは想像の範囲外だけれど、少なくとも頭を抱える事だけは確かだろう。
―――だって現状で私自身が頭を抱えたいのだから。
満面の笑みを浮かべ、サンドイッチ片手に迫るエレノアに「カール様♡“あーん”して下さい♡」とにじり寄られている。しかも此処は真昼間の中庭で、今は大勢の生徒が一部始終を見守っている中での強硬なのだ……何故見世物になっているのか全く解せない。
たかが恋人との戯れ、“あーん”ぐらいで物おじするなと世慣れた連中には鼻で笑われるかもしれないが、如何せん衆人環視に晒されながらは精神的にキツイものがある。誠に遺憾の意を表明したい。
その様子をチラチラと盗み見ながら「人前で見せつけるなんて」だの「お二人は恋人同士なのかしら」だのとヒソヒソ囁く声が聞こえてくるのも居た堪れなさに拍車をかける。
いっそこの場から立ち去ってしまおうかと身動ぎした時、それを見透かしたかのようにエレノアがグッと左手を掴んできた。
「いくら恥ずかしいからといって恋人を放置して逃げるような真似は如何かしら?第一、此処に置き去りにされた私の立場もお考えいただきたいわ。名立たる名門ルマール侯爵家の息女が恋人から戯れを拒否され、あまつさえ置き去りにされたなどとうわさが広がりでもしたら不名誉ですもの。悲しみに暮れるあまりもっと衝撃的な噂を広めて上書きしようとウッカリ口が滑る可能性があるとは思いませんか?」
小首を傾げ、ニッコリと微笑むエレノアはまるで恋人に甘えるような仕草でえげつない脅しを平然と宣う。ここで逃げ出したらお前の秘密をばらすぞと暗に仄めかされてはやる以外の道は残されていない。
(恥はかき捨てって言うじゃない。恥ずかしいのは一瞬だけ‼)
心で何度も唱えてから意を決し、サンドイッチを持つエレノアの右手首を掴むと軽く引き寄せながら大口を開けてバクリとサンドイッチに嚙り付く。柔らかな小麦の風味に混じり、カリッと香ばしい牛肉の旨味が口いっぱいに広がる………美味いな。
お腹が空いていたことも有り、そのまま無心で一切れを平らげると、最後に指先に付いていたソースまでペロリと舐め取る。その瞬間「キャーッ大胆っ‼」とあちらこちらから女生徒の悲鳴が聞こえてハッと我に返った。
眼前にはフルフルと体を震わせながら瞳を潤ませ真っ赤に頬を染めるエレノアが呆然とこちらを見ている。………そういえば先ほど舐めたのは彼女の指だったと漸く気が付き、慌てて腕を離すと頭を下げた。
「ゴ、ゴメン、ね………?えーっと……サンドイッチ美味しかったよ」
慌ててヘラリと微笑みながら取り繕ったものの、彼女の機嫌を損ねてしまったようだ。
「もうっ………流石に……やり過ぎ、ですわ」
両手で顔を覆い隠し俯くエレノアに、もう一度ゴメンと謝ってから新たなサンドイッチに手を伸ばすと、今度は咎められなかったため、そのまま頬張る。エレノア的には“あーん”は良くて、指を舐められるのは駄目らしい………その後は女心の難しさに首を傾げながら、サンドイッチを心行くまで堪能したのだった。
何故に衆人環視の前で恋人同士の戯れを披露する羽目になったのかと問われれば、恋人の要望に従っただけと言わざるを得ない。
エレノア・ルマール侯爵令嬢に私が本当は貴族令息ではなく本名ルイーセ・ティーセルだと知られた事で、秘密保持を条件に卒業までの期間限定で恋人契約を結んだのは数週間前の事だった。とはいっても、卒業を間近に控えた我々は卒業論文の作成や最終試験の勉強に忙殺されるので、他学級のエレノアと纏まった時間で会えるのは昼休憩と放課後ぐらいだ。
だからこそ何食わぬ顔で普段通りの生活を続けていたのだけれど……。
「私達は恋人同士だというのに会える時間が少なすぎるとは思いませんこと⁈この調子では卒業までに沢山の想い出作りなど出来そうにありませんわ。せめて週末ぐらいは逢瀬をと楽しみにしていましたのに、それも実家の用事で潰れてしまいましたし。…そこで私考えましたの‼遠出をせずとも昼休憩の中庭で紅葉を愛でればピクニックの真似事ぐらいは出来ると思いませんか?」
エレノアから呼び出され、弾んだ声でそう提案された。
確かに王立学術院の中庭は四季折々の風光明媚が楽しめ、今は紅葉が美しいと休憩時間には生徒が大挙して押しかけているらしい。エレノアとの関係を周知する様で若干気は進まないものの、毎日のようにやれ社交界で流行りの衣装だの、何某の噂話だのを延々と聞かされるのには飽いていたから偶には趣向を変えるのも良いだろうと一も二もなく頷いた。
爽やかな秋晴れの下、当日を迎えたものの中庭は既に大勢の生徒で混雑していて座る場所を見つけるのは無理そうだ。折角のお誘いだったが今日は諦めようと言いかけた私を制し、エレノアが向かった場所は中庭で一番大きな紅葉が植わる芝生だった。如何やら友人らに場所を確保して貰っていたらしく、その手際の良さに驚く。
柔らかな秋の日差しに温まった芝生の上にクロスを広げて腰を下ろすと、エレノアがカフェテリアで受け取ったバスケットから次々に本日の昼食を取りだす。香ばしい薄切り牛肉を挟んだサンドイッチにクレソンとローズマリーのサラダ、オレンジピールの砂糖漬けにティーポットまで出て来て、ピクニック気分を盛り上げた。
当初、エレノアが計画を立てた際は自ら手料理を披露する事も視野に入れていたらしいのだが、いきなり「カール様は恋人の手料理についてどう思われますか?」とレシピ本を広げながら問われれば嫌でも状況を察する。エレノアの手料理……刃物どころか湯も沸かした事がない彼女の初手料理を披露されるなど不安要素しかない。
「恋人の手料理に拘るつもりはないな。本職の料理人がいるのだから、無理して欲しくは無いな。それに刃物に不慣れなせいで指を傷つけたらと思うと、その方が辛いよ。私の為だというのなら絶対に止めて欲しいな」
さり気なくレシピ本を取り上げての必死の懇願は如何やら功を奏したらしい。無事に彼女の手料理を回避できたのだから。
それは兎も角、折角の料理が冷める前に頂こうと早速サンドイッチの詰まったボックスに手を伸ばすと、何故かエレノアにそっと止められる。そして「今日は記念すべき私達の初逢瀬ですもの。恋人の戯れを致しませんこと?カール様お口を開けて下さいませ。あーん♡」と、サンドイッチ片手に迫られた―――というのが、先ほどまでの出来事なのだが。
半分程食べ進めたところで、漸く機嫌が治ったらしきエレノアから「お口直しにお茶を淹れますわ」と告げられて本日二度目の驚きとなった。
貧乏貴族では使用人の数も限られるため殆どの事を自分で熟せるけれど、侯爵家ともなると客人の好みまで把握している専用の侍女がお茶を淹れると巷の噂で聞いたことがある。それが嘘か誠かは判らないけれど、覚束ない手つきに不慣れな様子が見て取れた。
一体何を飲まされるのだろうか……もたつきながらも茶の準備に勤しむ彼女を横目に眺めていると、知らずため息が漏れる。彼女がここまで献身的だとは思ってもみなかった。
私達の初めての出会いは王宮舞踏会だったそうだ。互いに社交デビュタントの夜だったが、エレノアはルマール侯爵家息女としての重責を抱えてのお披露目だった為にかなり緊張していたらしい。
順当に王家への挨拶を済ませると、息つく間もないままお互いの衣装を値踏みしあう令嬢達との弁舌合戦に辟易し、その後は爵位目当てで擦り寄ってくる貴族令息からの誘いで彼女はすっかり疲れ切っていた。
そんな中で、フロアの中央で楽し気にワルツを踊るうら若き貴族令息が目に留まったそうだ。相手を変えてはクルクルと軽やかに踊る様は美しく、その笑顔は端が綻んだように周囲を虜にしていく。フラフラと近づき声をかけると、額には汗が光り息も上がっているにも拘らず、快諾してくれた。
その上緊張のあまり幾度もふらつくエレノアを慮る様に、まるで王子様の様なお方と見惚れているうちに曲は終わりを告げ、笑顔だけ残して彼は友人と共に去って行ってしまったのだ。
名前さえ告げず、エレノアの心を奪ったままで………。
翌日から積極的に社交サロンにも顔を出しては彼の方の行方を探し求めたものの、結局何も掴めないままに二年の歳月が流れてしまった。だからこそ桜の花びらが舞う王立学術院の入学式での再会は時が止まったかと思う程劇的だったそうだ。
煌びやかな王太子殿下やご友人に囲まれて声さえ掛けられない状況で、只見つめる事しか出来ない。だからその後わざとらしくその輪に飛び込んで彼らの視線を攫って行ったマリアーナ・アウレイアの事は大嫌いなのだと吐き捨てていたが。
これが私達の運命の馴れ初めですと、はにかみながらエレノアに伝えられても頭を抱える事しか出来ない。
あの晩の私が色々とやらかしていた事は想像に難く無いけれど、まさかエレノアまで口説いていたとは思わなかった。令息のフリをするのにかまけすぎて、踊った相手の顔なんてほとんど覚えていない体たらくぶり……しかも、どのご令嬢も気合が入った厚化粧で塗り固めていたせいで、誰一人記憶の外なのだから彼女一人だけ覚えている訳がない。
その上、いくら正装していたとはいえ私如きに王子様と比喩するのは些か美化され過ぎではなかろうか。彼女の周囲に気品あふれる高位貴族しか居ないからこそ毛色の違った田舎貴族が物珍しくて心惹かれたと言われた方がまだ納得できる。
一夜の夢物語を現実に求められても…と困惑しかけたところで名案が浮かんだ。
―――現実を知れば目が覚めるのではないか、と。
舞踏会の夜は誰もが浮かれ、酔いしれていた。
だからこそ、夢見た王子様が実際は只の田舎貴族だったと理解すれば一瞬にして百年の恋だって冷めるだろう。そうなれば卒業までとは言わず、直ぐにでも別れを切り出される可能性があるわけだ。
未練一つ残さずエレノアは婚姻相手との新たな恋に踏み出せるし、私の秘密も守られる……正に一挙両得ではなかろうか。
「ボンヤリなさってお疲れですか?………お茶が入りましたので召し上がって。あの、私初めて淹れたので加減が判らず……いえ、どうぞ」
エレノアに声を掛けられハッと我に返る。そういえば彼女との逢瀬中だったと、つい差し出されたカップを受け取ると中には今まで見たことがない程淀んだ液体がなみなみと注がれている。
………随分と個性的というか……黒く淀んでいるなコレ。
(………これってお茶、だよね⁇ 飲んでも平気……なの⁇)
ふわりと立ち上る湯気から香るのは爽やかなミントなので、ハーブティーであることは間違いなさそうだが如何せんどす黒い。しかし先ほどから不安気な面持ちでソワソワするエレノアを見てしまえば恋人として腹をくくらざるを得ないだろう。
口に含むとハーブ特有のえぐみが舌に広がり、喉を通ると苦みが後味として残る。
………美味くはないが、胃を壊すことは無さそうだと安堵しながらゆっくりと飲み下すとエレノアが目に見えてホッとした様子を見せた。
「エレノアが一生懸命私を思って淹れてくれた味がしたよ。初めてのお茶をご馳走様」
初挑戦でこれならばむしろ上等な部類ではなかろうか。
なにせ彼女は侯爵家のお嬢様で全てが初めての経験なのだ。経験を重ねれば次は上手に淹れられるだろう。その思いがつい余計な一言となってまろび出た。
「折角だから、私の好きなお茶も味わって欲しいな。明日は私が淹れるからエレノアも気に入ってくれたら嬉しい」
「えっ………?」
カップの残りを一息に煽るとエレノアが目を瞬かせるのが見える。
「私達は恋人同士なんだから、相手の好みぐらいは把握しておきたいじゃないか。ねぇ、今度はエレノアの好きなお茶も教えて欲しいな」
価値観を押し付けるつもりはないが、私は相手の気持ちに寄り添いたいと常々思っている。好きな味や香り、その日の体調に合わせてお茶を淹れて相手が心を解く瞬間がたまらなく好きなのだ。たとえ偽りの恋人だとしても、エレノアとも心を憩わせるお茶の時間を共有したい。
戸惑いながらも素直に頷く彼女に、楽しみだねと微笑みかけた私は愚かにも気づかないのだ。
「そんなに心を搔き乱されて ………手放せなくなるのに……」
―――思いつめた表情を浮かべ、エレノアが独り言ちていた事に。
「一体、何でこんな事になっているんだ⁈少しは体調を慮ってやろうと目を離した隙に今度はエレノア・ルマール侯爵令嬢と恋人だなどと馬鹿げた噂が学術院中を飛び回っているぞ⁈」
―――あの日の戯れ、もとい逢瀬は随分と話題になっていたらしい。
朝から何故かひっそりと静まる教室内に足を踏み入れた瞬間、無言で威圧を放つディミトリ殿下の小脇に抱えられて執務室へと連行された。助けを求めようと見回しても誰一人目も合わせようとせず俯いていたところを見ると“触らぬ神に祟りなし”状態だったのかもしれない。
鍵をかけるなりソファーの上に放り投げられ、真向いから膝立ちで囲い込まれると逃げる術は無くなる。そっと顔を逸らすと顎に手を掛けられ無理やり目を合わせた状態で答えを促された。怖っっ‼
「え、っと………エレノアと付き合っているというのは本当の話、です………」
「はっ⁈」
瞳孔を開いて睨むのは止めて欲しい。顎を掴まれて目を逸らすことが出来ないからこそ恐ろしさに冷や汗が止まらなくなる。
「いくら男装しているとはいえ、己の性別さえ失念するほど愚かだとは。エレノア・ルマールが本気でお前を見初めていたらどうするつもりだ⁈」
ハァ……とこれ見よがしに嘆息されたものの、中々に失礼な物言いに思わず口をとがらせる。
まあ、エレノアに良い様に翻弄されている時点で愚かなのには変わりないし。
「エレノアから卒業祝賀舞踏会のパートナーと同時に、卒業までの期間限定で交際を申し込まれたんですよ。卒業後は親の決めた相手と婚姻が決まっているので、自由な内にせめて想い出作りがしたいと切々と訴えかけられて、無下には出来ないじゃないですか」
「そんな稚拙な泣き落としに引っかかるからお前は目が離せないんだ‼ ……まあ良い、舞踏会は私がお前とパートナーになれば済む話だ。エレノアとこれ以上話が拗れぬうちにサッサと別れを告げて来い」
「はっ⁈ 無理ですよっ‼ 既にエレノアには承諾したし、この学術院で貴族令息として籍を置いている以上、卒業まで明かすつもりはありません。第一、いきなり正体をばらしたら周りの貴族連中から『周囲を欺いてまで男漁りがしたかったのか』と言われかねませんよ」
「………確かに。腹立たしいが有り得ない話では無いな」
忌々しそうに舌打ちをするディミトリ殿下も、今私の性別を公表するのは混乱を招きかねないと納得してくれたようだ。しかし、殿下の続く言葉に自分の知らない処で何かが動き出していることを知る。
「厄介な案件が持ち上がり、暫くの間我々は王宮へと向かわなくてはならない。こんな不安要素ばかりの環境下にルウを一人で残していくのが心配でつい勇み足になったようだ」
「王宮内で問題が起こったという事でしょうか」
「王宮内というよりは他国との柵だな。これ以上話す訳にはいかないが、問題が解決を見るまで学術院に戻ることは適わん。だからこそ不安要素を取り除こうと思ったのだが……同性相手に浮気するとは流石に想定外だったな」
「ハア~~~~~~⁈ っう、浮気~~~っ⁈」
恨みがましい眼差しを向けられたものの、これを浮気認定されるとは思わなかった。だって伴侶以外に心を寄せて関係を持つことが浮気の定義でしょう?……いや、公に恋人と名乗っているのがエレノアである以上、浮気相手がディミトリ殿下になるのだろうか………⁇
「浮気って……でも好きなのはディミトリ殿下だけなのに?………あっ⁈」
ウッカリ零れ落ちてしまった本音を必死で隠そうと手で覆ってはみたものの、既に彼の耳には届いてしまったらしい。先程までの不機嫌さを綺麗に消すと、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてそのまま唇を覆っていた手までも絡めとられてしまう。
「ほう………?そんなに素直に言葉にされるのは初めてだな。もう一度顔を見ながら伝えて貰おうか」
吸い込まれそうな碧眼が熱を帯び、彼の吐息が唇にかかる。心臓がドクドクと脈打ち、顔が火照るのを感じながら口を開いた。
「私が好きなのはディミトリ殿下、です」
「ディーマと、そう呼んで? ルウ、もう一度聞きたい」
「……ディーマが好き、なの。ディーマを……愛してる」
「ハァ……やっとルウの口から想いを聞くことが出来た。私もルウを愛しているよ」
一度口にしてしまうと、せき止められていた想いが溢れだして止められない。
何度も名前を呼ぶたびに唇を食まれ、啄まれるたびにもっともっとと胸には欲が生まれる。
こんな激しい感情は知らない。自分でも制御できない程の熱に溺れて、受け入れるたびにどんどんと深くなる口づけがこれが人を愛する事だと囁いてくる。
夢中になるあまり、予鈴の鐘が鳴るまで飽きることなく口づけは交わされた。名残惜し気に唇が離れた時には、既に息が上がっている私の姿にクスリと笑み零す殿下が慣れているようで憎たらしい。
「私が戻ってきた時にもこうやって素直に感情を伝えて欲しいな。一度知ってしまうと、もう我慢させられるのは無理そうだからな」
「………人前では我慢して下さいよ。その、二人きりになったら………少しぐらいは素直になる、かも」
「ほう?では再会したら部屋でどれだけ私の事が好きで恋しかったのかを聞かせて貰おうかな。勿論、その可愛らしい唇で」
心が通じ合った恋人同士の様に甘いあまい睦言さえもが愛しくて、笑い合いながらどちらともなく唇を寄せ合う。再会したら……その約束が叶うのが当たり前だと信じていたこの日。
―――私がルイーセ・ティーセルとしてディミトリ殿下の前に立てたのはこれが最後となったのだった。




