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第二話:地下都市

第2話目です。

ある程度の構想は作ってありますが、

書き慣れていないことと文章力の無さからどうしても書き上げるのに時間がかかってしまいます。

(何がなんだか全くわからない…。これはどういう状況なんだ…。)


 拘束されたままの身体で青年は何を言おうか考えたが、

そもそも状況が整理できず何も言葉にできない。


「ごめんなさい…。転移されたばかりでまだ状況がわからないと思うけど…。

安心して。特に怪我とか異変とかはないみたい。」

 少女が青年を拘束しているベッドから少し離れた位置でそう言う。


「………えーっと、聞きたいことはたくさんあるけどまず確認したい。俺は生きている?」


「さっきも言ったけど、特に怪我とか異変とかはないみたい。大丈夫。」


「それは…とりあえず良かった。」


 青年は生きていることに一先ず安堵する。


「それでここはどこで、君は誰なんだ?」


「ここは【クルド】_地下都市クルド。罪人や下級市民が暮らす街。地上世界に様々な資源を供給するためにここの街の人は労働を強いられている。

とても貧しく野蛮な街。あなたは今その街の一角にあるラボの一室にいる。」


 少女は淡々と説明する


「そして私の名前は【エマ】。科学者であった父の助手をしていた。今は独り。」


「そんな野蛮な街にどうして俺はこうやって拘束されているんだ?トラックに轢かれそうになっていた子供、あの子は無事なのか?」


「父が造った転移装置があなたを選んでこの世界に連れてきた。私もあなたの元いた世界のことを知っているわけでは無いから、轢かれそうになっていた子供のことはわからない。」


「転移装置?」


「そう。科学者であった父が造ったデバイス。設定した特定の条件に合致した人間を検知しここに転移するの。私がさっき起動させた。そしたらあなたが転移されてきた。」


 冷静な口調でエマと名乗る少女は説明する。

一方でこの説明を聞かされている青年は何の冗談だと言いたげに戸惑いと半笑いが混ざったような表情を浮かべる。


「これは何かの冗談か何かか?転移?全くわからない。いや、言ってることはわかるけどそんな話信じられない。とりあえず放してくれ。バイトに行かないと店長に怒られる。」


 あまりにも唐突で素っ頓狂な話よりも、バイトに遅刻することの方が青年には気がかりだった。

とりあえず拘束されている身体を解放してくれるようにエマに懇願した。


「転移されてきた人がどんな人かわからなかったから、安全のため気を失っている間に拘束したけど…。話をしてみた感じそこまで野蛮そうではないから拘束は解いても大丈夫かな。いいよ、解いてあげる。」


 エマが持っていたリモコンのボタンを押す。

すると青年を拘束していた拘束ベルトが解錠され縮んで青年が乗っているベッドに収納された。

ようやくといった顔で青年がベッドから起き上がる。


「実際に話を聞くよりも自分の目で見たほうが理解が早いと思うの。少しだけど街を見せてあげる。私についてきて。」


 そう言うとエマはフードを被って部屋の外へ出ていった。青年もそれを追いかける。

窓も何も無い薄暗い室内灯が照らす廊下を少女と歩いていると、なんとなく不安な気持ちがこみ上げてくる。


「そう言えばあなたの名前、聞いてなかったよね。私は自己紹介したから、今度はあなたの番だよ。教えて、あなたの名前。」


 廊下を歩きながらエマが聞いてくる。


「そうだな。イマイチこの状況のことはまだよくわかってないけど、とりあえず自己紹介はしておくよ。俺の名前は【九葉 イツキ】。18歳の高校生だ。」


「イツキ…いい名前だね。」


 イツキにはなんとなくエマの声のトーンが少し下がったような気がした。

エマの顔を見ようと思ったが、エマは深くフードを被っておりその表情を見ることはできなかった。


「ほら、あれが外へ通じる扉だよ。」


 廊下を暫く行った所に錆びた鋼鉄製の扉があった。

錆びてはいるがかなり丈夫で重厚な扉であった。

エマが鍵を取り出し解錠し、イツキがエマの代わりに扉を開く。

扉を開けると小さな建物が立ち並ぶ街の通りの一角にでた。


「ここは…なんだ?」


 しばらく外を見回していたイツキがようやく声を発する。

その様子は誰の目から見ても狼狽えているのが伺える。

街にはいくつもの巨大なビル群があり、大小様々な建物があり、お店があり、人が往来しているのが見える。

 だが一目でその街が普通じゃない、自分の知らない街であることがわかった。

街の天には巨大なファンがいくつもあり、ゆっくり回転しているその隙間から光が照らしている。

空や雲の代わりに明らかに人工物である天井とそれらのファンの存在から、ここが地下であるということが偽りでは無いことを確信した。


「ここがさっき言った地下都市【クルド】だよ。信じてくれた?」


 エマが狼狽するイツキの顔を見ながら言う。


「信じられないけど…でも目の前の光景を見て…信じざるを得なくなった。ここは明らかに俺の知っている街じゃない。」


「そう、さっきも説明したとおり転移装置を使ってイツキをこのクルドに転移したの。」


「どうして俺が、何の目的のためにここに連れてこられたんだ?」


「転移装置を使うときにある条件を設定したの。それは【絶対に死なない】という強い思いを持ってる人を転移するというもの。この街は死が軽すぎる。誰もが簡単に人を殺すし、自殺も日常茶飯…。環境が劣悪過ぎて人々は皆希望を持てず、心のどこかで死を望んでいる…。だから、この街の人が持っていない価値観を持った人を連れて来る必要があった。そしたらイツキが転移されてきた。」


 絶対に死なない__イツキには心当たりが会った。

それはイツキがトラックに跳ねられそうになったあの瞬間に強く思ったことだ。

妹のために、亡くなった両親との約束のため、そして自分自身のため_イツキには死ねない理由があった。


「私を【地上】へ連れて行って欲しい。それがイツキがこの世界に来た理由。私はクルドを出て地上へ行きたい。」


「……地上とはどんな世界なんだ?」


「私も地上へは行ったことは無いの。でも死んだ父が昔地上で暮らしていた。父の話では地上の世界はクルドと違って争いがなく、自然が豊かで、自由で、平和に暮らしていける世界だって聞いたことがある。」


「どうすれば地上世界へ行ける?」


「地上へ繋がる唯一の道は街の中央に位置する巨大なエレベータ。それに乗れば地上へ出られるみたい。でも誰も地上へ行ったことのある人は居ない…。私のように地上へ行きたい人は大勢いるの。でもエレベータのある施設はとても警備が厳重で誰も中に入ることはできない。」


「それじゃあ打つ手無しじゃないか。それに俺がいたって何の役にも立たないぞ。確かに【絶対に死なない】と俺は強く思ったけど、特別な力や知能があるわけでもない。平凡な高校生だ。」


「父が、死ぬ前に私にデータ媒体を託したの。これが地上へ繋がる鍵だと言って。暗号がかけられていて中身はわからないけど、解析すればきっと何か手がかりが掴めるはず。そして……。」


 エマが少し口ごもる。


「イツキはこれから力を手に入れる…。【絶対に死なない】という思いを具現化する力を……。」


『パァーンッッ!』


 エマの思わせぶりなセリフに更に質問をしようとするイツキだったが、その瞬間付近で大きな破裂音がした。

イツキは驚いて破裂音のした方向に顔を向けると、数ブロック先で男が老婆に銃を向けている光景が目に入ってきた。

はじめて見るその光景にイツキは一瞬たじろぐも、次の瞬間全速力で駆け出した。


「待って__!」


 制止しようとするエマだったが既に手遅れだった。

イツキは全力で走り出し、銃を持った男と老婆の間に割って入っていた。


(あれは…本物の銃だよな…?お婆さんは…背中から血を流して蹲っている…。)


 イツキ心のなかでなんとか冷静に状況を分析しようとするが、はじめて向けられるその銃口の恐怖に脚は震えていた。


(俺は何をやっているんだ…?策も無しに銃を持った男の目の前に出てくるなんて…。でも人が死しにそうになっているのを目の当たりにして冷静では居られなかった。)


「ま…待ってくれッ!お婆さんは無抵抗じゃないか!て…手当を…手当をさせてくれッ!このままじゃ死んでしまう!」


 イツキは銃を持った男の前に立ち、震える声でお婆さんのために命乞いをする。

しかし殺人が日常茶飯事なその街ではそんな命乞いで退いてくれる者など誰もいなかった。


「なんだぁ……?てめぇは誰だ…?突然現れてふざけたこと言いやがって。あぁ…わかった、お前も死にたいのか…。」


『パァンッ!』『パァーンッッ!』


 響く2発の銃声。

 同時に今まで感じたことのない強い衝撃がイツキの身体を直撃した。

それはまるで鉄の杭が瞬間的に身体を貫く様な、そんな衝撃だった。

イツキは胸部と腹部から血を流し倒れ込む。


「よく見るとまだガキじゃねぇか。まぁ、どうでもいいや。ババァともども死体は誰かが片付けるだろ。」


 銃を持った男はその場を後にした。

残されたのは瀕死のイツキ、そして既に息を引き取っている老婆の骸、そして少し離れた場所でその惨状を見ていたエマだった__。



誤字、脱字、気になる点や感想などあったらコメント頂けると幸いです。

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