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イリス視点②



父である陛下の部屋に行くと、お母様も同席していた。着席を促され座ると、


「何故呼ばれたかわかるか?」


お父様が尋ねた。


「愚かなことをしました。レモンド兄様が好きだったのです。幼い頃の思いを今日まで引きずり、とある事で感情が暴走してしまい、レモンド様の婚約者を傷つける噂を流してしまいました。申し訳ありません。」


お父様は頭を抱えて首を振り、


「イリス。お前は全くわかっておらん。レモンドがいち早く流れた噂を教えてくれたよ。それはお前も知っているだろう。何が『逢瀬を重ねていた』『引き裂かれても愛し合っている』だ。レモンドの婚約は王命だ。わかるか?」


イリスは伯爵令嬢を傷つけたことではないなら、何なのかと首を傾げた。


「イリス、お前はどうするつもりだったんだ。婚約者のいる男性と噂になり、その婚約を命じたのは我で覆る事がある訳がない。『婚姻するつもりはなく愛人になる』とでも言い張るつもりか?それとも、『修道院に入りいつまでも想う』つもりなのか?理解に苦しむ。レモンドは婚約者一筋なので、勿論お前を愛人に等しないそうだ。お前が流した噂でお前に傷が付いたのだ。なぜわからん。」


その時、言われたことの意味と自身のやった愚かな行為の意味を漸く理解した。


「レモンドがすぐに噂を教えてくれたおかげで、対処のしようはある。噂が全体に広がる前に降嫁させる。相手はちゃんと見極める、そこは安心せよ。ただ、上位貴族は無理だ。」


イリスは頷く事しかできない。



「イリス。何故、お前をレモンドの婚約者にしなかったのかわかるか?」


「いいえ、お父様。血が近いでも権力の集中を避けるでもないのならわかりません。」


イリスは涙ながらに答えた。


「イリス。私の可愛い娘よ。お前は愛されることは知っているが、愛する覚悟を知らないのだ。」


お母様がハンカチを持って起立し、イリスの所まで来て涙を拭いてくれる。


「よいか。盲目的にではなく、その人をよく見てよく話を聞き、行動を見て理解を深め、愛する覚悟があるか?

この度のこと、お前ならきっと真っ先にレモンドのところへ行き真相を確かめようとレモンドを責めるだろう。アン嬢はそれをしなかったそうだ。

なぜだかわかるか?アン嬢はレモンドを信じると決めた己自身を信じ、そしてレモンドを信じ愛する覚悟があったからだ。」


お父様は尚も続ける。


「信じることは難しい。なぜなら、人には自分自身でさえ全てを理解できない未知の窓を持っているからだ。他人になれば尚のこと。

それでも、噂や策略に惑わされず己と相手を信じ愛する覚悟。

イリス、お前にその覚悟があるのか?

その覚悟の無いものは、公爵家嫡男で我が甥のレモンドの妻にはなれぬ。

その意味をわかってくれるな。」


「…はい。お父様。漸く、やっと、わかりました。」


イリスは自身の愚かさを本当の意味で知り、涙が止まらなかった。


「それならば、今度は大丈夫だ。」

「私もそう思います。」


お父様とお母様は愚かなことをしたイリスにも救いの道を用意してくれようとしている。

その思いに今度こそ応えたい、強くそう思った。



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