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灰色の紫陽花  作者: 谷本旧
5/11

#5

体調を崩してしまい、投稿が遅れました。すいません。

今はだいぶ回復したのでなんとかやってます。

こんなご時世です。皆さんも気を付けて下さい。


では5話を!


吸い込まれそうになった。


きっとこれが牧里先生の言っていた『美しいもの』なんだ。

まさか早瀬の写真を撮ってこんな気持ちになると思わなかった。

悔しいけど、そういうことなんだ。



「え?なに?なんか言った?」

「い、いや、何も。」

「あ、そう。

 どう?いい感じに撮れた?」


早瀬がカメラを覗きにくる。


「え〜、めちゃくちゃいい感じじゃ〜ん。アイコンにしようかな〜。」

「あ、あのさ、今度写真部で顧問の先生に写真を提出しなくちゃいけなくて。それで・・・」

「へ~。好きに使えば?」

「・・・!?あ、ありがとう。」

「どういたしまして~」


少し沈黙が続く。

まさかすんなりオッケーしてくれると思わなかった。


早瀬が俺を見つめてくる。


「な、なんだよ。」

「・・・誰?あの子。知り合い?」

「え?」


振り返ると茶川さんが木の陰からこっちを見ている。

しまった。忘れていた。やってしまった。


「茶川さん!・・・その、!」

「ごめんね。邪魔しちゃったかな。可愛い子だね。友達?」

「あ、あ~いや、同級生!同級生だよ!中学の!」

「なに、すごい必死じゃん。」

「う、うるせぇな!」

「そうなんだ。初めまして。茶川能登子です。碧君のクラスメイトで同じ部活なんです。」

「ふ~ん。私は早瀬つぐみ。碧君の元カノです☆」


は・・・?


「え?そ、そうなんだ・・・ほんとにお邪魔だったかな・・・」

「違うよ茶川さん!早瀬はただの中学の同級生で!そんなんじゃないんだ!ほんとに!おい早瀬!変なこと言うなよ!茶川さんが勘違いするだろ?!」

「へ~。”ただの”同級生なんだ。碧君にとって私って。」

「うっ・・・」


自分で言っておいてなんだが、そういわれると黙ってしまう。

きっと心の中にまだ残ってるんだ。認めたくないけど、ただの同級生じゃない。


「そっか。なんか邪魔してごめんね。私先帰るね。」


茶川さんが走っていく。なんてことをしてくれたんだ。


「お前どういうつもりだよ・・・!茶川さん勘違いしただろ!」

「なに?あの子のこと好きなの?」

「そういう訳じゃないけど・・・」

「じゃあいいじゃん。あんな態度とってたら勘違いされるし、それで困るの碧君じゃいなの?」

「でもわざわざあんなこと言う必要は、」

「期待させるだけさせて、どうするつもりだったの?

 また相手に責任押し付けて逃げるの?」


何を言ってるんだ?早瀬は。


わからない。


「・・・お前が。」

「?」

「・・・お前が。・・・お前が言ってんじゃねぇよ!!」

「ちょっと、何?こんなところでやめてよ。」

「あの時のお前はどうだったんだよ!!俺に気があるような顔して近づいてきて!一緒に帰るなんて約束までして!それがなんだ!?約束した日の昼休みに腰降ってはぁはぁ言って!!そんなお前が人に言える立場かよ!?開き直ってあぁ言えば俺が傷つかないと思ったのか!?何が「最低だよ」だ!!お前が一番最低なんだよ!!」


音が響く。


頬に痛みが走る。


「いてぇなぁ・・・」

「碧君に何がわかるの!?私の何を知ってるの!?」

「わかんねぇよ・・・。わかんねぇけど、お前が俺を傷つけた事実は消えないんだよ!!」

「あたしはちゃんと答えたじゃない!!答えた結果があれで、あんたが勝手に傷ついたんでしょ!?いつまでも昔のこと引きずらないで!!」

「忘れられたらこんな苦労してねぇよ!!俺だって早く忘れて前に進みたいんだよ!!」

「じゃぁ忘れたらいいじゃない!」

「そんなのすぐに忘れられる訳ないだろ!!」

「もういい。帰る!」


最低な気分だ。

周囲の目も痛い。頬も痛い。


最悪で、最低な気分だ。



翌日。


「お、おはよう・・・!碧君・・・。」

「・・・おはよう。茶川さん。」


昨日の誤解を解かなきゃいけない。


「あのさ、昨日のことなんだけどさ。あいつが言ってたこと、冗談だから。」

「そっか。私こそ急に帰っちゃってごめんね。」

「大丈夫。茶川さんは悪くないよ。」

「うん。」


気まずい。半端なく気まずい。何か話さなきゃ・・・!でも何を話せば・・・!?


「あの後、写真撮れた?」

「あ、あぁ。撮れたよ。

 今日提出する写真は大丈夫だと思う。」

「そっか。楽しみだね、先生の評価。」

「だね。」


茶川さんが話題を振ってくれて助かった。


放課後。牧里先生のもとを訪れる。

この写真ならいける。確信があった。


「君が撮ったのか?」

「はい。」

「そうか。許可は得ているのか?」

「はい。本人に好きに使っていいって。」

「そうか。・・・いい写真だ。」

「じゃ、じゃあ!」

「あぁ。入部を認めよう。ようこそ、写真部へ。」

「はい!」


俺が提出した写真は、女子高生が港公園で振り返って笑ってる写真。セミロングの髪が風になびいてて、メインになってもおかしくない綺麗な夕日を背景にした写真。

俺が昨日撮った、早瀬の写真。


「よかったね!碧君!」

「え?あ、あぁ。ほんとだよ。」

「あの写真の早瀬さん。すごい綺麗だった。」

「・・・あぁ、ほんとにな・・・」


昨日罵った奴の写真を綺麗だと思うのはおかしいだろうか。おかしいことは頭では解ってる。理解はしてる。早瀬のことを考えると腹が立つし認めたくない。普通なら顔もみたくない筈だ。

でも見る度に綺麗だとおもってしまう。

この矛盾した気持ちはどうすればいい。モヤモヤする。落ち着かない。考えれば考えるほどわからなくなる。


「碧君、私、今日用事あるから部活いけないんだけど、どうする?」

「う~ん。じゃあ俺も帰ろうかな。」

「そっか。じゃあ先帰るね。お疲れ様!」

「うん。」


気を紛らわせる部活もなくなってしまった。

こういう時こそ頼るべきだ。あいつらに。


「もしもし~。今どこいんの?」

「おっけ~。今からそっち行くわ。」


学校から10分ぐらい歩いたところにあるカフェに向かう。


「お、碧だ。こっちこっち~。」

「・・・随分洒落た店だな~。」

「いい店だろ。俺はここの常連でな。コーヒーに魅了されて足蹴なく通っている。」

「何言ってんだよ。お前ここ来るの二回目だろ。」

「何だ?よく聞こえないな。」

「それにコーヒーじゃなくて店員さんだろ?目で追いすぎだよお前。」

「な!追ってなんかいない!!」

「はいはいわかったよ。それで?俺たちに連絡してきたのは?部活じゃないのか?」

「部活は休み。・・・・相談があってさ。」

「相談ねぇ~。何したんだよ?」

「これ見てほしい。」


早瀬の写真を二人に見せる。


「ふむ。なかなか良く撮れているじゃないか。」

「・・・よく見ろ柊。早瀬の写真だ。」

「早瀬!?碧がどうして早瀬の写真を!?」

「昨日たまたま会ってさ。その時撮った。」

「大丈夫なのか?」

「まぁ前よりは。」

「そうか。」

「・・・綺麗だよな。この写真。」

「まぁ綺麗は綺麗だな。」

「昨日、喧嘩?したんだよ。早瀬と。」

「ほう、やるじゃないか。見直したぞ碧。」

「なんで喧嘩したんだ?」

「こんなことがあってさ・・・」


昨日あったことを全て話した。

俺が罵ったことも、早瀬にぶたれたことも。


「それで相談ってのは、昨日罵った奴の写真を見て綺麗だと思ってしまうその感情を解明してほしいと。」

「まぁそうだな。」

「簡単じゃん。まだ好きなんだろ。」

「へ?」

「早瀬のことがまだ好きなんだろ。」

「いや、さすがにそれは。」

「あると思うぞ。なぁ?柊。」

「まぁ話を聞く限りでは喧嘩したカップルのようだな。」

「だってよ。ほんとは自分でも薄々わかってたんだろ。」


心当たりは確かにある。


でも認めたくなかった。


あんなことがあったんだ。あんなことがあったのに。

あんなことがあっても心のどこかではまだ、好きだったのかもしれない。


認めたくなかったんだろう。


「まだ、好き・・・か。」

「まぁいいんじゃね?決めるのは碧だ。」

「そうだな。俺たちがとやかく言うことでもない。」


帰路につきながら考える。

まだ好きか。

どうしてまだ好きなのかはわからない。でもそうじゃないと確かにこの気持ちは説明できない。

しかし、すっきりしたと同時にもう一つ問題が浮上した気がする。

なんで昨日、あんなに俺は怒ったんだ・・・?

好きな人にあんなに怒るか?いや、怒らない。

早瀬に言われたことがそんなに刺さったのか。そんなにムカつくような言葉だったのか。


いや、図星だっただけだ。


早瀬は俺が最後に逃げると思ったんだ。

俺と早瀬が久しぶりに会ったあの数分で早瀬は俺が変わってなかったことに気づいた。その俺を見て昨日早瀬はあぁ言ったんだ。

それで俺は、変わろうとしているのにそんなことを言われて、変わってないと決めつけられたことと、今のままなら最後に逃げるだろうと自覚していたから、情けなくて、感情的になったんだろう。

まるで子供だ。


色々あったが踏み出した一歩は結果的に色んなことに気付かせてくれた。無駄にならなかっただけ良しとしよう。


それにしても昨日は言い過ぎた。絶対に言い過ぎた。ぶたれたし、相当怒っているだろう。

次会うことがあったら謝ろう。




ん?あの男は・・・?



果島・・・?




碧君の感情が爆発したり、早瀬が意味ありげなことを言っていたり、碧君が自分の気持ちに気づいたり、街中で果島を目撃したり、色々あった5話です。


碧君の物語「灰色の紫陽花」も中盤をすぎたあたりです。

ここからラストスパートに向かって走っていきます。


物語が色々動きますよ。




多分。


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