#11
あの日から数日がたった。
俺は初犯ということや、その時の状況などを考慮して20日の拘留と1年間の保護観察処分となった。
学校は退学だ。
通信制の高校に編入することになるだろう。
人生を棒に振ってしまった。
ただ、後悔はしていない。
俺の様子を見に来た警察官達の会話が聞こえる。
「あの少年、好きな子のために人をあそこまで殴ったそうじゃないか。」
「ええ、そうですね。」
「なんともまぁ、人生を棒に振ったなぁ。学校も私立の良いところに行ってたそうじゃないか。」
「・・・そうですね。」
「そんなつまらんことで、人生を棒に振るとは…」
「何がつまらないのですか?」
「は?何がってそりゃ…」
「失礼ですが、あなたは彼の気持ちがわからないのですか?」
「何を言ってるんだ、君は!」
「暴力を正当化する気はありません。しかし、彼の心情を察するべきです。
あなたにとってはつまらないことでも、あんなことをしてしまうぐらい、彼にとっては大きなことだったんです。
発言には気をつけた方がいいと思いますよ。」
「ぐっ。そ、そうだな。すまぬかった。」
なんだあの警察官、めちゃくちゃいい奴じゃないか。
拘留はあと2週間。短いようで長い。
ーーーーーー
拘留が終わって、保護観察となった俺はあの警察官と月に2回、面会をすることになっている。
「少年、気分はどうだ?」
「特に…。普通ですね。」
「そうか。それならいい。」
「こんなことを警察官の私が言うのは駄目だと思うが、」
「はい?」
「君がしたことは間違いだが、君は間違えていない。
と、私は勝手に思っている。
人生はこれからだ。色々大変だろうが、負けるなよ。」
「・・・はい…!」
ーーーーーー
拘留が開けて、普通の生活に戻ってから初めてみんなに会う。
かなり緊張している。少し怖さもあった。
あんなことをしでかしたんだ。見捨てられてもおかしくない。
集合は駅前。
駅に向かってゆっくりと歩いていくと、声が聞こえてくる。
(おい竜胆!どうしてこいつがいるんだ!)
(どうしてって早瀬が1番会いたがってるからだろ)
(碧に会いたい気持ちは俺も負けていないぞ!お前は俺たちの碧を奪う気か!)
(ちょっとこいつ連れてきたの誰よ!)
(まぁまぁ、つぐみちゃんも柊くんも落ち着いて、もうすぐ碧くんが来ると思うよ…!)
(そうだぜ、茶川さんの言う通り、少しは落ち着けよお前ら!)
聞き覚えのある声ばかりだ。
「お、碧!こっちだこっち!」
竜胆や他のみんなが手を振る。
走ってみんなの元へ向かう。
早瀬が声を掛けてくれた。
「おかえり。」
「おう。ただいま。」
胸の中に咲いた灰色の何かが開いた気がする。
それは色鮮やかで、まるで灰色の空に反抗するように咲き誇った綺麗な紫陽花のようで
止まっていた青春を動かした。
梅雨。
ここ4日間、雨が降り続けているーーーー。
遂に完結です。
碧くんの中に咲いた何かは、綺麗な紫陽花だったようですね。