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異世界で理想の○○○○○に出会った

作者: Ash

 それはとても立派な尻尾だった。赤いその尻尾は金色の衣に包まれていて、一口頬張ったらサクッと軽い歯応えがしそうな揚げたてのエビフライ。

 異世界の貧弱な食生活ではお目にかかれない手間暇かかった、それでいて庶民が買うにはたっかいパンを粉にして作った贅沢な調理法。作ろうと思ったら作れるけど、素人には荷が重い理想のエビフライ。


 老舗の洋食屋やトンカツ専門店でなければできないあのサクッとした歯応え。

 素人には難しい。油の温度も測れないし、冷蔵庫や冷凍庫に一時保存もできない。

 素材を集めたら、後は時間との勝負で作り上げなければいけない。

 フランスに料理の修行でも行っていないと、異世界であの理想のエビフライは食べられない。

 むしろ、王様でも食べられないエビフライ。あれが作れたら、エビフライ専門の料理人として召し抱えられるだろう。

 え?

 エビフライを料理人に作ってもらえば早い?

 斬新な料理をする料理人として王様専属にされて、私は試作品の中途半端なエビフライしか食べられなくなるじゃない。

 web小説でも、貴族に転生しない限り、料理人に指示を出して作ってもらわないでしょ?

 あれは私SUGEEEじゃなくて、料理人が盗られたり、レシピを奪われないから出来ること。村人転生ならいくつかのレシピで成り上がれるくらい、料理のアイデアやレシピは重要。

 それに作り方だけを聞き出されて殺されたり、監禁されたりするかもしれないし、エビフライのレシピは封印。

 転移者は自分で作るしか無いのです。


 ああ、理想のエビフライ!


 私は理想のエビフライに走り寄って齧り付く。

 硬い。

 パン粉の部分が口が切れそうなくらい硬い。


「放せ、変態!」


 エビフライの上から怒鳴り声がする。エビフライの上半身は逆三角形の人の身体で、その上には青い髪に縁取られた端正な顔が乗っている。


拒否ひょひする」


 いくら上半身がイケメンだろうが、この尻尾は理想のエビフライ。このエビフライの正体が金の鱗を持つ人魚の尻尾でも、トカゲのようにゴツゴツした鱗の奇形だろうが、理想のエビフライの姿をしていることに変わりはない。

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