8話
今回の部分はかなりの蛇足です。
書いていてここはいらないなぁと思ってました。
本当はここを分岐にして話を進めようとしてましたが、少し悩んでから普通に進めることにしました。
駄文ですがよろしくお願いします。
自分への敵対行動を取る目の前の男に対して自分に悪意はないと示すために両手を上に持って行きゆっくりと話始める。
「ちょっと待ってください。私はあなた方の事を売るつもりは全くありません。私の育った村も今の勇者様に救っていただきました。そんな恩人である人をどうして魔族なんかに売り渡せますでしょうか。」
そう言って更に言葉を続けようとするが
「お前もさっきのを聞いただろ。お前の村を救ってくれたその『勇者様』は魔王に敗れた。」
と杖を持った男に遮られたので
「後ろの坊ちゃん、その子が勇者様のお子さんなのですよね?つまり未来の勇者様だ。そんな人類の希望を売り飛ばすわけがないじゃないですか。」
「どうだかな。人間っていうのは自己の利益を最優先させる生き物だ。この子はまだ知らないだろうが俺は人間という生き物の醜さを嫌というほど知っている。だから、お前の言っている言葉も虚飾に紛れているようにしか聞こえないんだよ。」
そうまで言われてはこちらとしても気分が悪くなるというもので、売り言葉に買い言葉で返してしまう。
「そんなにオイラの言うことが信じられないなら今すぐこの馬車から降りてくれ!憧れの勇者様とそのお仲間にやっと恩返しができると思ったのにそんな言い方をされちゃこっちとしてももうあんたたちに協力なんてできない。」
そう言って馬を止めてから
「さぁ、降りてくれ。もうあんたたちの事なんて見たくもない。このまま何処へなりとも行ってしまうがいいさ。」
自分でも随分と酷いことを言っているという自覚はあるが、生来の気性からついカッっとなって言ってしまった。今は後悔の念が津波の様に押し寄せてきている。馬車から降りる男と子供を目で見送りながら自分の短慮と未熟さを嘆いたら男と一緒にいた子供がこちらに寄ってきて
「おじさん、短い間だったけどありがとう。昨日の夜おじさんが助けてくれたこと忘れないから!」
そう言って頑張って作ったのであろう笑顔でこちらを見つめながら手を振って一緒にいた男と共に消えて行った。その間その子供はずっとこちらに手を振り続けていた。
その時ほど自分が如何に小さい人間か理解させられたことはなかった。自分は今までの人生嫌なこと苦しいことからは逃げてきたが、あの子供はこれから自分の人生に待ち受ける苦難からは逃げられないのに何で笑っていられるのか。そんな考えが頭を過って2人の姿が見えなくなるまでその場を動くことができなかった。