58話
北大陸での巡礼の旅を終えて西大陸に向かう船の中で魔物に襲われた。
港で最近魔物が出て満足に漁に出られないというので魔物退治を引き受ける代わりに西大陸に送ってもらう約束をしたのだ。
だが、こちらの思っていたより大きな魔物で慣れない船の上という事もあり倒すのには少し手間取った。
私はまた支援魔法と短剣の刃に斬撃と魔法を乗せた攻撃しかできずトランジアが仕留めたようなものとなった。
それでも「よくやった」と言ってくれるトランジアに少し胸が痛むのを感じたが気のせいだと思うようにした。
西大陸の玄関口と言われる港町ネルスは世界が今こんな状況なのにそんなものどこ吹く風ぞ。といったような活気に満ち溢れていた。
ネルスで一泊し(久しぶりにベッドで寝れる喜びを噛み締めた)次の祠へ向かおうと町を後にした。
町を出て暫くしてトランジアの足が止まったので魔物が出たのかと思い武器を構えるが当のトランジアは頭を掻きながら地図と睨めっこしていた。
「どうしたの?」
と聞いてみると
「この大陸の祠の場所はよくわからないんだ。一度しか来たことがない上にその時もだいぶ迷ったからよく覚えていなくて」
と申し訳なさそうに言う彼に対して人間らしいところもあるのねと思わず言ってしまった。
言ってから彼が
「そうか。私にも、オレにもまだ人間らしさが残っていたか」
と苦笑混じりに言った。
とても重たい言葉のように感じた気がしたがそれよりも彼の人間らしさが見れたことの方が嬉しくて笑いが止まらなかった。
トランジアは「よく笑う女だ」とだけ言っていつもの様に無愛想な顔に戻っていた。
取り敢えずは祠に関する手がかりを得なければならないのでトランジアの朧げな記憶を頼りに西大陸の中央を目指して歩みを進める。
その途中でダントーという小さな村があった。
私はこの村で起きたことを生涯忘れないだろう。




