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57話

 森を抜け北大陸へと歩を進める途中で気になっていたことを思い切って聞いてみた。

「ねぇ、どうしてわざわざ世界にある祠を回る必要があるの?それも時計回りと反時計回りで。」

トランジアはそんなこともわからないのかという表情を一瞬だけ見せたが

「神というのはとにかく儀式を重要視するんだ。お前も元神官なら神に祈る際の儀式に順序があっただろう?それと同じだ。」

「じゃあ祠を回って私はどういった手順で何を祈ればいいの?」

「いいか?お前があの男、フランに負ければこの世界は終わりだ。何もかもなくなる。だからこれはこの世界を救う最後の機会なんだ。そんな時お前なら何を神に願う?」

「この世界を救ってください?」

「違う。神はとっくにこの世界に見切りをつけている。そしてその中で人がどう足掻くかを賭けの対象にして遊んでるんだ。そんな奴らに救ってくれだなんて頼んだところで救ってくれたとしてもまたいつか今と同じようなことが起こる。」

「じゃあどうすれば・・・」

「この世界を開放してくれと願え。神の管理の檻から解放するんだ。世界を、人を、すべてを。」

ベルナはしばらく考え事をした後で

「じゃあ祈る際の手順は?」

と聞いた。

「それについてはお前がこうなる前にやっていたやり方と同じだ。世界樹信仰の祈りの儀式は元々はこの時のために延々と受け継がれ広められてきたはずのものだったんだ。いつしかその本質は忘れられたがな。さぁ、もう寝ろ。明日も早い。」

「待って、最後にこれだけ教えて。このことをあのフランって人は知っているの?」

しばらくの沈黙の後に

「恐らくは知らない。誰かに入れ知恵されてなければ。だが、あの男が人の言いなりになるのもおかしいと考えれば知っていると思ったほうがいいのか?」

最後の方は自問自答するかのように声が小さくなり今でもブツブツと何かを言っている。この状態で何かを話しかけても無駄だと思い焚火を背に眠りに落ちた。

次の日もその次の日も延々と歩くが人とすれ違うことすらなくまるで世界から人が消えたんじゃないかと思う日が続いた。そんな不安をトランジアにぶつけると

「もう選別が始まってるからな。自分がどちらに属しているのかわかる頃だろ。」

と言った。

「選別?」

「簡単に言えば『心が強く善性も強い人間』か『そうでない悪人』かだ。

前者は人の形のまま後者は魔物に変わっているだろう。

世界樹からここまで来るまでにも何度か戦ったやつらがそれだ。

心の中を痛みが走った。もう慣れたと思った。割り切れると思っていたけれどやはりなかなかそうはいかないらしくこの手が血に染まっていることを再度自覚する。

しかし私には道はこれしかないのだと思い歩を進める。

この先に何が待っているかも知らないで。


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