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56話

トランジアに斬りかかったフランは鬼のような形相をしていた。

剣戟を2度3度と交わらせる。その後2人は後ろに飛びフランが

「アンタとはどこかで会ったことがないか?」

と言うが

「お前の気のせいだ」

というトランジアのつれない答えが帰ってきた。

「あーやめだやめ!どうせこの後何かあるんだろうし決着は最後に着けるのが一番だろ?あんた達もここに来た理由があるんだろうし俺にもここに来た理由があるんだろう。ふらっと立ち寄るような場所でもないしな。そうだろ?」

そういうとフランが視線を向けた先から男が現れた。

「あらら、もう少し見ていたかったのですが全てお見通しということでしょうか?」

そう言いながら紳士然とした男とも女とも見受けられる人間がこちらへ歩みを進めて来た。

「それでは皆様どうぞこちらへ」

そう言って森の奥深くへ歩を進めていった。それがどこへ向かっているのかは分かっていた。教えられなくとも焼け落ちてボロボロになった樹の根元に向かっていると。そしてそれが近くなると肌が震える圧を感じる様になってきた。

「どうぞ、こちらになります。」

紳士然としたおそらく男だろうとベルナは勝手に思っている人間が言った場所は遠くから見たときには確かに世界樹の大樹が焼け落ちた跡が見えていたがそこにあるの小さな切り株が一つであった。

「お前切ったな」

トランジアがそう言うと男がニヤリと笑った。

「切ったとしてもまた育てればいいのですよ。これからフラン様とベルナ様には世界を時計回りと反時計回りで一周してここに戻ってきてもらいます。途中でこの世界の維持に関わる遺跡を用意しておりますので世界を救いたいのであればその祭壇にて祈りでも捧げてみてください。世界に興味がなければ立ち寄る必要はありません。」

と男が言う。

「何故そんな回りくどいことをさせる?お前たちはこの世界にもう興味などないはずだと思っていたが。」

トランジアがそう問うている間後ろでフランがじっと私たち二人を睨んでいるのを気づかないふりをしていた。

「いやはやあなたは一体どこまでご存じなのか。正直ここで消しておくべきだと思いますが、そうもいかないのが心苦しいところです。さて、答えとしては簡単です。あなた方にもチャンスを与えるべきだという意見がありましてね。終わりの見えた遊戯ほどつまらないものはないでしょう?」

とこちらを刺すような視線で見ながらまたニヤリと笑った。

「ではどちらがどの方角へ進むかサイコロを振って決めましょう。神はサイコロは振りませんからね。」

と言う。

「そんなまどろっこしいことなんてしてられない。オレは時計回りに行かせてもらう。」

とフランが歩みを進めた。

「ふーむ、遊び心がないというのも考え物ですね。」

と腕組みをしながら首を捻る男をよそに

「じゃあ俺たちは反時計回りで行かせてもらう。」

そう言ってベルナの手を引いてトランジアがいつもより早く歩いて行く。

「トランジアさん。これに一体何の意味があるんですか?世界の維持とかよくわからないんですけど。」

ベルナが手を引かれながら問うが

「そのうちわかる。」

と明確な答えをくれないトランジアに苛立ちを覚えた。

「フランは確実に遺跡に立ち寄ったりはしない。あいつはそういうやつだ。」

「トランジアさんはあのフランって男の人と知り合いなんですか?」

「この森で拾った男が言っていた。」

「その人何をどこまで話したんですか?そもそも私何も知らないまま勇者だなんて言われても自覚がわくわけないじゃないですか。」

「俺たちがあいつに負ければこの世界がなくなる。それだけだ。」

「それってどういう・・・」

「時間がない早くいくぞ」

そういってトランジアとベルナの世界一周が始まった。

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