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55話

世界樹の森の入り口(これを入り口と呼んでいいのか分からないが)に着いた時微妙に違和感を感じた。ベルナのこういう違和感は先読みや予知に似ていると言えなくもないもので最近は特に外した事がないくらいになっていた。

なので入り口の前で少し止まっていると先を進んでいたトランジアが振り返り珍しく「どうした?」と声をかけてきた。ベルナは自身が感じた違和感について話をしたが、話し終えてから少し後悔した。

何故ならあくまで違和感であり何が起きるか迄は分からないので余計な事を言ってしまったと思ったからである。

しかし予想に反してトランジアは「そうかお前も分かるようになってきたか。」と言いそのまま森へと入っていった。

森を進むにつれ違和感は強くなり不安が増した。それを察知したかのように前を進むトランジアが話をし始めた。

「世界樹の役目とは何だ?」

そんな子供ですら知っている問いに少し首を捻ってしまったが「えっと、死んだ生き物の魂の循環、です。」と答えた。

「それは半分正解だ。」

帰ってきた答えに驚いた。思わず「半分・・・」と無意識に呟いていた。

「そう、半分だ。残りの半分は言葉にするのも胸糞悪くなるような事だ。」

「それは・・・?」

「生き物が死んだ時それが歩んできた歳月がありその中で感情が激しく変化する出来事も少なくないだろう。特に人間はそれが顕著だ。奴等はそれを取り込んで楽しんでいるのさ。つまりはこの世界に住むすべての生き物が神を自称する奴らの楽しみのために生かされているわけだ。」

言葉が出てこなかった。生き物の、人の喜びや悲しみ、憎しみ、愛すら楽しみの為に使われているなんて。聞きたくなかったというのが正しいだろう。

「そんな、そんなのって!」

「感情を表に出すな。特に敵が目の前にいる場合は。」

そう言ってトランジアは腰から大剣を抜く。

敵!?全く気が付かなかった。足音すらしなかった。ベルナも即座に短剣を抜き周りを警戒する。しかし何も感じられない。本当に敵なんているのか?と聞こうとした時前の暗がりから1人の男が歩いてきた。

「ここまで気配を消しても気付くとはいやはや今回の敵は中々に腕が立ちそうだ。まるでアイツみたいだ。」

そう言いながら姿を現した男が首を捻り

「アイツ?アイツって誰だ?」

と自分で言った事に対して悩んでいた。が、すぐにどうでもよくなったのか

「今回の勇者であるこの俺フラン・ベルディーユに倒される魔王は・・・」

そう言ってこちらを品定めする目がトランジアと私を往復する。そして

「君が今回の魔王か。成程纏っている雰囲気が隣に居る女とは比べものにならない。これなら俺の強さを証明できそうだ。」

そう言ってフラン・ベルディーユと名乗った男も剣を抜いた。

張り詰めた空気を破ったのはトランジアの小さな小さな微笑であった。

「どちらが本物なのかも見分けられない木偶が勇者を名乗るか。お前には俺たち2人は何色に見えている?」

そう言って剣を鞘に納めた。

「木偶だと!?俺が木偶だと言ったのか!」

「そんな事はどうでもいい。俺たちが何色に見えるか答えてみろ。」

「お前は黒だ!真っ黒だ!そっちの女も黒だ!お前たち両方とも身体から黒い瘴気を出している!だから勇者である俺に倒されなければいけないんだ!」

そう言ってトランジアに向かって斬りかかった。

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