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54話

カチカチカチと時計の秒針が進む音が聞こえる。

意識は微睡の中に落ち身体は動かない。

時計の針はもうすぐ12時になろうとしている。

嗚呼、これは夢だ。

最近変な夢ばかりを見る気がする。夢の中でそう考えるのもおかしな話ではあるが、村を出てからの自分について考えてみるとこういう事にも慣れてきた自分がいる。

そんな事を考えているといつの間にか現実のベルナの瞼が開いた。

消えかかっている焚き火が目に入る。

その煙は天へと上り登った先でどこへ行くのだろうか?そんなどうでもいいことをまだハッキリとしない意識の中で考える。

この様な野宿にももう慣れた。

初めは眠れなかった。寝れても起きると身体中が痛かったが慣れというのは恐ろしいもので、今ではそんな事は無くなった。重い身体を起こし焚き火を挟んで向かい側に寝ていたはずのトランジアの姿を探すがいるはずの場所にその姿は無かった。こんな光景ももう見慣れたものだ。

帝国首都を出て港へ行きそこから船に乗りセントラルへ来てから約36日。途中王都へ立ち寄ったがそこはただの廃墟になっていたのには驚いた。トランジアが言うにはこの王都は普通の人間には見えなくなっていて、セントラルの王都を訪ねる人は「王都に行った記憶はあるしそこでの仕入れなどの荷物もあるようになっている」らしい。

簡単に言うと「実際には行ってないが行ったことになっている」という事らしい。あまりよく分からなかったが深く考える事はやめた。そういうものなのかと思う様にした方が楽に生きていけると最近思うようになった。

ベルナ達が目指す世界樹(正確には世界樹跡)まで跡5日程、そろそろ世界樹の森が見えてくると昨日話をしていた。世界樹の森、トランジアがそこで会った人に世界の真実を聞いたと言っていた場所。そのことにいて深く聞く気にはなれなかった。深く聞かれるのを嫌がる様に感じたからだ。

かつて遠くから見上げる世界樹が実はもう無くなっていて自分が今そこを目指しているというのはおかしなことである。信じていた物が、信じていた事が嘘だと教えられた事はショックではあるが自分にしかできない事があるという事がベルナにとっては嬉しかった。それは自分の存在理由を強調してくれるので以前より辛い事は多くなったが充実感も同じ様に増えているのが嬉しかった。

また、剣術に関しても腕を上げた。トランジアが言うにはまだまだ未熟だそうだが、途中で襲われた野盗の集団を1人で倒した時には自身の成長を強く感じられた。

魔法に関しても大気にあるマナを意識し呼吸と共にそれを吸い込み力に変換するイメージを常に行える様にはなった。それに伴い呪文なしの魔法でも威力は上がったし、呪文を唱える場合でも同様に威力は上がった。ただ、トランジアが言うには魔法は型にハマったらそれまでらしいのでいつも柔軟な思考をしろと言われるが・・・これが難しい。

風を起こす魔法の場合どうしても使用するパターンが同じ様になる事が多くなってしまう。その点トランジアと模擬戦の訓練をしていると彼の思考の柔軟さに驚かされる事が多い。

勇者の剣術についても色々と教えられた。先ずは心と想いと理想とを結びつけ刀身に乗せる。すると刀身が光るがそれだけではさしたる威力はない。そこから更にもう一歩進んで漸く合格らしい。合格と言ってもそこが始まりで日々研鑽に努めなければいけないらしいが・・・今の私にとっては刀身を僅かに光らせられるだけなので日々心と想いと理想を一つにできる様に訓練しているが、やるべき事が多すぎて上手くいっていないのが現状だ。

そんな日々を送りながら漸く森の入り口までやって来た。

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