52話
その日の夜ベルナは夢を見た。目の前に避けれない程の大きな炎が2人の男に迫っている。1人は膝をつきもうダメだと諦めているがもう1人の男が手を差し伸べて
「何言ってんだ。お前の旅はここで終わりか?違うだろ?まだこんな所で終わるわけにはいかないんだ。だから諦めるな。お前の道は・・・お前の未来はオレが作る!」
そう言って1人の男が炎に向かって行く所で目が覚めた。
随分と現実味のある夢でそこに自分も居るかの様に感じた。
あれは一体何だったのだろうか?どちらの男にも見覚えがないし自身の記憶を辿ってみても覚えはない。モヤモヤした気持ちを鎮めることが出来ずまだ暗い空を見上げてみる。思えばあの日もこんな夜だった。ここに来るまで様々な事があったが、振り返る過去にはもう戻れないのだと改めて理解すると自然と涙が溢れてきた。
月が落ち太陽が昇る時間になっても眠れず、その日は1日落ちてくる瞼を持ち上げるのに苦労した。この城の中で好き勝手に動き回るトランジアに振り回された。武器や防具を新調しいつもと変わらない訓練に明け暮れる。身体が悲鳴をあげる頃になるとまたあの人の部屋へ連れて行かれ「この顔を忘れるな」と言われる。同じ様な日が14日続いた頃また夢を見た。内容は男と女が向かい合っているが女の方は泣いていた。その顔はここ14日毎日見てきた女と同じ顔をしていた。男の方は端正な顔立ちに少し困った笑みを浮かべていたが2人が抱き合うとその男の顔が悪意に満ちた笑みに変わったのを確かに見た。何を言っているのかは聞こえなかったが気づけば荒い息と共に全身から汗を吹き出している自分がいた。この前の夢と一緒にトランジアに言うべきだろうか?呼吸を整え全身の汗を拭き取りながら考えた。考えすぎてこの日も気がつけば太陽が昇っていた。前の時と違うことがあるとすればあの男の顔を思い出すだけで瞼が落ちてくるなんて事は無かったという事くらいだった。
夢の内容を話したくてトランジアを探して城の中を歩いていると何やら騒がしい声が聞こえてくるのでそちらへ行き、耳をすまして聞いてみると
「カトレア様が消えたそうだ。あの様な状態で一体何処へ・・・」
と言っているのは聞こえた。
「オレはあの我が物顔で王宮内を歩き回る男とその連れの女が怪しいと思う。陛下にすら敬意を払わない話し振りらしいじゃないか。普通の人間なら会うことすら難しい方にそんな失礼な態度を取る奴等がどうして怪しくないと言い切れる?それにあの2人はしきりにカトレア様に会いに行っていた。これで疑うなと言う方が無理があると思うぜ。」
それを聞いてその場にいる複数人がそうだ!そうだ!と言い出しベルナ達を探せ!と走り出した。




