表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/59

51話

トランジアの足はこの皇帝府から街並みが一望できる所にある部屋の前で止まった。彼の言う始まりの女とやらはここにいるのだろう。一瞬深呼吸でもしたのか普通なら気づかないであろうこの男の僅かな変化を感じ取れるくらいにはなっている自分に驚いた。そして女の部屋であるにも関わらずノックの一つもせずに扉を開き目的の人間へ向かって進んでいく。この部屋の間取りやどこに居るのかも知っているかの様に。トランジアが歩みを止めた先に窓から街並みを眺めるまるで人形のようにキレイな女が居た。

「ベルナ、コイツの顔を忘れないよう目と魂に焼き付けておけ。コイツが全ての始まり。混沌の元凶だ。」

「それはどういう・・・」

意味なのかと言おうとしたがその後に耳に入ってきた言葉が身体を固まらせた。

「お前がこの先殺す女の顔を絶対に忘れるな。」

普段感情を表に出す事の少ないこの男の事を人間味がないと思っていたが身体を震わせる程の怒りや憎しみを目の前の女に向ける。

この人はそれだけの事を彼にしたのだろうか?

そういった疑問が頭を通り過ぎた。だが理由も話さず人を殺せと言われもはいわかりましたと納得できるほどベルナは頭は悪くないという自負はあった。

「私が?この人を殺す?言っている意味がわからないよ!」

怪物になった人間なら仕方がないと自分を納得させられるようにはなった。自分と同じ経験をする人が減るのならばと。また、悪事を働く人間に対してもこのまま放っておけば身体を覆う黒いモヤが人を怪物へと変えてしまうと分かるので仕方がないと思うがまだ完全には納得はできていない。この手はもうキレイではないのだと自分を責める事も少なくない。そんな自分に何もしてない人間を殺せとこの男は言う。

「ベルナ、この女の身体から見えるのは何色だ?」

そう言われて目の前にいる女をよく見てみると身体は白でもなく黒でもなかった。

「何も、見えない・・・」

「そうだ本来ならそれが普通なんだ。この女がした事が今の世界を狂わせる原因になっている。だからお前が殺すんだ。勇者であるお前が。」

今程勇者という言葉の意味を問いたくなった事はないと思った。ベルナの知る勇者とは世界を救い平和をもたらす秩序の象徴の様な人間の事だったからである。幼い頃に聞かされた勇者の冒険譚とはそういった内容だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ