5話
とっとと話を進めるべきだとは思いますが少しだけ丁寧に書いていきたいです。
馬車での旅は思っていたモノとは違い激しい吐き気に襲われ、今朝食べた物が全て路肩に流れ出したにも関わらず気分は良くならない。
初めのうちは変わりゆく景色を楽しんでいたのだがそれもすぐに地獄となった。
そんな光景を見てベネディクトは背中をさすったり水を飲ませたりしてくれたが慣れないものがこんなにもキツイことを初めて知った。
その日は体調を気にしてくれたのか少し早めに馬車を降りその日のキャンプ地を決め食材となる物を探しに行った。
夜に馬車の御者と共に3人で夕食をとる。
普通ならば護衛の冒険者等を雇うのだか目の前にいる賢者以上に頼りになる戦力もないのでそういったものは雇わなかった。更に言えば本来は御者自体も雇う必要は無かったみたいなのだが、それは知っている土地ならばという条件が付くため今回はこの地域の地理に詳しい者を雇ったとベネディクトが言っていた。
焚き火を囲んでの食事は父さんと仲間達と共に過ごした日々が思い出されて胸が痛くなるのを感じた。
まだ現実を受け入れられない自分がいて今の状況を必死に納得しようと頑張っている。
ベネディクトもまた思案に耽っていた。
幾ら魔王に深手を負わせたといってもいつ敵が襲いかかってくるか分からない。なので出来るだけ隠密に人と接触する事なく先代の元へ辿り着きたい。魔王からすれば勇者の血脈は絶やしておきたいであろうし、その後継がまだ子供というのであれば尚の事である。
そんな会話のない時間が流れ堪りかねた御者が
「アードックまではあと2日とちょっとといった具合ですかね。坊ちゃんの体調さえ良くなればもう少し先に進めるかもしれません。所でお二人は何をしにアードックなんていう寂れた町に行くんですかい?」
その言葉に対してベネディクトが冷たく言い放つ
「あまり事情については詮索しない事だ。まだ生きていたいのならな。」
この言葉を聞いた御者は目の前の賢者に対して恐怖するなどいうことはなく。只々面倒な事にならなければと思うだけであった。長年御者をやっていると訳のありの客の1人や2人に出くわすことなど珍しくもないので面倒毎に巻き込まれた際の護身術も身につけているからこそできる思考であった。
それじゃああっしは馬の様子を見てきますんで
そう言ってその場を去り自身の商売道具の元へと足を向けるのであった。
そして異変に気付く。
馬の落ち着きがなく風に混じって殺意が感じられた。
この事を雇い主に告げるべきか迷っていると闇の中から夜盗が襲いかかってきた。
最初に襲いかかってきた2人を危なげもなく処理して辺りを警戒しつつ雇い主の元へと駆けた。
「ダンナ、坊ちゃん。どうやら囲まれてるみたいですぜ。」
それを聞いたベネディクトは地面に魔力を巡らせ敵の位置と人数を探るのであった。
10....いや20か。敵は何だ?
ただの夜盗のようで。
随分と甘く見られたものだ。
そんな会話をしながらベネディクトは1人夕闇の中へ姿を消していった。
そして辺りから断末魔が響き渡り10分もしないうちにベネディクトは戻ってきた。
この一帯に結界を張ってきた。これでもう今夜は襲われることはないだろう。
そう言ってまた焚き火を見つめながら物思いに耽るのであった。
ミリオからすれば何が起きたのかさえ分からないまま今日はもう寝ろと言われ外套に身を包み微睡みの中へ落ちていった。