49話
司祭の葬儀は滞りなく行われた。世界樹の枝を遺体に握らせて泥で作った船で送り出す。そうする事により道標を得た遺体は無事に世界樹へと至り新たな命となって再びこの地に帰ってくると考えられている。というのが世界樹信仰をしている教会での葬儀のやり方である。ベルナも悲しみはしたが頭の中はさっき言われた事でいっぱいだった。何故あの時直ぐにあの手を取らなかったのかと自分の覚悟の程度を後悔していた。また、このままここに留まると同じような事が起こるという事を遠回しに言われたのでもう自分は普通の生活は送れないのだと思った。
その日の夜に必要な物だけをまとめてベルナは村から消えた。翌日彼女の様子を見にきた同僚が部屋を訪ねるとそこには誰も居らずいくら探しても見つからないままであり、彼女の行方を知る者は誰一人として居なかった。
時間を少し戻してベルナが村を出る際に一人の男に声をかけられた。
「なぁ、あんたあそこに何が見える?」
そう言って指を刺を差した方角を見てみると村を出るまではいつもと変わらぬ姿で聳え立っていた世界樹が今のベルナの瞳には焼け焦げた大木にしか映らなくなっていた。
「世界樹が・・・」
それ以上は言葉が出てこなかった。
「そうか。アンタにも見えるようになったか。」
そう言って男はベルナに跪き「では参りましょうか。勇者様。辛く険しい旅路へと。」
そう言って二人は闇夜に消えた。さっきまで辺りを照らしていた月は今では雲に隠れてしまい何も見えなくなっていた。




