43話
村の近くに何かが落ちてから特に変わった事は起きず只々いつもの毎日が過ぎて行った。
サウスランドの西の果てにあるこの村の名前はワランカスイ(元々ここら一帯に住んでいたマチヌーク達の言葉で再生を意味する言葉である)主要産業は農耕であり痩せたこの土地でも栽培できるイモダロジャガサと呼ばれる芋のようなものが主な生産物である。他に必要なものがあるときは不定期でやってくる行商人から買うしかないのであった。今日はその行商人が村にやってきたのでいつものように広場の一角に人だかりができていたのであった。
「うーんやっぱりこの村にも鍛治師が必要だよなぁ。毎回鉄製品をこの値段でとなるとキツいものがあるよな。」
一人の男がそう呟くと目の前にいる年老いた行商人はその男を見て「じゃあ次に来る時にはその鍛治師でも連れてこようか。あんたいくら出せるね?」
「オレにそんな事言われたって一人で決められるわけないだろ。それにこんな田舎に来るような物好きなんて居ないさ。それにもし鍛治師を連れて来てたとしてアンタの売り物が減っちまうじゃないか。」
そう言うと目の前の老人はパイプを蒸しながら「そんときゃ別のもんを持ってくるだけさ。」と答えるのであった。
「ところで爺さんそっちのフードの人はあんたのお付きか何かかい?」
「いやいや、ここに来るまでに賊に襲われてね。その時助けてもらってからここまで護衛を頼んだのさ。」
「じゃあアンタ随分と強いんだな!まさか勇者様だったりしてな」
そう言うと周りの人間も大きな声で笑うのであった。
「俺は勇者なんかじゃないさ。ただの放浪者だよ。」
そう言ってフードを取ると男とも女とも見分けがつかない人が姿を見せその場にいた男女を沈黙させた。
「たとえ勇者なんかじゃなくても助けられたワシにとっては十分勇者様さ。」
ちげぇねえという一同の笑い声の裏でベルナが何かを探すように辺りをキョロキョロしながらその場に現れた。
「おや、シスターそんなにキョロキョロして何か探し物かい?」
「いえ、そういうわけではないのですが何故かここに何かあるような気がして・・・」
「もしかして司祭様かい?」
それを聞いてその場にいる人間は笑いこそしないものの、この純粋無垢な少女の恋路を(本人はバレていないつもりである)暖かく見守るのであった。
「そんなのじゃ・・・ありません!」
顔を赤らめて否定する少女がその場を後にしようと駆け出した時に何かを落としたのだがそれに気付いたのはその場にいた1人だけであった。
「おい、アンタ!これ落としたぜ。」
そう言って見慣れぬコインを手に取りベルナに渡すのであった。
(私こんな物持っていたかしら・・・)
そう思いながらも謝意を伝えコインを受け取った時にベルナの身体を何かが突き抜けその場に倒れてしまった。




