39話
動かなくなったフランに向けて一言
「やはり勝手が違うな。勇者の加護というのも存外厄介なものだ」
フランとミリオが動かなくなりカトレアとアレクセイも動けない中カトレアは目の前の子供が言っていた「勇者を殺すと厄介だ」という一言がひっかかっていた。つまりはこの子供(いや子供とはもう呼べないと認識を改め)目の前にいる魔王に対し何故フランとミリオを殺さないのか問うた。それに対して
「真実を知らぬという事は罪よな」と笑うが「まぁこいつを覚醒させる迄にまだ時間がかかる。それまでお前の時間稼ぎに付き合ってやろう。」と話し始める。
「そもそもお前たちはこの世界の真実についてどこまで知っている?ここが箱庭というところまでか?それともその先まで知っているのか?」
「その先だと?」
アレクセイが呟きカトレアを見るが視線の先の少女もまたその言葉に驚いている様子であった。
「所詮はその程度か。では話を変えよう。お前達は世界樹を何だと認識している?」
「人の魂が天界に帰り再びこの世界に巡ってくるものだ」
「やはりその程度の認識か。始原の魔女と言えど知らぬ事があるのだな。つまりはそこがお前の限界だという事だ。お前は長く生きすぎたせいで考えるという事を止めたのだ。考えることを止めた人間はこの世界においては家畜と何ら変わらない。だからこそここが箱庭などと呼ばれるのだ。」
自分の全てを否定された様に感じ小刻みに震え込み上げる怒りを抑え込み更に問う。
「つまりはお前は世界樹を別の何かだと知っているという事か?」
「そうだ。あれは魂を循環させる物ではない。死んだ者の魂吸い上げる物だ。そしてそれは条件を満たせば天から見下ろす神にすら届きうる物だ。」
「その条件がミリオとフランという訳か。」
「理解だけは早くて助かる。俺(私)はここに倒れている勇者の様に誰よりも強いとは願ったがそれはこの世界においてではない。そろそろ勇者の覚醒も終わりそうだな。お喋りはここまでだ。」
そう言ってフランの顔を掴む手に更に力を込める。その瞬間フランから赤い光柱が迸るがすぐに消えた。
「クソッ神の血が邪魔をしたか。益々もって忌々しい奴らよ。」
そう言って天を仰いだ瞬間フランが馬乗りになっている魔王など居ないかの様に立ち上がりそのまま魔王の顔を掴み返し地面に叩きつける。驚愕の表情を浮かべる魔王だがその顔目掛けて拳が何度も振り下ろされる。
その光景を見ていた2人はようやく動けるようになりミリオに駆け寄ろうとしたがミリオの姿は何処にも無かった。




