27話
翌日起床して朝食のために1階に降りるといつも居るアレクセイの服装が違っていた。
「アレクセイさんその服はどうしたんですか?」
「あぁ、其奴は昨日のとは別のアレクセイなんだよ。」
ミリオが聞くとキッチンから即座に答えが返ってきた。
「私は」
「其奴は簡単に言えば2番目のアレクセイだよ。」
アレクセイが自己紹介をする前にカトレアが全部話してしまったのでその場に気まずい空気が流れる。そこに大きな欠伸をしながら「腹減ったぁ」とフランが降りてくる。
「アレクセイさんおはようございます。」
と気付かない様子で眼を擦りながらいつもの席に座る。
「初めましてお二方。そしてお久しぶりでございます開祖様。」
改めて畏った挨拶をしたのでフランは目を丸くして
「何言ってんだよ。初めましてって昨日も会ったじゃねーか。」
はぁーという深いため息と共に2度同じ説明をする事に目に見えて面倒くさそうな顔をするカトレアを見て
「私は近衛騎士団団長のアレクシス・ウィル・アレクセイです。開祖様よりお二人を鍛える様にと承っております。」
近衛騎士団団長!?
2人が声を揃えて言うが
「近衛騎士団団長よりも強い奴がまだいるっていうのか!?」
と目を輝かせるフランとは対照的に死んだ魚の様な目をしているミリオ。この2人を見て笑いを堪えるカトレアと朝食を囲むテーブルだけは平和を感じられた。
朝食を終えた後何時もの場所で何時もの様に訓練をする事になったがどこまでできるのか見てみたいとのアレクセイの言葉により2人は全力で目の前の男を倒しに行った。
そこで意識が飛んでしまった。顔にかけられた冷水により目を覚まし何が起きたかを確認するが隣には同じ様な事を考えているフランと深刻そうな顔をした2人が何やら話し合いをしていた。
「開祖様。この2人に教える剣についてはどちらが宜しいのですか?勇者の剣技とは本来一子相伝神の呪いによりこのゲームに強制参加を強いられた原初の一族が代々発展させてきたもの。始まりこそ同じであれ我々の剣術とは似て非なるモノとなっております。」
そこでカトレアが続きを話すのを止め一言
「勝てる剣を」
とだけ。
それを聞いたアレクセイは承りましたと一礼と共に口角を上げたのである。
それからは今まで身体に刻んできた型を全面否定される様な稽古が続いた。
「型にばかり頼るな。そんなお行儀のいい動きなんて相手が格上なら全く通じないぞ!」
クソッ!3番目には通じたのに。
そうフランが漏らすが
「アイツは優しいからな。型を覚えたのを見てワザと負けたんだろう。」
聞きたくはなかった事実を突きつけられたが今はそんな事を嘆いている場合ではない。目の前の男がこちらに向けて蹴りや体術を織り交ぜて2人を捻じ伏せにくる。何とか立っていられるのは2番目の男の剣だけは何とか受け流していられたからである。3番目のアレクセイに学んだ事は2人の中にキチンと生きていた。
昼食だよーというカトレアの声により稽古は中断となり3人は汗だくの身体を水で流しボロボロの服を着替えテーブルにつく。
「アレクセイさん、蹴りや体術は卑怯だよ。オレが学びたいのは勇者の剣技なんだし、あんな泥臭い剣術なんかじゃない。」
とフランが漏らすが
「お前たちの剣はさっきも言ったがお行儀のいい先読みのし易い剣だ。このままお行儀のいい剣だけを学んでもここから出たら野盗にすら勝てないだろう。」
じゃあ何で騎士団はお行儀のいい剣なんかを使ってるんだよ!
フランが噛みつくが
「いいか、剣術とは魅せるモノと使うモノは別物なんだ。騎士団が戦場で魅せるだけの剣を使ってるわけないだろ。魅せる剣とは大衆に向けて自らの威光を示す為に使うだけだ。型だけ覚えたお前たちの剣は今は唯の魅せる剣なだけだ。現実はそんな綺麗事なんかで生き残れるほど甘くはないんだ。」
食事をリスの様に頬張りながら2人はアレクセイの話を聞いた。
「じゃあ、オレは・・・オレ達はどうすれば勝てる様になれる?」
頬に詰めた食べ物を飲み込みフランが訪ねる。
「私はそれを教える為にここに呼ばれたんだ。」
と悪ガキみたいな笑顔で答える男に2人は向き合い頷くのであった。
さぁ、食べ終わったら午後の訓練に向かおうか。
そう言われてテーブルの上の料理はあっという間に消えた。




