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20話

「取引?ワシはお前さんに渡せるものなど持っておらんぞ?」

「あら?あなたは持っているわ。それも3つも。」

その数字にネストは眉間の皺を深くし

「お主まさかとは思うが・・・」

そう言いかけたが途中で遮られ

「そう、そのまさかよ」

「馬鹿馬鹿しいそんなのは取引とは言わん。お前に頼るくらいなら自力で何とかするわい」

「あら?勇者の力をほぼ失いかけている虚な貴方に何ができるのかしら?詳しく教えて欲しいわ。」

その言葉が祖父のネストの琴線に触れたようでテーブルを拳で砕き部屋を出て行こうとする。

「ネスト、貴方の我儘にこの2人を巻き込むのはどうなのかしら?もっと今の状況を客観的に見る必要があると思うのだけれど?」

そう言ってわざとらしく首を傾げて見せる女性にネストはワナワナと震え怒りの形相で睨みつけるが暫くした後諦めたように項垂れて

「じゃがその取引をワシが受けたとして帝国はお主達を受け入れてはくれんじゃろ?帝国とてセントラルを含めた4大陸と争うつもりも無かろうて。」

「あら?それは無用な心配でしてよ。何せ帝国の皇帝は私の子孫なのですもの。」

それを聞いてネストの口と目が限界まで開いた。

「何を驚く事があるの?私は始源の魔女。最初の勇者のパーティに同行していた者よ?」

「それが今の話にどう繋がるんじゃ。」

「簡単なことよ。始まりの魔王を討伐した後に当時のセントラル王からこの後どうするのか聞かれたので人並みの生活と幸せを一通り送ってみたいと言ったら周りの4大陸の王とお見合いをさせられたから一番伸びしろが感じられたサウスの王に嫁いだだけよ。だからサウスは今帝国としてセントラルの統治から外れているのよ。私が居るのですもの残りの4大陸が束になって攻めてきても勝てるわけがないでしょ?」

そう言って悪戯な笑みを浮かべる姿は人の姿をした何かの様に見えた。

「だから私が皇帝に一言言えば私達、いえあの2人は受け入れられるでしょうね。」

それを聞いてネストは真っ直ぐに少女の目を見て

「渡せるのは一つじゃ。残りの二つは、ワシが居なくなった後取引ではなくお主に託したい。どうか鍛えて強くしてやって欲しい。この因果を断ち切る為に。」

「ええ、それで構わないわ。元々私が欲しかったのは貴方なのだから。さて、どうやら外が騒がしい所を見るに時間もないようだし。勇者アルネスト、貴方の旅はここで終わりよ。この世界の為に糧になりなさい。」

そう言って胸元から懐中時計を取り出した。

「終末時計か。それは今どっちに傾いて・・・いや、ワシが死ぬという事が答えか。最後に一つだけわがままを聞いて欲しい。どうか2人に別れを。」

「ええ、構わないわ。但し余り時間は無くてよ。」

ネストがミリオとフランの前にやって来て2人を抱きしめる。

「本来であればワシがお前達を・・・いや、言いたい事はそんな事ではない。ミリオ、お前は優しい子じゃがもう少し自分の気持ちを相手に伝える努力をしなさい。話さなければ伝わらない事も沢山ある。そうして良き仲間と、フランと共にこの理不尽な因果を終わらせてくれ。それがワシからお前に送る最後の言葉じゃ。」

「じいちゃん・・・父さんも居なくなってじいちゃんまで居なくなるなんて嫌だよ。」

そう言って涙を零すミリオを見て

「ワシやお前の父さんはいつでもお前の側にいるからの。例え世界を違えて離れたとしても。じゃから泣くのでは無く笑って見送っておくれ。」

そう言ってニカッと笑うネストを見てミリオも無理に作った笑顔で応える。

「フラン、お主にはこれから先険しい道が待っているじゃろう。挫ける事もあるかもしれん。じゃが、絶望だけはしてはいかんぞ。常に心に希望を持って生きていけ。それがお前の未来を切り開く鍵となるじゃろう。」

「先生、それはどういう意味なんで」

そう言いかけた口元を始源の魔女が押さえ

「ネスト、時間切れよ。結界が破られたわ。」

「そうかでは行くとしようか。」

そう言って始源の魔女が開いた光の中に姿を消していったのであった。

終末時計を開いて一言

「これでまた少しは時間ができた。さぁ、勇者との約定に則り貴方達をこれから帝国へ連れて行きます。準備は良くて?」

2人が目元を擦りながらうなずくと少女が差し出した両手をそれぞれが握りしめた。

それを見た執事が

「では、私はいつもの場所にてお帰りをお待ちしております。」

そう言ったのを聞いたと思うと目の前にはもう別の光景が広がっていた。

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