17話
「何だいお前さん達船を探してんのか?行き先はどこなんだ?」
カウンターの向こうからから聞こえる声だけに全員が振り向いた。
「ワシの故郷のあるイースタンの玄関口じゃが?」
「となるとドライドか・・・まぁケンカ仲間がこれ以上居なくなるのもジジイとしては悲しいからな。船は俺が何とかしてやるよ。」
「本当か!?流石持つべきものは友じゃ!」
「まぁこれはツケにしておいてやるからボウズ、このジジイがもし死んだらこのツケ、お前が後で必ず返しに来い。それが約束できるならこの話進めてやるよ。」
トントン拍子に進んでいた話が急に自身に降りかかってきてミリオは両脇にいる2人を見るが、祖父の顔には申し訳なさがフランの顔には新大陸に渡れるという期待の目があった。
「どうだ?ボウズ?」
そう聞かれると首を縦に振った。
いつまでも守られてばかりではダメなんだ。自分自身に枷をつける必要がある。そう思ったのである。
「よし。じゃあ夜3つの鐘が鳴る頃に港に来い。いいな、夜3つの鐘だからな。」
そう約束をして店を出ようとした時だった。
「あーそういえば『アイツ』も今この街にいるんだが・・・お前さん、会いは行くのか?」
そう言われて祖父は苦虫を噛み潰したような顔をして返事もせず店を出た。
その後人目につかぬように裏路地の開けた場所で周りに溶け込み時間を過ごした。
夜3つの鐘と言われたが太陽はミリオ達の真上にあり時間を持て余すばかりであった。
「ねぇ、夜までずっとここにいるの?」
堪らず外套から覗く髭に向かって話しかけた。
「まぁ、ずっとここにいるわけにもいかんが・・・かと言ってどこかに行くあてがあるわけでもないからのぉ」
「師匠は人付き合いが嫌いだからな!」
「うるさいわい!」
そんなやりとりをしていると思わず笑みが溢れた。
どんなに辛い時でも笑えるという事はとてもありがたかった。
「腹も減ったしのぉ・・・」
「さっきの店で何か食べてくればよかったのに・・・師匠はあの店以外に馴染みの店とかないのかよ!」
「この街のジジイ共は大抵ワシを嫌っておるからのぉ。若い頃に突っかかってくるもんじゃから全員返り討ちにしたのを今でも恨んでおるんじゃ」
「師匠・・・何やってんすか・・・」
「若気の至りというヤツじゃ。それに船の手配があるからと言っておったじゃろ。あのままあの店に留まっても良かったがもし見つかった場合アイツに迷惑がかかってしまうからな。これ以上ケンカ仲間を失うわけにはいかんじゃよ。」
「じゃあさっきの店の爺さんが言ってた『アイツ』って人に会いに行けばいいじゃないですか・・・」
また祖父は苦虫を噛み潰したような顔をした。
そんな2人のやりとりを見ていると自分よりフランの方がよっぽど孫みたいだと思ってしまった。
自分は未だに祖父にどう話しかけていいかも分からない。
こんなにも人見知りだったとは自分でも情けなくなってくる。そんな事を考えていると頭に大きな手が乗っかり外套越しにワシャワシャとされる。
「気にするな。お前はお前じゃ。他人と自分を比べる必要はない。そのまま真っ直ぐに大きくなってくれたなら息子も喜ぶじゃろうて。」
自然と涙が出てきたが悲しい涙ではないので嫌な気はしなかった。
「さて、腹も減ったし飯を調達しに行くか!」
「えっ!?本当かよ!・・・でも師匠とミリオは大っぴらには動けないのにどうやって?」
「こうなっては仕方ない・・・不本意ではあるが『アイツ』に頼るしかないかのぉ」
そう言って少し気まずそうな顔の祖父に2人は思わず笑顔になった。




