13話
昼ご飯を食べ終わった後からは魔法の訓練に入った。
賢者が言うには呪文はあくまで魔法そのものを具現化するための補助でしかなく大切なのはイメージだと言う事らしい。
思い描くイメージが強ければ強いほど具現化した際の魔法の威力は高いらしい。
そういう座学を聞いていると太陽の温かさと満腹感で睡魔が襲ってくるのも無理のない事なのかもしれないが必死に眠気に抵抗している様をマジマジと目の前の見られてはいけない男に見られていると気づいた時には周囲に笑い声が響いていた。
「ハハハ、そんなに眠いのなら少し昼寝をしよう眠たい頭に無理に叩き込んでも無意味だ」
と笑いながら言う姿を見ていつも厳格なベネディクトの笑う姿を見るのは初めてだった事に気付いて思わず
「ベネディクトでも笑うんだ」
とポツリと溢れてしまった。
それを聞き逃さなかった。
「私だって人間だ。面白い事があれば笑いもするさ。そもそもお前の中で私のイメージは一体どうなってるんだ・・・」
と少し呆れ顔で言われてしまい思わず耳まで赤くなる程恥ずかしくなった。
そんな話をしている内に眠気は何処かへ消えていったが昼寝をすると言って木の下で横なっている賢者からはもう既に眠りに入った呼吸の音が聞こえていた。
考えてみればずっと気を張り続けてきたのは自分よりこの人だったのではないか?先程笑える程には緊張が逸れていて張り詰めていたものが切れてしまったのだろうと考えていると再び自分にも睡魔が襲ってきたので賢者の横で眠りに落ちていていった。
そんな様子を横目で見ながら目の前の少年が何度となく打ち込んでくる剣撃を全て受け止めた上で反撃までしているので少年はもう全身がボロボロであった。
目の前にいる自分の恩人は自分の事など見なくとも相手ができると余裕を見せている事に少しイラつきを感じて密かに練習していた必殺技をここぞとばかりに準備を始めた。
よそ見をしている恩人の隙を見て少年は自身の正義を想いを練っていく。
掌で剣をなぞると根元から白とも銀とも言えぬ光が剣を包み込み周囲の大気を震わせていた。それに気づいた老人はその技を見て驚きを隠せない顔をしていた。その顔を見て満足したのか少年は
「先生のそんな顔初めて見れたぜ。それだけでもこの技を練習してきた甲斐があったってもんだ。」
「練習!?練習だと。この技は練習でどうにかなるものではない。神は選んだのか。次の」
目の前の老人が最後に何かを言いかけたがそんな事は最早どうでもよくなっていて雄叫びをあげながら斬りかかっていた。
木剣とはいえ剣と剣がぶつかった瞬間に発せられた光は凄まじくそれはまるで世界全てを照らす太陽の様な輝きであった。
光が消えるとそこには折れた木剣を持った老人が片膝をついて呼吸を荒くしていた。その向かいには同じく呼吸を荒くした少年が満足げな表情と共に笑みを浮かべて立っていた。
少年の薄れゆく意識の中で
「ようやく先生にこっちを向かせてやったぜ。」
と呟いてその場に倒れ込んだ。
先程の光で目が覚めた昼寝中の2人が駆け寄り少年と老人を小屋の中へ連れて行き介抱をするのであった。暫くは呆然としていた老人も今は意識はハッキリとして何かを考えるような顔をしていたのでとてもではないが話しかけられる様子ではなかった。少年の方はというとベッドの上で寝息を立てていた。賢者がいうには全ての力を使った反動だと言うことらしく当分は目を覚まさないだろうとの事だった。
そしてその賢者の表情もどこか暗くこちらに目を合わせないようにしているようにも思えたが、その理由を聞くだけの勇気はミリオにはなかった。
その日の夜夕食を取った後に祖父と賢者は話があると言って森の中心である世界樹の方へと歩いていった。
2人の話の内容はとても気になったが小屋に1人残される少年を置いて行くことはできず昼間できなかった魔法の授業の予習をしているのであった。
魔法はイメージ
呪文は世界と自分を繋げる為の鍵ではあるが必ずしもその鍵は言葉にする必要はないという事
世界を知り己を知り世界と一つになるイメージを想像して初歩の初歩である小さな風を起こす呪文を唱えるのであった




