10話
霧の中から現れた初老の男性はこちらの二人を暫く品定めでもするかのように見つめた後に
「まぁ、こんな所で話をするのもなんだ、取り敢えずわしの家まで付いて来い」
そう無骨に言い放ちフランと名乗った少年も駆け足で老人の後に付いていった。
呆気に取られて少しの間固まっていた2人であったが老人の何してる置いていくぞ!の一言で駆け足でその後についていくのであった。
森の中を暫く歩き辿り着いた先には簡素な丸太小屋があり小屋の外には家畜の小屋と畑があった。
確かに老人が暮らすにはこれくらいでいいのだろうという印象を受けていると小屋の扉からサッサッと入ってこんか!という少し不機嫌を孕んだ声がこちらに飛んできた。
小屋に入るとテーブルに椅子が6つ(こんなに椅子があって何に使うのだろうという疑問は頭の隅に追いやった)それに暖炉とその前にはロッキングチェア奥には寝室と思しき部屋が3つあった。
そんな風に小屋の中を見回していると
「こんなどこにでもある丸太小屋がそんなに珍しいか?」
と少し皮肉の混じった言葉が飛んできた。
そしてそれを否定する間も無く
「まぁいい。とにかく座れ。要件は大体分かる。あのバカ息子が死んだからそこのボウズをワシに鍛えろという事じゃろ。」
「はい、私はバートにこの子をあなたの元に届け勇者の剣術を学ばせろとの遺言を受けここまで来ました。」
勇者の剣術ねぇ・・・
そう言ってヒゲを触りながら目の前の老人が放った言葉は、
「そんなものはありはせん。寧ろ剣術だけでいいのであればお前さんの方がワシのより格段に強いだろうにどうして賢き者などやっておるんだ」
それを聞いてミリオは驚きと共に賞賛の眼差しでこちらを見てくるが
「興味本位で英知の実なんて物を食べてしまったから仕方がなかったんだ」
その瞬間元々皺だらけだった老人の顔が更に皺だらけになり大きな口を開けて笑い出した。
「そうか!興味本位でか!ガハハ!興味本位であれをか!だが、そのせいでお前さん随分と割に合わない対価を払ったみたいだな。その身体保って後どのくらいだ?1年か?それ以下か?」
険しくなったその表情からは全てを見透かされているようで思わず本音が出てしまった。
「保って後半年といった所でしょうか。なので私がこの子に剣術を教えるには時間が足りないのです。どうかこの子の事を引き受けてはいただけないでしょうか?」
仮にも人類最高の叡智からこうも頼み込まれては断ることも難しいだろう。だが
「断る。残り半年ならその半年でこの子を立派に育ててみろ。そうしたら勇者の剣術なんてモノは無いがそう呼ばれているモノなら教えてやろう。」
大人2人のやり取りを子供2人が首を左右に目まぐるしく移動させながら何とか理解しようとしていたが、理解できたことと言えば魔王城から自分を逃しここまで連れてきてくれた目の前の男が後半年で死んでしまうということだけだった。




