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チート嫁戦記  作者: 風鳴
2/2

愛する人を手に入れる為なら、何度でも繰り返すのよ、たとえ愚かだとしても。

初めての投稿なので、勝手がわからなく、戸惑っています。


 40年以上前に死に別れた彼に逢いたいと思い、「世界の魔女」と呼ばれている魔術師に、やはり40年以上の間、あらゆるものを便宜してきましたが、その投資がようやく回収できるらしい。


 らしいというのは、私自身最初に会ったっきりで、この魔術師にはそれきり息子が対応していた為、詳しい事がわかっていないからです。


 そんなよく分かっていない相手を、なぜ40年以上も便宜を図ってきたのか?

 それは、息子が見つけてきたからです。

 そして、息子は言いました。


「あなたの願いが叶う」


 と。


 その一言で私は決めましたが、その後、私は多くの苦悩苛まれました。

 あらゆるものを諦め、又は手放してきました。

 救えるものを救わず、ただ、怠惰で有り続けたのだから。


 そんな私に、本当に最後までついてきてくれた息子、本当は血の繋がりなどなく、あの人の子でもない。

 本当はただの他人なのだけれども、あの人が拾い、育てた、あの人の子供。


 あの人の全てを受け継ぎ、あの人のように、私に寄り添ってくれた息子。

 他の誰よりも、私が信頼している人。


 そんな息子が、今日約束を果たしに来ると言いました。

 ならばそうなのでしょう。


 さきほど客室に、世界の魔女が到着したと連絡がありました。

 息子は今、魔女の御持て成し中とのこと。

 しばらくしたら、私が魔女に会いに行くのです、私の願いの為に。



 いくぶんか時間を置いて、私は魔女のいる客室に足を踏み入れた。

 そして私は目を疑った。

 そこには、40年以上前の魔女がソファーに座ってお茶を楽しんでいたからだ。

 私や息子は、すでに歳を取って老人となっているのに、今なお若々しく、見た目20台、いや、10台と言っても不思議ではない容姿をしていた。


 もしかして別人?

 と思って息子を見れば、息子は首を横に振りました。

 息子は、本物だと言っています。


 ならば、本物なのでしょう。

 なるほど、世界の魔女と言われるだけの事はあります。


 外見は若いまま…いえ、40年以上前より若返った魔女に、無言のまま挨拶すると、魔女の正面に腰を下ろしました。


「おや?40年ぶりなのに、寂しいじゃないか?何を警戒しているのかな?」


 などと、魔女は話しかけてきました。

 その体内に渦巻く、膨大な魔力を見せつけるかのようにしながら。

 40年前は、こんなに強く感じなかったのに、こんなに魔力を育て上げるとは。


「本当にお久しぶりです、私は、こんなにおばあさんになりましたが、貴女は逆に若返ったようですね?」


「ありがとう、若返ったのも、魔力が増えたのも、貴女のおかげだよ、とても感謝している」


「そうですか、私もまた、私自身の望みを叶える為、貴女に縋ったのです、感謝される必要はありません」


「あれー?今回の貴方は、どうも固いのね?いやそうか、今回は、あれがいなくなったからこうなっているのか・・・」


「・・・?今回がいつの事かは存じ上げませんが、些細な事はどうでも良いでしょう、私が貴女に望むのは、契約の履行のみです、分かっていますね?」


「もう、せっかちな人ね、そんな所は変わらないんだから、そんなに焦らなくても、約束はきちんと守るって、あ、いや、今回は時間がないのか・・・」


「・・・?時間がない?先ほども言っていましたが今回とは何のことです?契約は履行されるのですか?」


「ああ…こっちの話…なんだけど、実は予定が狂ってしまってね、ちょっと時間が足らなくなったんだ、次回からもどんどん足らなくなっていくと思うけど、頑張ってね?」


「意味が分かりません、予定とは何です?時間とは?契約とは何か関係がありますか?」


 私は何か嫌な予感がして、魔女を睨みつけました。

 同時に魔力を練り上げて、何時でも攻撃できるように、魔女の前面に火球をいくつも作りだしました。


「おお怖い、本当に短気なんだから、どうしてあの2人は、貴女を愛したんだろうね?こんなに怖いのに、まあそれは、次回に明かされるかもしれないし、今回はちょっと急がないと、貴女がもたないし」


「私がもたない・・・?それは・・・何を言っているのです?」


「あはは、わかっているくせに、貴女の寿命だよ、本当は1年あるはずなんだけど、今回からは1年少なくなるんだよ、だから時間がない。そしてその為に、予定が変更になります、まあ、どうなるかはちょっと分からないんだよね、ただ、貴女の想いは彼に届くと約束するけどね」


 寿命、それは私がいつ死ぬかを、この魔女は知っているという事。

 そして、短くなったのは今回からというのは、今まで何回もやってきたということで、おそらく寿命が短くなったのも、私の願いと関りがあるという事ね。

 ならば、今の私が考えなければいけないことは、契約の履行と、予定外が何か?という事ね。

 魔女をことさら攻め立てたとしても、何も解決しない。

 私は魔術を解き、体内の魔力の循環を止めた。


「うんうん、さすが理解が早いね、たとえ貴女が全力で攻撃しても・・・まあ、傷はつけられると思うけど、殺すには及ばないかな?それに私が力を使ってしまえば、貴女の願いが叶わなくなるし、私も困る」


 魔女は、うんうんと唸りながら、全てわかっていると言わんばかりに頷いている。

 事実、全て分かっているのだろう。

 これからどうなるのか?

 未来すら見通しているのかもしれない。


「それにしても、今回の貴女はずいぶんと()()()()()振る舞いを取るね?よほどあの2人が貴女を愛してくれたのかな?それはそれで良かったのかもしれないけど、おかげで予定が狂ってしまったのは痛いね、私も困るし、貴女もこれから苦労するし、まあ、良いか悪いかは、その人によって違うものだし、次からはもう少し立ち回るから許してね?」


 だんだん理解してきました。

 この魔女は今の私ではない、もう一人の私と何回も、この契約を取り交わしてきたのだ。

 そしてこの契約は、魔女も望んでいることで、メリットがあるのだ。

 おそらく時間を遡っているのだろうけど、同じ事を何回も繰り返す事に、意味があるのだろうか?

 そんな事を思い、思案に耽っていると、魔女は次の話を振ってきた。


「その顔は、だいたい答えにたどり着いたって顔だね?私が話すまでも無いのはさすがと言っておくよ、一応補足すると、力が足らなくなったのは、貴女の苦悩が足らなかったから、そしてこの40年以上もの間、私に貢いできた「財力」「人材」「意志の力」のうち、貴女の意志の力が足らなくなった。

 実は他の2つの力は、貴女の意志の力を「型」にする為の補助でしかなかったの、型にするべき力が無いのに、入れ物だけあっても仕方ないでしょう?おかげで私も一部とはいえ、私の力を使う羽目になっちゃったのよ?気を付けてほしいわ、それに感謝してもらいたいわね」


 そんな事を宣った魔女は、前回よりも小さくなった胸を張り、なんだか小さな子供を相手にしているようだったが、大事な事はそこではない。

 いや、本当は色々聞きたいことはあるが、おそらく本当に時間がないのだろう。

 どんなに心や意志の力で補っても、老化した体は言う事を聞いてくれないのだ。

 自分の思いとは裏腹に、体は永遠の眠りに就こうとしているかのように、とても緩慢だ。

 このままでは、明日には死んでいると思えるほど、世界が冷たく、そして昏く感じるのだ。

 この魔女と遊んでいる暇などないのである。


 そんな事を思っていると、魔女は人の心を読んだかのように、私に話しかけてきた。


「少し焦った顔だね?その顔は貴女の寿命に対しての反応と見た!どう?あっているでしょう?ああ、力を使ったとかではないわよ、私が趣味で覚えた読心術、なんでも魔術で解決しちゃったら、面白くないじゃない、それに、この術は心を読むといっても、それに至るまでいくつもの段階があって、とっても難しいんだよ、ええと・・・」


「その話はいいわ、その事は次の私にして頂戴、私には時間が無いんでしょう?」


 長くなりそうな魔女の話を、打ち切って、本題に入らせてもらう。

 本当に時間もないのだから。


「ああ、いけない、貴女に死なれたら、とても面倒な事になる所だった、時間も・・・ああ!1時間もなかった!危ない危ない、何で今日、急いできたのかって私・・・」


 1時間!

 どういう事だと思う反面、そんな事よりも、間に合うのですか?

 後1時間で契約が履行できるのですか?

 そちらの事が不安になっていました。

 やはり不安が顔に出ていたのでしょう、魔女は陽気に話してきた。


「ああ、心配しないで、契約の履行は1分も掛からないから、必要なのは貴女の意志のみ、貴女が生きて、心から望めば、契約は果たされる。ただし、今回からは体は持っていけないの、心と意志のみだね。どうしても力が足らなくて、でも、過程はともかく、結果だけはうまくいく事になっているよ、でないと私も困るし」


 だんだんと、この魔女の事が分かってきました。

 この魔女は何処かずれている。

 考えというか、なんというか。

 だが、この魔女に求めたのは社交性でも、常識でもない。

 その魔術の腕なのだから。


 ならば・・・


「細かい事はいいわ、『私の願い、叶うのね?』」


 この一言を、魂を込めて声に出した。


 その瞬間、魔女の瞳の色が黒から赤に変わり、何処か笑っているようだった顔が真剣な表情になっていった。

 そして、嬉しそうにほほ笑んだ。

 そして・・


「人の子よ、そなたの願い、聞き届けた。」

「この『天秤の魔女』の御名において、そなたを輪廻の楔よりほどき、今一度、私の右手が指し示す場所へ届けん」


 その瞬間、あたりは真っ白になり、私は自身を失った・・・




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