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あの日の戦場  作者: ヘンテコソースソード
第2章アイカワの記録
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実験施設にて2

目は目隠しをされ、手足も厳重に拘束されている。ときおり、くるくると回され。ここがどこだかもわからない。そんな中、痛みの走る注射を押し込まれ、謎の液体を飲まされた。感覚はどんどん崩壊していくかと思いきや、逆にどんどん鋭くなっていく。


「キサラギの提出を求める方が。」


そのせいで、耳も塞がれていたが、あたりがざわめいているのはわかった。その後の会話もなぜか聞こえてくる。


「こいつはAだが、アルマ王国だぞ。だが、こいつのことなんかよりも、最高のおもてなしを行え。下手な真似は処分に値する。」


俺は別の部屋へと運ばれた。それほど身分が高い相手がくるのか、誰一人として部屋には入ってこなかった。相変わらず指一本動かせない状態だったが、目隠しだけは外された。前にいたのは、カワッチだ。


「キサラギ、こっちの部屋にこい。」


そうして入った部屋には誰もおらず、俺は拘束具を外された。


「お前・・・。目どうし・・・。」


喜んでいたのも束の間幼馴染からは衝撃的な言葉をかけられた。慌てて鏡を見ると俺の目は金色になっていた。燃えるような金色だ。


「うそ・・・。」


俺は絶句した。


「でも、そんなこといってる暇はないな。こいつの服で職員になりすまして、さっさとでるぞ。ここまでくるのがどれだけ大変だったか。」


「うん、本当にありがとう、カワッチ。それで、セキネはどこにいるの?」


今気づいたがセキネの姿を見ていない。セキネを置いて逃げるなんてできない。


「脱出の途中で連れていく。牢屋へ連れて行かれるときに見た。牢屋番号は67だ。」


俺は聞き終わる頃には、準備を終わらせていた。











「キサラギこっちだ。あいつが通りすぎるのを待ってこっちに音を立たないように来い。」


カワッチは俺にテキパキと指示を出していく。さすがうちのエースだ。頼りになる。


「もうすぐで、セキネの牢屋だが、警備が厳しい。くそっ、どうすれば・・・。」


「カワッチ、相手は三人だ。俺たちが不意打ちで2人をやって、残り1人を仲間を呼ばれる前に倒す。」


普通に考えればそんなことできない。相手だって普通じゃない。でも俺はさらに普通じゃない。目が金色になってから、今ならなんでもできるような感覚があった。


「いくよ。俺は奥の方をやるから。」


「・・・。わかった。俺は真ん中をやる。」


カワッチがしぶしぶ返事をする。

かつかつかつ。相手とはもう二歩一歩、0歩。カワッチが頷いたのを見て。目の前の相手の後頭部をぶっ叩く。気がついた、もう1人が声を上げるために息をすう。だが、倒したばかりの相手の仮面を投げつけた。命中。完ぺきだ。相手は声を上げる間も無く気絶した。鍵を奪って、セキネを救出。


「行くよ2人とも。すぐにバレる。」


そう、シロムネの兵士が近くにいるのだ。すぐに逃げないと。


「あぁ、さっきのどうしたんだ?すごかったな。」


イワッチは仮面のために、表情はわからないが、きっと驚いているんだろう。


「ストップ!」


前から気配がした。一気に止まる。するとやつは通り過ぎて行った。


「わかんなかったです。今日のキサラギさんすごいですね。」


「そう?」


ちらっと脳裏に飲まされた薬と目が金色のことを思い出した。


「それで、今どこに向かっているんですか?僕は捕まっていたのでわからないのですが。」


セキネが言った。


「外だよ。なんだかわかるんだ。どこに行けばいいのか。」


そう、俺にはわかる。次に右に曲がること。そしてそのまま真っ直ぐに行けば裏口があることも。


「次右ね」


右に曲がると門が見えた。あれを超えて、近くにある飛行機にさえのれば、逃げ切れる。俺は胸が高鳴った。あと50メートル。飛行機はすぐ近くだ。


「おい、どこへ行くつもりだ?一度勤務すればここから出られん。出れば反逆だぞ。」


俺は振り返らずにそいつの頭をぶん殴った。


「逃げるよ!飛行機に乗り込んで!」


俺は叫んだと同時に全員で走り出した。


「反逆者だ!捕らえろ!」


あちこちから声がする。


「奴らが三名の脱走者だ!やつらの1人はAだぞ!」


A?一体なんのことだ?でももう遅い。俺たちは準備を終わらせ周りのことなんて気にせずに空へと飛んだ。


「キサラギ、指示を!」


「キサラギさん指示をお願いします!」


「全員、俺についてきて!」


後ろを見ると、追っ手が来ていた。さすがシロムネの兵士たち。こんな非常事態でも冷静にやるべきことをこなし、隊を組んで追ってきた。本業じゃないのに。


「上へ!雲に入る!」


俺たちは急上昇した。圧力がかかる。でも、あんな実験施設よりましだ。


「右!敵が来てるよ!」


雲の中でも見えるということは、かなり近い。だが、


「迎撃完了!銃も打てない。」


俺たちはアルマ王国の精鋭部隊隊長とそのエースと隊員だ。性能のいいシロムネの飛行機に乗ってる今。3対1では負けない。


「真っ直ぐ突っ切る!雲を抜ければ降下する!」


いまはまず誰の目もないところで、地上に降りること。こうすれば、隠れるところはきっとある。燃料があればそのまま帰ることもできる。相手が雲の中にいるうちに降りる。近いやつは撃墜した。


「雲を抜けました!降下します!」


セキネの声が無線から聞こえた。俺も雲から抜け、降下し始めた。すると大きな洞窟が見えた。


「前方の洞窟に入る!飛行機は裏に隠せ。」


『了解!』


チラリと後ろを見ても、追って来てはいない。雲の中だ。車輪を出し、着地する。音も小さかった。ここからでは小型飛行機と俺たちの顔なんて見えない。俺たちは意気揚々と洞窟に入った。


「キサラギさん。俺、疲れました。休みません?」


セキネは眠そうにいう。


「うん、俺も疲れたよ。カワッチもいいよね。」


「あぁ、俺も休みたい。」


俺たちは奥の方の寝心地の良さそうなところを見つけて、そこで寝たのだった。















「ん・・・。カワッチ、セキネ、起きて、もう明るいよ。」


何時なのかわからないが、夜の洞窟よりも明るかった。手探りでカワッチとセキネを探すと


「もう起きてるぞ。お前が一番グータラ寝てたんだ。」


暗闇からカワッチの声がした。


「うそ!ごめんごめん。じゃあまず燃料の確認と・・・。」


そう言ったとき洞窟の入り口から足音と話し声が反響した。俺たちは無言で頷き、岩陰に隠れた。


「やーやーみんな、まずは普通に会議するヨー。」


やっぱり話し声がする。入って来た人間は4人。赤髪のやつ、銀髪の子、黒髪のおかっぱ、あとなかなかのイケメンくん。全員知ってる。知らないわけがない。あいつらはシロムネ帝軍第1部隊の奴らだ。第1部隊は唯一の皇帝直属の部隊。赤髪はイツキ、銀髪はレイト、おかっぱはコウ、イケメンくんはノーリだ。


「なんでこんなところで会議をするんです?話を聞かれていいんですか?だって」


イツキはレイトがいうのを遮り、


「まあいいの。その続きを言っちゃうと楽しみがなくなっちゃうでしょ。じゃ、始めるヨー。今日の議題は重要だから。えーなんと、新しいAランクが発見されましたー。」


と言った。


「ほんとですか!これで俺が後輩じゃなくなるんですね!」


「コウ、そんなことよりそいつの情報だろ。イツキ、どんなやつなんだ?」

ノーリが言った。


「んーとね。まず18歳だから後輩じゃないし、アルマ王国の人だよ。それに、実験施設から脱走したらしいヨー。」


はぁとレイトがため息をつきながら言った。


「はぁ、やっぱりダメですね、あのポンコツ施設は。こんな失態が陛下のお耳に入ったらどうなるか。全員死ぬだけでは済まないでしょうね。というか俺が地獄を見せに行ってやる。」


「はいはーいそんなこと言わないの、俺も同意見だけど、とりあえず、下手に下準備だけはしちゃって覚醒しかけらしいんだよネ。だから俺たちの任務はそいつを捕らえて陛下くんへ献上すること。殺さなければオッケーだってさ。」


俺たちはその話を聞いて心臓がばくばくしていた。18歳でアルマ王国出身で実験施設から脱走したのは俺だ。多分やつらは俺のことを話している。でもまだ気づいていないはずだ。あいつらが他の場所へ行ったらすぐにアルマ王国で隠れ住まないと。だが、俺はそのとき気づいた。たまたまこんなところに来るか?ここでそんな話をするか?まさか・・・。


「なるほど、お前はこんなシュチュエーションがお望みなんだな。そいつはどこなんだ?」


ノーリの言葉を聞こえて足がガクガク震えた。


「ナイスだヨー、ノーリ!強いていうならそこの岩陰に隠れてるのがそいつ。」


全部バレてる。イツキに言われて満面の笑みでコウが岩を粉砕してきた。


「ッ、キサラギ逃げ・」


身の前でカワッチが吹っ飛んだ。


「殺すなよ」


そんな声が聞こえた気がした。次の瞬間俺の意識は途絶えた。





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