実験施設にて1
キサラギ視点 9月23日
~捕虜収容所~
「今日の日記付け終わりー。」
キサラギは軽やかに言った。
「病気にしては元気だな、キサラギ。所長が呼んでるぞ。」
彼はカワムラ。キサラギとは幼馴染である。
「わかったよカワッチ。じゃーねー!」
何の用だろうと思った。そういえば、検査で何か変な音がなったけれど、あれは本当に健康診断だったんだろうか。あの検査にはもっと別の意味があったように思える。そう思いながらも、所長室についたので、気を引き締める。
「失礼します。キサラギです。」
そう言うと
「ああ入って。」
所長の声がした。中に入ると、アルマ王国では貴族でしか考えられないような部屋があった。
「キサラギ君。まぁ座ってお茶でも飲みなさい。長い話になるから。」
これまた高価そうなソファとお茶があった。
「では遠慮なく。」
作法などからっきしだったので美味しそうな香りにつられてお茶を飲んだ。すると、変な味がした。もう一口飲んでみるとやはり変な味。薬が入っているみたいな味だ。
「あの・・・。」
おかしいと思って声を出そうとするとその言葉は遮られた。
「どうかしたかな?キサラギ君。まさかお茶に薬でも入っていたとか?」
所長はニヤニヤ笑いながらこちらを見ている。
「えっ・・・。どういう・・・。」
だが言い終わる前に気がついた。はめられた。お茶には薬が入っていた。毒かなにかで動かなくしてからどこかに連れ去るつもりなのか?再び、検査の音が頭をよぎり、胸がざわつく。
「大人しくしろ!」
ドアが乱暴に開けられた瞬間、シロムネの兵士たちが大勢入ってきた。そしてその手の中には
「カワッチ、セキネ!お前ら2人に何した!」
殴られた跡のあるカワッチとセキネがいた。
「こいつらか?部屋の近くで聞き耳を立てていたのでな。お前の知り合いならちょうどいい。こいつらも連れて行け。」
ひときわ豪華な軍服に身を包んだ兵士が言った。
「やめろ!」
だがいきなり視界が歪んだ。アタマが痛い。入っていた薬の効果か・・・。最後まで、カワッチたちは俺のことを助けようとしていた。
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次に感じたのは冷たさだった。目を覚ませば、拘束具がはめられたまま石床に転がされていた。
「くそっ、どうしてこんなことに!」
俺は叫ぶ。
一瞬鉄格子の外を覗いただけでここの異常性はあきらかだった。必死で抵抗する人たちを無理矢理連れ込み、その後には悲鳴しか聞こえず、異様な死体が連れ込まれた部屋から出てきていた。
「キサラギ。 こい。」
薄っぺらい仮面をつけた男に呼ばれた。
今気づいたが、ここの職員はみなこの仮面つけている。だがそんなことよりも、
「カワッチとセキネはどこにいるの!」
腹部を激しい痛みが襲った。俺はあいつに蹴られたらしい。
「来いといえばさっさと来い。次はこんなものでは済まさん。」
そう言うと別の職員たちが俺を完全に拘束してどこかへ連れて行った。