アイカワの日記
~アルマ王国軍基地~
「・・・と言うことで報告は以上ですが、何か質問はありますか?」
カゲミヤがツラツラと報告し終わった。
「何もない。いつもすまないな、こんな報告をさせてしまって。」
報告を聞いていた兵士はもう顔なじみだ。
「いえいえ、仕事ですので。ところで、キサラギさんを探してるんです。どこにいるかわかりませんか?」
カゲミヤが聞いたとたん、兵士の顔が暗くなった。
「あぁ、キサラギはいないんだ。」
「えっ?」
2人は揃って声を上げた。
「どこかに行っているということですか?」
俺は慌てて兵士に尋ねる。そう言って欲しかったからだ。
「違う。」
「どういうことですか?」
カゲミヤは恐る恐るきいた。
「キサラギは、帰ってこない。捕虜から解放された後も。健康診査の時に変な音が鳴ったから病気なのかと思ったが、鳴ってないのに帰国後すぐに病気になったやつもいた。シロムネの機械がそんなにポンコツなはずがない。」
「キサラギさんがいない。帰ってこない。」
カゲミヤが崩れるように呟いている。
「俺もショックだったよ。でもシロムネに連れ去られたんだったらどうにもできない。」
兵士は諦めているみたいだった。
「カゲミヤ、キサラギさんを探そう。何かわかるかもしれない。」
俺たちはいろんな人に聞いた。でもキサラギさんのことはわからなかった。
「どうしよう」
本日何回目かもわからないそんなことを言っていた時だった。
「あの・・・キサラギさんのことを探してるんですよね。これ、どうぞ」
おどおどした兵士に、ぶ厚い本を差し出された。
「これは?」
「日記です。キサラギさんの。」
そう言ったときにはもうカゲミヤは読み始めていた。
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日記8月30日
捕虜になったので、もともと書いていた日記はなくなったんだけど、内容を覚えてるので新しい日記に書きまーす。今日は暑かった。現在、シロムネ帝国と戦争中。戦況は最悪。明日は、アルマ海溝に行かなければならない。
日記9月5日
今までのことを書こうと思う。アルマ海溝での戦闘にむかったのだが、その戦闘でウシジマが出てきた。最初はシロムネ帝国の戦闘機が一機しかおらず、不思議に思っていたら瞬く間にウシジマに殲滅させられた。カワッチたちも全員生きているところを見ると、殺さないよう手加減していたんだろう。ウシジマによって殺されなかった俺たち軍人は捕虜になった。現在車に乗せられ、門をくぐっている。これからどんなことになるんだろう?
9月8日
シロムネ帝国は涼しい。捕虜にしては、待遇は最高だった。シロムネの兵士はもっとすごい生活をしてるんだろうか。
9月15日
今日はスープが美味しかった。10月になるまでには帰れるらしい。あんまり詳しく書くのはできないけれど、ここは西の方にあって北に行くと森があるらしい。
9月23日
今日は健康診査があった。変な音なったけど病気なのか?
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「日記はこれで終わりだな。」
カゲミヤは次がないことを確認すると、言った。
「カワムラさんも帰ってないのか?」
「あっ、えっとそのそうですね…。」
兵士は今気づいたように言った。
「ありがとうございました。この日記もらってもいいでしょうか」
とりあえず、この日記だけでも。そんな思いだった。
「はい、わかりました。」
俺は兵士にぺこりと礼をすると、言った。
「シロムネ帝国に行こう。キサラギさんを連れ戻すんだ。」
カゲミヤは、こくりとうなずいて。飛行機にのりこみはじめたのだった。




