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桜色のくせのない髪、薄ピンクの愛らしい瞳、
小柄で華奢な身体にマスコットサイズの背。
頭には何故か、黒色のハチマキ。
(なんでハチマキしてるんだろう……しかも黒)
そう聞こうとして口を開きかけるけど、慌てて口を噤む。
今この人に何を言っても怒られそうな気がしたんだ。
「そーいやお前、見かけない顔だけど……誰だよ?」
怪訝そうに下から見上げられ名を名乗っていないことに気づいた。
それで僕はピッと姿勢を正した。
「七瀬千秋という者です。今日からここのお屋敷で執事として働きます故、どうぞ宜しくお願い致します!」
さっきよりは手短に言うと男の子は満足そうに頷いた。
「ん、俺は桃瀬さくら。この屋敷の主だから忘れんじゃねーぞ」
さくら、かぁ。いい響きの名前だな……。
「って、女っぽい名前とか思うんじゃねーぞこのヤロ! 思ってたりしたらぶん殴ってやっからな! 覚悟しとけよ、じゃーなっ」
ハチマキ少年は機関銃のように一気にそう言うと、
僕が通った道を走っていってしまった。
(お、思ってませんよ! 女っぽいだなんて!!)
小さくなってゆく背中に向かってそう叫びたい衝動を堪えた。
なんと呼べばいいのか分からないけど、さくら様、でいいのかな?
というかぶつかった原因は、
さくら様が廊下を走っていることもあると思うんだけど……。
心の隅でそう思いながら、僕は下がっていた顔を上げた。
さくら様とぶつかって気づかなかったけど、
ここの突き当たりに一つの部屋があった。
ドアノブには、“図書室”と書かれた文字のプレートが掛けられてある。
「こんな所に……、図書室……」
誰にともなくそう呟くと、
僕はそろりとドアを開けていた。




